帳合とは 業種ごとの意味や帳合取引のメリット・ポイントを解説
帳合(ちょうあい)は、メーカーと卸売業者、小売業者との取引関係を示す際によく使用されます。帳合取引をすることで、販売コストや仕入れコストの低減、流通拡大などが期待できます。帳合の意味、帳合取引のメリットやデメリット、取引関係を結ぶ際のポイントについて、製造業界の専門家が分かりやすく解説します。
帳合(ちょうあい)は、メーカーと卸売業者、小売業者との取引関係を示す際によく使用されます。帳合取引をすることで、販売コストや仕入れコストの低減、流通拡大などが期待できます。帳合の意味、帳合取引のメリットやデメリット、取引関係を結ぶ際のポイントについて、製造業界の専門家が分かりやすく解説します。
目次
帳合とは、企業間の取引関係や、帳簿上の数値と実態を照合するなどの意味で用いられる言葉です。
帳合は、メーカーと小売業者、卸売業者の関係性を表す言葉として使われることが多いですが、企業会計では小売業とは違う意味で用いられます。それぞれの業界での帳合の意味を解説します。
卸売・小売業界での帳合は、業者間の取引関係を指します。
例えば、小売業者にとっての商品の仕入れ先である卸売業者、メーカーにとっての商品の卸し先である商社、など取引関係を表現する言葉として使われています。
会計用語としての帳合は「帳簿合わせ」とも呼ばれており、帳簿上の数値と手元にあるキャッシュや商品在庫との照合作業を指します。
経営活動での取引結果は帳簿に記録として残しますが、記載内容と実状に差があれば損益が正しく把握できません。帳合によって定期的に帳簿の整合性を確認し、経営活動の健全性を判断するうえで欠かせない作業です。
このように、帳合は企業会計においても用いられる言葉ですが、この記事では「卸売・小売業界での帳合」にフォーカスして解説します。
帳合に関連してよく使われる用語に「帳合先」と「帳合取引」があります。それぞれの意味や具体的な使い方を解説します。
帳合先とは、取引先であり、小売業者やメーカーから見た卸売業者などを指します。
例えば、小売業者が卸売業者Aから商品Bを仕入れて販売しているとすると、「商品Bの帳合先は卸売業者A」と表現します。
なお、メーカーの製品を販売する卸売業者は「ベンダー」と呼ばれることもあります。
帳合取引とは、特定の取引先業者を決めてさまざまな取引をおこなうことです。
例えば、メーカーならば製造した商品の卸し先である商社などを含めた卸売業者、小売業にとっても販売する商品の仕入れ先である卸売業者が帳合取引の相手です。
卸売業者は中間業者としてメーカーと小売業の橋渡し役となり、納期調整や在庫管理などの役割を担います。
帳合取引をおこなうことで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、小売業者とメーカーのメリットを紹介します。
帳合取引による小売業者のメリットは、大きく三つあります。
帳合取引によって特定の卸売業者を通して商品を仕入れることで、メーカーと直接交渉する手間や、受発注手続きなどの業務上の手間を減らせます。
また、在庫管理も任せられるので、自社での在庫リスクを防ぐこともできます。
自社では取り扱いが難しい商品でも、帳合先の信用によって新たな商品の仕入れができるメリットもあります。
中小の小売業者の場合、安全性と信頼性を求められる大手メーカーとの直接契約は困難なときがあります。
しかし、帳合先である卸売業者を通せば、商品の仕入れを任せることができるので、自社で販売したい商品があれば、帳合先の信頼性を担保に取り扱える可能性が高まります。
帳合先を通すと、自社が参入しているマーケットの動向や競合企業の情報などを、帳合先から入手することもできます。
帳合先である卸売業者には、業界について専門的で幅広い情報を持った商社などもあり、多くの企業との商談からさまざまな情報を得ています。小売業者では得がたい情報でも、卸売業者から素早く入手できるため、マーケットへの参入遅れや売り逃しなどのリスクを低減できるでしょう。
帳合取引をおこなうことによるメーカーのメリットは、大きく三つあります。
メーカーは、商品の受注や販売、配送などを帳合先に任せることで、販売にかかるコストを大幅に削減できます。
販売先を自社内で選定するには多大な工数がかかり、契約を結んだあとも小売業者との販売システムの連携やサプライチェーンの変更などに手間取ることがあります。
