目次

  1. 「東京の人にだまされる」と言われても
  2. 宿も村の活性化にも力を入れてくれる人に譲りたい
  3. 事業を続ける覚悟を持った人に託したい
  4. 「僕たちは家族なんだから」事業承継後も続く関係

 熊本県南部の人吉盆地を貫く球磨川(くまがわ)の最上流水源がある村。標高1722mの雄大な市房山の麓に位置し、豊かな自然と田園風景が広がる熊本県水上村に、「スローバケーションホステルMIZUKAMISO」はあります。

スローバケーションホステルMIZUKAMISO

 2020年7月の豪雨による被災でくま川鉄道が運行を見合わせている影響もあり、公共交通機関を使う場合は高速バスや路線バスを乗り継いで熊本市内から3時間半、鹿児島空港からレンタカーで1時間半はかかる山里にも関わらず、最近ではドイツや韓国など海外からも宿泊客が訪れています。

 理由は、世界中の旅行者が利用する空き部屋シェアサイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」の掲載を始めたから。84歳の女将・久保田ツヤ子さんひとりで切り盛りする宿を2021年3月に東京の会社に事業譲渡したことで、新規顧客の獲得につながっています。

スローバケーションホステルMIZUKAMISOから見た景色

 「東京の会社に事業を譲るという話をしたら、地元の知人たちのなかには“だまされるよ”と心配する人もいました。でもね、長年商売をやってきて多くの人を見てきたから人を見る目には自信がある。三瓶誠社長に会って話をしたら、同じ気持ちを持っている人だと感じたんですよ」(久保田さん)

 久保田さんが話す同じ気持ちとは、「水上荘の事業だけがうまくいけばいい、ではなく宿を核に水上村全体を盛り上げたい」というもの。

 久保田さんは84歳の今でも水上村商工会女性部に所属し積極的に集まりに参加しており、過去には熊本県女性部連合会の会長も務めるなど村全体の振興の旗振り役となってきました。できることなら自分の代わりに宿も水上村の活性化にも力を入れてくれる人に譲り渡したい……そんな気持ちが強かったと久保田さんは言います。

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