目次

  1. MROとは
  2. なぜMRO調達の管理(マネジメント)が注目されているのか
  3. MRO調達の管理が難しい理由
    1. 少額多品種
    2. 調達部門が複数存在し、専門部門がない
    3. 取引先が多岐にわたるケースがある
  4. MRO調達を管理するときのポイント
    1. 調達価格の適正化
    2. 業務コストの適正化
    3. 在庫管理の適正化
    4. コンプライアンスの強化
  5. MRO調達の管理プラットフォームとは
    1. 無償プラットフォーム
    2. 有償プラットフォーム
  6. MRO調達の管理プラットフォームを導入するときのポイント
    1. 自社の調達の課題を整理
    2. DX化する領域と現状維持の領域を確認
  7. MRO調達でコスト適正化と経営リソースの軽減を

 MROとは、Maintenance(メンテナンス)、Repair(修理・修繕)、Operation(操作・稼働)の頭文字を取った用語です。

 従来は、製造過程において、製品の製造部品や原材料を除いた工具や消耗品、保安部品、修繕部品など物品を表す用語でしたが、現在はオフィスで使われる文具や消耗品も含んだ、広義の意味でMROと呼ばれています。

 とは言え、MROという言葉に馴染みが薄い人にとっては、MRO≒副資材ととらえても良いでしょう。

 また、MROは、企業が経済活動をおこなううえで調達する「直接材」と「間接材」のうち、間接材領域に含まれます。

  • 直接材:売上原価に含まれる原材料、仕入れ商品など
  • 間接材:経費に含まれるMRO、エネルギー、業務委託、その他サービスなど
直接材と間接材
直接材と間接材・筆者作成

 MROの理解を深めるため、自動車製造業をもとに具体例を出して解説します。

 自動車を生産するのに必要なパーツ、例えばドアやミラー、ハンドル、タイヤなどは製品そのものを構成する部品であり、直接材に当てはまります。

 一方、これらを組み立てるためには工具が必要であり、機械で製造する場合はそれらのメンテナンス部品も必要です。さらに、危ない作業もあるため、作業員を守るヘルメットや作業靴なども欠かせないでしょう。そして、生産したものを梱包する段ボールや、配送に使われる資材などを用意する必要もあります。これらすべてをMROと呼びます。

 また、オフィス環境においては、印刷をするためのインクやトナー、コピー用紙、文房具類なども、MROに含まれます。

 近年では、MRO調達の管理(マネジメント)が注目を集めています。

 MROは、管理の複雑さから各企業において削減が考えられていて、未開拓領域とされています。

 原材料や仕入れ商品が含まれる直接材は、企業の生命線となる調達です。原材料が安定的かつ安価に調達ができなければ、商品の供給や競争力に大きな影響が出ます。しかし、安易なコスト削減をしてしまうと、製品品質に影響を与え、製品の回収、損害賠償と発展する可能性もあります。

 そのため企業としては、専門部署を設けて、日々経営リソースを投下し、戦略的な調達をおこなっています。直接材はすでに管理体制が構築され、適正な調達の状況に近いと考えられます。

 一方、MROが含まれる間接材は、細かく管理をおこなうことは現実的に困難とされていました。実際、適正な管理手法が確立できていない企業は少なくありません。

 ただ、直接材に比べて適正な調達がおこなわれていないということは、この領域に改善の余地が大いにあるのと同じです。適正化ができれば、業務効率アップやコストダウンなどのメリットをもたらします。

 そうした状況のなかで、近年では調達にかかわるIT技術、ビジネスモデルの進化で、大企業を中心にMRO調達の管理手法が構築されつつあります。そのため、今多くの企業がMROのマネジメントに注目しています。

 MRO調達の管理は、今や企業において管理すべき調達領域のひとつとなっています。それに取り組むためには、そもそもMRO調達の管理を困難にしている理由をおさえておくことが重要です。大きな要因は、下記三つになります。

