目次

  1. 法定耐用年数とは
    1. 耐用年数と耐久年数の違い
    2. 減価償却とは
    3. 減価償却の方法
  2. 法定耐用年数を定めている理由
  3. 資産別の法定耐用年数 国税庁の表から紹介
    1. 建物
    2. 建物附属設備
    3. 構築物
    4. 車両及び運搬具
    5. 工具・器具及び備品
    6. 機械及び装置
    7. ソフトウェア・ハードウェア
  4. 法定耐用年数を適用するときのポイント
    1. そもそもどの資産に分類されるのか
    2. どこでどのように資産を使用しているのか
  5. 法定耐用年数が長すぎる場合
  6. 設備投資に法定耐用年数の知識は必須

 法定耐用年数とは、法令で定められた減価償却の耐用年数のことです。

 固定資産は、購入した時点で全て費用となるわけではなく、一定期間にわたって費用となります。これを「減価償却」と言い、ここでの一定期間を「耐用年数」と言います。

 そして、同じ資産でも個々の状況において耐用年数は異なるのですが、法令において画一的に定めた耐用年数を、法定耐用年数と言います。

 ちなみに、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和四十年大蔵省令第十五号)という法令で定められています。

 耐用年数と似た言葉に、耐久年数があります。

 耐用年数は、「その施設や機器が本来の機能を持ち続けられる年数」です。一方、耐久年数は、「耐久」が「もちこたえること」という意味なので「資産として使える年数」という意味になります。

 大きな違いはなく、同じ意味で使う場面もありますが、細かい違いとしては下記になります。

意味の違い 分類
耐用年数 会計用語として「減価償却をする期間」という意味合いが強い 経済的耐用年数:収益獲得に資する耐用年数
物理的耐用年数:資産そのものが物理的に使える年数
耐久年数 減価償却とは関係なく「資産そのものが使える期間」という意味合いが強い

 耐用年数は、収益獲得に資する耐用年数を示す「経済的耐用年数」と資産そのものが物理的に使える年数を示す「物理的耐用年数」の2種類に分けられます。経済的耐用年数のほうが、その意味から物理的耐用年数よりも短くなります。

 例えば木造建物は、築40年も経つと建物そのものはまだ使えるものの、顧客を相手に貸し出しをして収益を上げようとするには、毎年のように修繕が必要になるでしょう。そうすると、木造建物の物理的耐用年数は50年ほどはあるかもしれませんが、経済的耐用年数は50年より短くなると予測できます。

 耐用年数という言葉は会計用語として「減価償却する期間」という意味合いが強いため、「経済的耐用年数」がベースになります。一方、耐久年数は減価償却とは関係なく「資産そのものが使える期間」という意味合いが強いため、「物理的耐用年数」を指すと考えていいでしょう。

 このことから「耐用年数=耐久年数」になることもありますが、通常は「耐用年数<耐久年数」となります。

 ここで、減価償却についておさらいをしておきます。減価償却とは、固定資産の取得原価をその耐用期間にわたって費用として配分する手続きです。

 例えば製造業では、機械装置といった固定資産を使って製品を作り、売上を上げています。会計期間の利益を計算するうえでは、売上と費用は対応関係にする必要があります。そこで、何年も使える機械装置であれば、その購入価額を購入時に費用とするのではなく、使う期間にわたって費用とするのです。

 そして、減価償却は会計上、規則的・計画的に行わなければなりません。会計の大きな目的は適切な期間損益計算にあり、減価償却はその期間損益計算をするうえで重要な役割を担っています。

 減価償却の方法には大きく二つあります。定額法と定率法です。その違いをまとめると以下の表のようになります。

定額法 定率法
概要 一定額を償却していく方法 一定率を償却していく方法
計算方法 取得価額×償却率 期首残存価額×償却率
償却率の求め方 ※1 1÷耐用年数
(小数点以下3位未満切上)
1÷耐用年数×2 ※2
(小数点以下3位未満四捨五入)

・計算例➀ 耐用年数が9年の場合
 定額法:1÷9=0.1111…→0.112
 定率法:1÷9×2=0.2222…→0.222

・計算例➁ 耐用年数が17年の場合
 定額法:1÷17=0.0588…→0.059
 定率法:1÷17×2=0.1176…→0.118

※1 固定資産を取得した年月で償却率の計算式は異なります。現時点で取得した場合の計算式です。 
※2 現行の定率法の償却率は定額法の償却率の2倍(200%)になるため、200%定率法と呼ばれます。ただし、小数点3位未満の処理の関係上、定率法の償却率=定額法の償却率×2とはなりません。

 本来、固定資産の耐用年数は、固定資産の置かれた状況が個々に違うため、それぞれに合った年数を定めるべきです。

 つまり、パソコンという同じ固定資産だとしても、ある会社は3年ごとに買い替えているのであれば耐用年数は3年とすべきですし、5年使うという規定がある会社であれば耐用年数は5年とすべきではないかと考えられます。

