目次

  1. 語彙力とは
  2. 経営者に語彙力が求められる理由
    1. 幅広く伝える力が求められるため
    2. 自社の魅力をわかりやすく伝える力が求められるため
    3. 説得力のある伝え方が求められるため
  3. 語彙力がない人の特徴
    1. 話がわかりづらい 
    2. 常套句を多用している
    3. 汎用性の高い言葉を多用している
  4. 語彙力がないことで生じる問題
    1. 信頼されにくくなる 
    2. 誤解が生じやすくなる
    3. コミュニケーションに偏りが生じる
    4. 覚えてもらえなくなる
    5. 自分の話に自信が持てなくなる
  5. 語彙力の鍛え方
    1. 語彙力の鍛え方 インプット編
    2. 語彙力の鍛え方 アウトプット編
  6. 語彙力は筋力トレーニングと同じ 

 語彙力とは「知っている言葉の数(インプット)」と「言葉を適切に使いこなす力(アウトプット)」の二つから成り立つ力のことです。

語彙力とは
語彙力とは・著者作成

 語彙力が高い人と聞くと、おそらく多くの人が「言葉をたくさん知っている人」と答えると思います。

 たしかに、語彙の数は語彙力を構成する要素の一つです。しかし、どれだけ多くの言葉を知っていても、それらを使えなければ意味がありません。語彙力を高めるには、多くの言葉を知る「インプット」と、それらを使いこなす「アウトプット」の両方を鍛える必要があります。

 デジタルの進化とともに多くの仕事がAIに代用される今、人にしかできないことへの価値が高まっています。その一つが、自分の頭で考え、自分の言葉で伝える力です。自分の考えを相手にわかりやすく伝えるためには、語彙力を鍛えることが欠かせません。

 文部科学省が発表した「令和3年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」によると、「言葉や言葉の使い方について自分自身に課題があると思うか」との設問に「あると思う」と回答した割合は67.6%となっています。また「自分自身の課題」についての回答の結果は、以下のとおりです。

文化庁調査結果
出典:令和3年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 p.10|文化庁

 語彙力の不足は、最も多い回答である「改まった場で、ふさわしい言葉遣いができていないことが多い」、2番目の「敬語を適切に使えない」の原因として考えられます。

 この調査は16歳以上の個人を対象におこなわれたものですが、改まった場を含むさまざまな場面でふさわしい言葉を選ぶことや、世代が異なる人が理解しやすい言葉を見つけることは、経営者にとっても大切なスキルです。

 ここからは、経営者に高い語彙力が求められる理由について解説します。

経営者に求められる三つの力
経営者に求められる三つの力・筆者作成

 経営者は、自社のベテランメンバー・新入社員・取引先・顧客・採用面接を受ける学生など、世代や職業を超えたさまざまな人に想いを伝えなければなりません。

 大勢の前でスピーチする機会や、昨今はX(旧:Twitter)やYouTubeをはじめとするSNSやブログなどを通して不特定多数に向けた発信をすることも増えています。

 このように、経営者には幅広く伝えることが求められ、その助けとなるのが語彙力です。語彙力を高めることで、相手に合わせた言葉選びや誰にとってもわかりやすい表現ができるようになります。

 経営者は、就職・転職活動者向けの会社説明会などで自社紹介をすることもあります。このときに求められるのが、他社との違いがわかるように伝える力です。

 会社紹介でよく使われているようなありきたりな言葉を使っていけないわけではありませんが、その他大勢に埋もれない言葉を選び、使いこなす力があると、相手の印象により残るような自社紹介ができるようになります。

 経営者に必要な資質の一つに決断力があります。「自社で何をするのか、あるいはしないのか」「何を取り入れ、何を手放すのか」など、経営者は大小さまざまな決断を繰り返します。

 ひとたび決断すれば、次には決断内容を社員に報告・説明する場面が訪れます。「なぜその決断に至ったのか」「その決断を下すことで、会社はどこへ向かうのか」「未来にどのような影響を与えるのか」などを社員一人ひとりに理解・納得してもらうためには、語彙力を駆使して説得力のあるメッセージを届けることが大切です。