  • 少額多品種
  • 調達部門が複数存在し、専門部門がない
  • 取引先が多岐にわたるケースがある

 MROの特徴としては、少額多品種です。

 1品目ごとでは少額でありながら、品種量は数千品目、数万品目と多様な品種で構成されます。

 MROは直接材と比べて金額が少額であるため、MRO調達の専門部門を設けている企業は少ないのも要因のひとつです。

 調達をする際は、実際にMROを使用する部門や総務部、工場の管理部などがおこない、調達部門が複数存在することとなります。

 また、調達を専門としていない社員が、MROの調達を兼務としておこなっているのが実情です。

 MROは少額多品種かつ調達部門も複数あるため、部門間の連携が取りにくくなっています。

 そのため、取引先の集約がされず、同一品目群でも複数の別の取引先から調達しているケースも多く生じています。

MROと直接材の違い
MROと直接材の違い・筆者作成

 では、実際にMRO調達の管理をするときは何がポイントになるのでしょうか。筆者は下記、四つが重要だと考えています。

  • 調達価格の適正化
  • 業務コストの適正化
  • 在庫管理の適正化
  • コンプライアンスの強化
MRO調達の管理ポイント
MRO調達の管理ポイント・筆者作成

 調達価格を適正化する視点は下記の二つがあります。

  • 適正単価での取得
  • 品目仕様の統制

➀適正単価の取得

 適正単価の取得とは、調達する品目の調達単価を取引先と調整することを言います。

 先にも述べたとおり、MROは少額多品種の集合体です。

 金額の大きな品目は、個別に取引先と調整し適正化をしても問題ありませんが、網羅的に全品目の単価を適正化しようとすると、数千、数万の品目を一つひとつ取引先と調整する必要があり、想像を絶する工数を要します。

 そのため、1品目ごとの価格の適正化をするのではなく、ある程度のカテゴリに分けて、カテゴリー群の総額で適正化を実施する視点が必要になります。

 企業の調達品目や金額によっても異なりますが、例えば文具類、安全備品類などのカテゴリー群に分けることが望ましいです。

➁品目仕様の統制

 品目仕様の統制とは、同一品目において標準品を設定し調達単価を統一することを言います。

 これまでの経験上、適正単価での取得よりも品目仕様の統制をかける方が、調達価格適正化の効果は大きいでしょう。

 品目仕様の統制がかけられていないと、以下のような事象が社内で起こってしまいます。

 ボールペンを例にすると、Aさんは70円のボールペン、Bさんは200円のボールペン、Cさんはキャラクター付きの500円のボールペンを購入する事象です。「必要なボールペンを購入する」にあたって、本来会社が指定すべき備品の仕様があいまいなため、3者でそれぞれ仕様・定義が異なり、支出額の違いが発生しています。

 このような状況を生まないためにそれぞれの品目において、仕様・定義の確立をおこなう必要があります。現実的な方法としては、それぞれの品目で購入するものを、あらかじめ決定しておけば、調達価格を適正化できます。

 かつて、よく母親が「隣町のスーパーで卵1パック100円だったから買いに行ってきた」と話していたことを覚えています。子どもながらに、その労力と時間はコストを考えたら本当に節約できているのかとよく思っていたものでした。

 実は、企業でも同じことがおこなわれている可能性があります。

 「トイレットペーパーはネット通販で買うよりも、近くのドラックストアで買った方が安い。軍手はディスカウントストアで買った方が安いから、それぞれ買いに行く」

 実際にそこには、買いに行くまでの時間コスト、経費処理をするコスト、それを確認・承認するコストなどの業務コストがかかっているのです。

 商品が100円、200円安く買えたとしても、このような業務コストを考えた場合、果たしてそれは合理的な調達と言えるのでしょうか。

 MROの調達においては、先に述べた調達価格と業務コストのバランスからトータルコストを考える必要があります。

 在庫管理を考えるうえでは、在庫切れや過剰在庫を防ぐために、品目、または品目カテゴリーごとに適切な在庫数をあらかじめ設定し、発注点(発注をかけるタイミング)など適切な発注管理をする必要があります。