 一方で、課税側としては、これを逆手にとって、法人が資産の耐用年数を恣意的に決定することを懸念します。

 そこで、課税の公平を図る観点から、画一的な基準を設ける必要があり、法定耐用年数を資産の種類、構造、用途ごとに細かく規定をして用いているのです。

 各会社で資産購入のたびに、耐用年数をその都度決めるのが本来の姿だとしても、見積りを伴いますので、なかなか面倒な業務です。また、会計上の耐用年数と税務上の耐用年数が異なると、2つの情報を持つことになり、管理工数や申告書上の調整項目が増えます。

 そのため、ほとんどの会社では、税法上の法定耐用年数を耐用年数として用いています。

 国税庁の法定耐用年数の表は複数ページにわたりますので、ここでは資産別に知っておくと便利な、主要な資産の耐用年数を紹介します。

 建物の構造と、建物の利用形態によって耐用年数が分類されています。

建物 法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造または鉄筋コンクリート(SR)造 事務所用:50年
住宅用:47年
店舗用:39年
・・・
木造 事務所用:24年
住宅用:22年
店舗用:22年
・・・

 建物附属設備は、構造用途で耐用年数が分類されています。建物の設備系は15年と大抵定められています。

建物附属設備 法定耐用年数
給排水、ガス衛生設備、電気設備 15年
火災報知器 8年

 構築物とされる資産は意外と多く、構造用途で耐用年数が分類されています。

大型広告看板 法定耐用年数
金属造 20年
金属造以外 10年
路面 法定耐用年数 備考
アスファルト敷 10年 駐車場を整備した場合、路面の材料で耐用年数が異なる
コンクリート敷 15年
法定耐用年数
石造 35年
土造 20年
コンクリートブロック造 15年
金属造 10年
車両及び運搬具 法定耐用年数
一般自動車 6年
運送会社の保有する総排気量3L未満のトラック 4年
建設会社の保有する4トントラック 5年
工具・器具及び備品 法定耐用年数
パソコン 4年
サーバー 5年
コピー機 5年
手さげ金庫 5年
大型金庫 20年
看板・広告器具(主に金属製) 10年

 同じ業務用の機械や装置であったとしても、何の用途で使用するかによって法定耐用年数は異なる点に注意が必要です。

機械及び装置 法定耐用年数
食料品製造業用冷蔵庫 10年
飲食店業用冷蔵庫 8年
ソフトウェア・ハードウェア 法定耐用年数 備考
業務用ソフトウェア 5年 機械装置に組み込まれているソフトウェアは、機械装置に含まれる
ハードウェア 器具備品となって5年

 法定耐用年数を適用するにあたって、以下2点がポイントになります。

 法定耐用年数表をよく見ると、同じ資産名が書かれた項目が複数あり、異なる法定耐用年数が掲載されています。例えば、構築物に「大型広告看板」(金属造は20年)の記載がありますが、工具・器具及び備品にも「看板・広告器具」(主として金属製は10年)とあります。

 広告看板に関する違いとしては、一般に野立て看板といった簡易的な看板(人の手で持ち運べるようなもの)は「工具・器具及び備品」、地面に据え付けてあり容易に動かせない看板は「構築物」と区別をしています。ただし、ネオンサインは「構築物」に思えるものの「工具・器具及び備品」に別掲されています。

 該当資産がどの資産区分(上記の「構築物」or「工具・器具及び備品」のほか、「工具・器具及び備品」or「機械及び装置」など)になるかを巡っては、たびたび裁判所でまで争われることもあります。それだけ微妙な論点であるので、資産の分類は慎重な判断が必要になります。

 「機械及び装置」での業務用冷蔵庫のように、同じ物品でも使用する場所や用途によって法定耐用年数が異なる場合があります。

 その他にも、同じ木造建物でも事務所用であれば耐用年数は24年ですし、住宅(社宅)用として使用すれば22年です。

 そのため、正しい法定耐用年数を知るには、どこでどのようにその資産を使用しているかを明らかにする必要があります。

 法定耐用年数表には多くの固定資産が掲載されていますが、世の中のあらゆる固定資産には対応しきれません。

 また、法定耐用年数は通常の資産の使用状況に合わせて作成されてはいますが、個々の会社の資産が置かれている状況はさまざまです。

 その結果、明らかに実情の資産の使用可能期間よりも、法定耐用年数の方が長く定められている場合もあり、いくら法定耐用年数が課税の公平性を保つために定められたものとはいえ、かえって不公平になりかねません。

 そこで、法人の減価償却資産が、法令の定める「耐用年数の短縮事由」に該当して所轄国税局長の承認を受けたときは、承認を受けた使用可能期間を法定耐用年数とみなすという制度があります(参照:耐用年数の短縮の承認申請丨国税庁)。

 保有する固定資産が耐用年数の短縮事由に該当しそうであれば、申請を出す方法があることも知っておきましょう。

 税務上、固定資産の減価償却は法定耐用年数に従っておこなっていきます。

 多くの会社は独自の耐用年数ではなく、法定耐用年数に従って償却費を計算していますので、設備投資をした場合に、償却費がいくらになるかは設備投資額と法定耐用年数によって決まっていきます。そのため、法定耐用年数によって損益計算が大きく異なってくることになります。

 設備投資において法定耐用年数の知識は必須です。正しく理解し、今後の経営に役立てていきましょう。