 続いて、語彙力がない人の特徴を三つ紹介します。

  • 話がわかりづらい
  • 常套句を多用している
  • 汎用性の高い言葉を多用している

 上記三つには、思考が浅くなってしまっているという共通の原因があります。語彙力が高い人は常に考えを働かせています。例えば、感謝の気持ちを伝えるときも、何を・誰に・どのように・どのくらい・どうして感謝しているのかを考え、それぞれを言語化しています。そうすることで、常套句や汎用性の高い言葉が自然と減っているのです。

 三つの特徴のうち一つでも当てはまる人は、思考が浅くなってしまっていないか、日頃の言動を振り返ってみてください。

 語彙力と話のわかりやすさはセットといっても過言ではありません。知っている、かつ使いこなせる言葉が少ないと、話が抽象的になり相手に伝わりづらくなってしまいます。

 常套句とは、ある場面においてよく使われる決まり文句のことです。例えば、スピーチをする際の「皆様のご多幸をお祈りし…」「甚だ僭越ではございますが…」などが常套句にあたります。

 こういった表現を使っていけないわけではありません。心から思っていることであれば、むしろ堂々と使うべきです。しかし、取って付けたように常套句を使い続けると、相手に合わせた伝え方や、場面に応じた言葉選びができなくなってしまいます。

 汎用性の高い表現にも気をつけましょう。「すごいですね」や「いいと思います」などは、あらゆる場面で使える便利な言葉であるため、多用しがちになってしまいます。しかし、これらを使いすぎると表現がワンパターンになり、「この人はなんでもかんでも『すごいですね』と言うな」「本当にすごいと思っているのだろうか?」と不信感を抱かれる恐れがあります。

 語彙力が不足すると、ビジネスのあらゆる場面で問題が生じます。ここでは、その問題点を三つ紹介します。

 語彙力が不足すると説明や報告が粗削りになります。すると「この人の話はいつもわかりづらい」「説明が足りないから、何度も確認しないと理解できない」「質問しても雑な答えしか返ってこず、不安になる」などと思われ、周囲からの信頼度も下がってしまいます。

 語彙力が足りないことで話がわかりづらくなると、互いの認識に誤解が生じる恐れがあります。進めていた作業を初めからやり直す事態にもつながりかねません。語彙力不足によって生じる誤解が、相手の時間と労力を奪ってしまうのです。

 語彙力が乏しいと、自分の話は一部の人にしか理解してもらえなくなります。そして、理解してもらえない人とのコミュニケーションは徐々に減っていくでしょう。このようなコミュニケーションの偏りは、人間関係を狭める原因になってしまいます。

 自分の思いや自社のビジョンを豊かな語彙で伝えられないと、相手の印象に残る話はできません。

 例えば、「当社はお客様第一で……」「経験豊富なプロフェッショナルが多数在籍し……」など、ありきたりの言葉ばかり並ぶ自社紹介では、特徴や魅力が伝わりづらいだけでなく、他社と明確に差別化できないため、聞き手の心にも残りにくくなります。

 語彙力がないと、自分の考えを的確に言語化できません。そのため「なんだかほかに良い言い回しがある気がする」「私が言いたいことはこれでは気がする」「もっとわかりやすい言い方はないだろうか」と迷いながら話すことになります。常に迷いが生じることで、次第に「私は人に思いを伝えることが苦手だ」「言いたいことを上手く伝えられない」と思うようになり、自信の喪失につながってしまいます。

 冒頭でも述べたとおり、語彙力は知っている言葉の数(インプット)と、それを適切に使いこなす力(アウトプット)から成り立ちます。そこで、インプット編とアウトプット編にわけて語彙力を鍛える方法を紹介します。

 ここでは、三つのインプット方法を紹介します。さまざまな形でインプットし、気に入った言葉に出会ったら、それをどのような場面で使いたいかを考えてみてください。アウトプットを想定してインプットすることで、取り入れた語彙はさらに使いやすくなります。