➀在庫切れが引き起こす課題

 MROの種別によっては、在庫切れを起こした場合、事業活動に影響を与える品目もあります。

 例えば、製造過程に使われる機械の保守部品が欠品した場合は、生産活動に大きな影響を与え、それによる機会損失や潜在コストは膨大なものになります。

➁過剰在庫を防ぐ

 過剰在庫が多い場合、在庫スペースの確保の問題が生じたり、仕入れの支出のみが増えて事業活動に使える資金が減り、キャッシュフローの減少を招いたりします。

 使用期限がある品目であれば、廃棄につながり、さらに余計なコストがかかる場合があります。

 調達担当者の調達活動が可視化されていない場合、私用のものを買ったり、調達先との癒着が発生したりしてしまう場合があります。

 また、強引な交渉による下請法への抵触など、コンプライアンス違反が発生してしまう可能性もあります。悪意があるとは限らず、知らずにコンプライアンスに違反する活動を進めているかもしれません。

 そのため、調達活動の一つひとつを見る必要はありませんが、重要な調達活動はチェックできる仕組みが必要になります。

 「調達価格の適正化」のように、発注できる商品を限定し、調達活動の権限の明確化、可視化により、このようなリスクは回避できるようになります。

 MRO調達はポイントを押さえながら管理する必要がありますが、これを人的リソースで管理しようとすると膨大な手間がかかります。

 2000年代に入り、IT技術やビジネスモデルの進化により、MROを電子カタログ上で調達・管理するプラットフォームをさまざまな企業が提供しています。

 MROの管理プラットフォームは、大きく分けて二つあります。

  • 商社が持つ無償プラットフォーム
  • 管理を目的とした有償プラットフォーム

 MROの販売機能を有している商社が、MROを管理するプラットフォームも提供していると、その企業と取り引きを開始すると、ほとんどの機能を無料で利用できるメリットがあります。

 自社の対象となるMRO品の取り扱いが全て網羅されている場合は、現状の取引先を集約して、プラットフォーム機能を活用しながら管理していくことができます。

 有償プラットフォームは、調達・管理プラットフォームを有償で利用し、自社独自のカタログを構築して管理するプラットフォームになります。

 具体的には、自社の取引先をプラットフォームにつなぎ、従来の関係を維持しつつ、MRO調達をワンプラットフォームで管理していく方法です。

 本当の意味で網羅的に管理するのであれば、有償プラットフォームの選択をとる必要がありますが、商品登録の手間やプラットフォーム維持費用などが必要となります。

 そこで、無償と有償のハイブリッドで利用することも可能です。

 商社の持っているプラットフォーム上で、商社から購入する品目以外を有償で商品登録をして管理したり、有償プラットフォームに商社の無償プラットフォームをつなぎ管理したりすること(パンチアウト連携)で、一元管理をしつつ、全体を可視化できます。

 自社の目的に合わせて、適切なプラットフォームを選択しましょう。

 MRO調達を管理するにあたって、プラットフォームを導入するときは以下のようなポイントに注意しましょう。

 現在の自社のMRO管理について、あるべき姿を描き、現状を整理することから始めます。

 MRO調達の管理プラットフォームを導入して失敗するケースとしては、導入することを目的にしてしまい、余計なフローが発生したり、非効率になったりしてしまう場合です。

 例えばすべてをプラットフォームで管理するために、一切例外を認めないと設定した場合、突然購入が発生したものを買えずに業務に支障が生じます。

 すべてを管理することも重要ですが、現場の状況も考え、例外規定の設定も必要です。

 そのため、調達の課題を可視化・整理して、何を達成するのかを明確に定める必要があります。

 筆者が多くの企業を支援してきた経験から重要なのは、理想像を描きつつ、できるところから着手することです。

 MROは多種多様な品目で構成されています。従来の管理方法から新しい管理方法へ移行するにあたり、現業の業務フローを変革する必要も出てきます。急激な変革は現場へ余計な混乱を招いてしまい、変革が進まなくなる可能性があります。

 ステップバイステップで進めていくことが重要であり、調達も日々おこなわれて、新たな調達領域も増えてくる可能性があるため、適宜対応していく柔軟性が必要になります。

 MROの調達は複雑ではありますが、最適調達を実現することによりコストの削減効果だけでなく、企業の経営リソースの軽減効果が期待できます。

 限られた経営リソースのなかで効率的な企業経営を実現するためには、MROの最適調達を検討することをおすすめします。