卸売業者など帳合先の業者があれば、販路の拡大を任せられ、受発注システムの連携も新規におこなう必要がなく、物流コストの削減にもつながるでしょう。
企業名や商品などの知名度が低いメーカーにとっては、商品をより多く市場に流通させるチャンスが得られます。
中小規模のメーカーは自社商品の知名度が高いわけではないため、大手メーカーのように社名だけで信頼を得て、商品を取り扱ってもらう可能性は低くなりがちです。せっかく良い商品を開発しても、販路を確保できなければ収益が確保できずに先細りになります。
その点、小売業者と直接契約を結んでいる卸売業者に任せられれば、卸売業者の信頼性を生かして中小メーカーでも商品の流通量を増やすことも不可能ではありません。
帳合先を通すことで、市場動向や小売業者の情報を収集できるメリットもあります。
営業部署など自社だけで得られる情報には限界があり、販売状況やエンドユーザーの所感などの情報は、特に集めがたいでしょう。
しかし、帳合先の商社から、小売業者の情報を間接的に収集できるため、新製品の開発や今後の生産量の見通し決めなどに役立てられます。
帳合取引には流通コストなどを下げられるといったメリットがありますが、デメリットも複数あります。
メーカーと小売業者が帳合取引をする場合、小売業者はメーカーの販売希望価格に上乗せされた金額で仕入れざるを得なくなります。
結果的に、利益を出すために販売価格の上昇につながり、価格の流動性が損なわれます。
中小企業にとっては、帳合先の信頼性を活用した取引ができるという点は特に大きなメリットですが、帳合先との関係が強すぎるとコストが逆に高くなる恐れがあります。
これは、業界内で強い立場にある帳合先に販売や仕入れを依存しすぎると流通が固定化し、同業他社との新規契約などによるコストの見直しに及び腰となり、結果的に言い値のままの契約が続いてコストが割高になる可能性が理由にあげられます。
帳合先との関係性が強すぎてサプライチェーンが限定されすぎると、独占禁止法に抵触する恐れがあります。
特定の業者のみの取引であるということは、他業者の市場参入を意図的に阻止していると判断される可能性があり、他業者からの公正取引委員会への相談や申告によって、調査対象となるリスクがあります。
帳合取引をする際には、メリットとデメリットを把握したうえで、契約を結ぶことが欠かせません。ここでは、小売業者とメーカーそれぞれの取引をするポイントを紹介します。
小売業者の場合は、帳合取引をおこなうことでその仕入れ先に限定されてしまうというリスクがあります。結果的に仕入れコストが高くなる恐れがあるため、契約前に収益見込みをしっかりと見極めなければいけません。
どうしても取り扱いたい商品がある場合は、小売業者側の立場が弱くなりがちですが、帳合先の意見に流されるのではなく、コストと収益性の計算は自社主導でおこないましょう。
また、契約を結ぶ際には、契約期間が不当に長く設定されたり、トラブル発生時の責任関係が小売業者側のウェイトが高くなったりしていないかなど、自社に不利な条件が多すぎないかチェックする意識も欠かせません。
メーカーの場合、大手企業ならば帳合取引によって市場の流動性が下がり、独占禁止法に抵触する恐れがあります。定期的に卸売先を変えたり、価格の見直しをしたりするなどして対処する方法が一般的です。
一方、中小企業は独占禁止法になるリスクは低いですが、帳合先の選択を間違うことによる販売不振や信用低下などの問題が発生しやすくなります。
帳合先を選ぶ際には、参入予定市場における取引実績はもちろんですが、過去の取引トラブルの履歴や財務情報のチェックなども欠かさないようにしましょう。
また、帳合先が市場に影響力のある大手企業などの場合は、販売コスト高につながる可能性があるので、小売業者と同じく、事前に収益見通しを立てる必要があります。
帳合は、メーカーや卸売業者、小売業者の取引関係を表す言葉で、帳合取引をおこなうことで販売や仕入れのコストを低減できるというメリットがあります。
帳合取引を利用することで、市場参入や販売量の拡大などのメリットがありますが、独占的な契約によってコスト高に陥るリスクもあります。
中小企業の場合は、帳合先の選定段階からトータルコストへの意識を強く持ち、収支の見通しは自社で算出したうえで、業者をしっかりと見極めるようにしましょう。
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