目次

  1. アトツギ支援コンソーシアムとは
  2. 「後継者支援」の枠組みづくりどうする?

 中小企業庁によると、アトツギ支援コンソーシアムとは、後継者支援に賛同する支援機関が有志で集まった共同体です。立ち上げにあたり、後継者支援の動きに350団体・企業から賛同が集まりました。

 中小企業庁財務課の担当者は、後継者支援に特化した背景について、盛り上がっているスタートアップ支援の対象事業者が東京に一極集中しやすい一方で「新規事業に挑戦する後継者が集まるアトツギ甲子園のエントリー企業の9割近くが地方に分散している」という特徴があると説明。

 そのうえで「イノベーションの担い手はゼロイチだけではなく、地域の後継者も挑戦したいと思っている」として、後継者支援の気運を支援機関側から高めていく必要性を訴えました。

アトツギ支援コンソーシアムのトークセッションで登壇した家業イノベーション・ラボの宮治勇輔さん、城山ふとん店の松田陽子さん、須藤牧場の須藤健太さん(左から)

 アトツギ支援コンソーシアムでは、金融機関など支援機関側の課題についても話し合いました。

 たとえば、既存の「事業承継支援」は株式や税制など現経営者向けに「上手な事業承継の仕方」を伝えることが多いのですが、中長期的な会社の成長を目指している後継者には従来の事業承継支援に当てはまりづらく、むしろスタートアップ支援の枠組みにも近い場合もあり、どの部署がどの予算で支援するかが分かりづらくなるといいます。

 アトツギ向け伴走支援プログラム「GUSH!」を担当する大分県庁の別所宏朗さんはスタートアップ支援の枠組みのなかで後継者支援に取り組んでいるといいます。「島田電子工業の島田直弥さん、後藤製菓の後藤亮馬さんら初回のアトツギ甲子園で活躍した人がいたことで、支援を進めやすくなりました」と話します。

 このほか、後継者向けの支援イベントなどを開催している京都信用保証協会の村井章大さんは「一人だけではなかなか組織を動かすのは難しかったのですが、自治体や金融機関を回るなかで多くの人を巻き込みことで後継者支援を進められるようになりました」と話します。

 その成果も生まれています。「アトツギらぼ Meet-Up」では、女性後継者が参加しやすくなるよう、宇治市から託児サービスの支援を受けられるような仕組みも作ることができたといいます。

 若手後継者に特化した新規事業推進プログラム「SENJIN」などに取り組む、みなと銀行の河田健人さんは「後継者支援は、長期視点でファンづくりをしようというトップダウンで決まりましたが、後継者支援は現場の協力が欠かせません。地域のために動きたい、担当する企業をよりよくしたいという同僚とのつながりも広がりつつあります」と話していました。