目次

  1. ポテンシャルしかない「多くの人が知らない場所」
  2. 地元の人と距離感の近い宿の価値
  3. 新参者として事業承継するときの配慮
  4. 「よそ者」だからわかる体験価値の磨き方
  5. 地方創生のためによりよいマッチングとは

 「鹿児島空港から車で1時間半。高速を降りてから下道を45分走ってたどり着く”多くの人が知らない場所”にはポテンシャルしかありません」と、東京都渋谷区を拠点にイベント企画を行なうゴンドラの三瓶誠社長は話します。

 ゴンドラでは主に企業向けプロモーション事業を受注してきましたが2018年頃から地方創生案件が増え、プランナーとして地方活性化にも力を入れています。

 「イベントプランナーとして受注する地域の仕事をやっていると、なんとかしてこの地域を盛り上げたいという強い気持ちがありつつも、現場の進みが遅いことにどうしてだろうと思うことがたびたびありました。どうして進まないのか、どうやったら進められるのか、外の人ではなく“なかの人”として感じ取り、地方創生に深く関わりたいと思ったんです」(三瓶社長)

市房山などの自然に囲まれた水上荘

 日本全国のM&A情報を集め始め、出会ったのが熊本県水上村の温泉旅館「水上荘」でした。畑違いの旅館業、しかも縁もゆかりもない本社から遠く離れた熊本県の山の中の事業譲受。いちばんの決め手は「市房山の春夏秋冬を眺められる、旅館の前の広大な敷地」だったと三瓶社長は言います。

 「個室を充実させた高級温泉旅館などハードを売り物にした観光地化だと商売として難しい立地だと思います。ただ都市部では、メジャーな観光地を訪れるような旅ではなく、素朴な田舎で過ごすことで得られる体験に価値を見出す人が増えているように常々感じていました。水上荘前の敷地でBBQをしている人やグランピングテントで楽しむ人の姿が浮かんできて、水上荘を受け継ごうと決めました」(三瓶社長)

水上荘30周年記念パーティー(スローバケーションホステル MIZUKAMISO提供)

 熊本県内有数の花見スポットとして、水上村の市房ダム湖畔の1万本の桜は有名です。「お嶽さん(おたけさん)」として人吉球磨地方の人々に崇められてきた標高1722mの市房山を目指す登山客も多く、村内には小さい宿泊施設が水上荘以外にも10数軒あります。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。