①活字と音声で鍛える

 語彙力を鍛えるには、とにかく多くの言葉に触れることです。テレビ・インターネット記事・SNS・電車の中吊り広告など、言葉が存在する環境すべてがインプットの場となります。

 なかでも、本や雑誌などの読む媒体、そしてラジオや音声メディアといった聞く媒体は、語彙力をアップさせるのに効果的です。両者ともイラストや映像などの視覚情報がなく、言葉だけで状況説明や気持ちの描写をしているためです。

 例えば「笑っている人」を描写する際、「口を大きく開け、手を叩きながら笑っている」「笑いすぎて涙が出てきた」「こちらを見て、ニッコリと微笑んだ」など細やかに描写することで、読み手・聞き手の頭にイメージが浮かびやすくなります。このように、読み手・聞き手がイメージしやすい伝え方をすることが、活字・音声媒体の特徴です。このことから、両者は語彙力を鍛えるのに特に適したメディアと言えるでしょう。

②リピートで鍛える

 一つの本や番組のリピートも有効な方法です。同じ文章や表現に繰り返し触れることで、それらがより自分の頭に深く刻まれ、アウトプットしやすくなるためです。

 好きな曲を繰り返し聞くと、いつしかメロディーや歌詞を覚え、口ずさめるようになりますよね。同じように、特定の本や番組をリピートすることで、そこに出てくる表現が自然と沁みつくことが期待できます。語彙力アップに役立ちそうな本や番組を見つけたら、ぜひ繰り返し触れてみてください。

③類語検索で鍛える

 「〇〇 類語」とインターネットで検索すると、同じような意味を持つ表現が多く出てきます。例えば「喜ぶ」の類語を検索すると「嬉しがる」「歓喜する」「有頂天になる」「小躍りする」などが表示されます。類語検索は、表現がワンパターンになりやすい人や口癖がなかなか抜けない人におすすめの方法です。

 語彙力のもう一つの柱である「言葉を適切に使いこなす力」を鍛えるには、積極的なアウトプットが欠かせません。ここでは、二つのアウトプット法をご紹介します。

①実況中継

 身の回りにある景色を実況中継するトレーニングです。

 実況中継は「素早く言葉にする」と「具体的に言葉にする」の2段階でおこなうことをおすすめします。以下の画像を例に挙げ、それぞれ解説します。

実況中継写真
実況中継写真・筆者提供
  1. 素早く言葉にする
    画像に映っているものを言葉にします。このとき、素早く口にすることを重視しましょう。「右からペン・ストップウォッチ・メガネケース・ノート」のように、具体的な言葉でなくて構いません。

  2. 具体的に言葉にする
    素早く言葉にすることに慣れたら、今度は具体性にフォーカスします。例えば、ペンは「黒の油性ペン」、メガネケースは「赤いメガネケース」、ノートは「表紙がピンクと紫のノートがそれぞれ1冊」、ストップウォッチは「ダークグレーの、SEIKOのストップウォッチ」。最初は一言で良いので、言葉を足し、具体的に描写します。

 このトレーニングにより、瞬時に言葉にする力と、具体的に表現する力を鍛えられます。画像を見ながらおこなうのはもちろん、オフィスやよく歩く道、ランチのために訪れた飲食店など、さまざまな場面で試してみてください。 

②一言足して伝える

 「嬉しい」「楽しい」「悲しい」などの思いを伝える場面で、「どのように嬉しかったか」「どこが楽しかったか」「どうして悲しいと感じたか」」など一言プラスする練習をしましょう。一言加えることを習慣化すると、ワンパターンの表現から卒業し、自分の気持ちを豊かに表現できるようになります。

 語彙力は筋力トレーニングと同じです。「私は言葉で伝える才能がない」「語彙を使いこなすセンスがない」と思う必要はありません。基本的に、語彙力に才能やセンスは関係なく、実践と継続で必ず鍛えられます。この記事で紹介したことが、皆さまの語彙力向上のきっかけとなれていたら幸いです。