目次

  1. アイドルタイムとは
    1. アイドルタイムは準備の時間
    2. アイドルタイムが発生する時間帯
  2. アイドルタイムのデメリット
    1. アイドルコストの発生
    2. サービスレベルの低下
    3. モチベーションの低下、人材の流出
  3. アイドルタイムを減らす方法
    1. 生産性向上を意識する
    2. 仕事を見直す
  4. アイドルタイムを有効活用する取り組み
    1. 教育研修・事務作業
    2. 清掃・設備点検
    3. 集客活動・採用活動
    4. 新しい経営や仕事を受注
  5. アイドルタイムを売上につなげる仕組み作り

 アイドルタイムとは、勤務時間中の「仕事がない時間」のことです。工場の場合は生産設備が稼働せず従業員が待機している時間、飲食店の場合は来店が途切れ、顧客待ちでなにもしていない時間を指します。

 アイドルタイムの対義語は、「ピークタイム」になります。ピークタイムとは、工場の機械がフル稼働している時間帯や、飲食店に顧客が集中する時間帯です。

 アイドルタイムは、これからおこなう仕事の準備に充てることが基本的な使い方と考えられています。

 「段取り8分(ぶ)、仕事2分」という格言でも知られるように、準備はビジネスにおいて重要な時間です。適切な段取りをすることは、仕事をスムーズに進めるためにもかかせません。

 そのため、アイドルタイムを使い準備することで、仕事の質とスピードが上がるでしょう。

 たとえば、飲食店の会計時に手書きの領収書を一から記載するために、待たされた経験はありませんか。

 アイドルタイムに店名のゴム印と領収印を押印しておき、会計時は金額を記載するだけの状態であれば、この待ち時間は発生しません。もしかしたら、会計の行列に並んだことで次回の来店を辞めた人や、行列を見て入店を諦めた人がいるかもしれません。

 これから発生する仕事を想像し、アイドルタイムを準備に充てることで、売上につながる時間を生み出せるようになります。

 製造現場や飲食店において、アイドルタイムが発生する時間帯は以下のとおりです。

業種 発生する時間帯
製造現場 ・段取替えの前後、材料待ち・工具待ちなど
・突然の停電や故障など偶発的なもの
・閑散期や生産調整など計画的なもの
飲食店 ・モーニング、ランチ、ディナーなどのピークタイムの合間
・豪雨や猛暑など天候条件が来店に不利に働く時間帯
・近隣のイベントや交通規制などによって導線が阻害される時間帯
それ以外

【旅館・ホテル】
・チェックアウト終了からチェックインまでの時間帯
・最終チェックインからチェックアウト開始までの深夜を含む時間帯

【コンビニエンスストア】
・通勤・通学時間帯や昼食時、帰宅時間帯などのピークタイムの合間
深夜や早朝の時間帯

 製造業のアイドルタイムは予防が可能です。アイドルタイムが多いと設備の稼働率が低下し、投資効率の悪化やコストの増加につながります。

 飲食店やホテル、物販店などの接客業は、顧客の都合に左右されることからアイドルタイムの発生は避けられません。ピークタイムを踏まえ、仕事がコンスタントに発生するように調整することが生産性を高める鍵になります。

 次の顧客に備えた準備を怠ったときに限って、トラブルなど不足の事態が発生するものです。

 アイドルタイムが発生することによるデメリットはいくつかありますが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

  1. アイドルコストの発生
  2. 技術やサービスレベルの低下
  3. モチベーションの低下、人材の流出

 仕事をしていないアイドルタイムの間には、「アイドルコスト」が発生しています。アイドルコストとは、設備や労働力を十分に生かせないことで生じるコストのことです。以下の表は、製造現場や飲食店で発生しているアイドルコストになります。

業種 発生するアイドルコスト
製造現場 人件費、余分な仕掛品、工場の賃料や地代、冷暖房の費用、機械設備のリース代金など
飲食店 人件費、準備した食材、フライヤーの油やオーブンを待機させる光熱費、店舗の賃料、冷暖房の費用、機械設備のリース代金など

 アイドルタイムの間に発生しているこれらの費用は、機会費用とも言われます。

 また、アイドルタイムによって、本来得られたであろう売上や生産の機会も失っています。これらを失うことを「機会損失」と言います。そのため、機会費用と機会損失はアイドルコストと考えることもできるでしょう。

 アイドルタイムが多いことで、技術やサービスのレベルが低下する可能性があります。来店した顧客が予想より多かった場合、事前の準備が不足していると顧客一人ひとりに適切な接客やサービスができないかもしれません。忙しくなったことで、工場で製造ミスが起きたり、飲食店で品切れなどが起きたりすることもあるでしょう。

 たとえば、ピークタイム後に雑談していたところ、いきなり団体の来店がありました。しかし、清掃や片付けなどが終わっておらず顧客を受け入れる準備ができていなかったため、片付けから注文の確認、調理、配膳に時間を要したのです。結果、顧客に満足していただけるサービスを提供できませんでした。

 アイドルタイムが続くことで、従業員のモチベーションが下がりやすくなります。その結果、人材の流出につながる可能性があるでしょう。

 ピークタイム後に仕事がなくなり、急に手持ち無沙汰になると社員の緊張感がなくなることがあります。時間が過ぎるのを待つだけになり、充実感を感じられないため、さまざまなストレスを感じる人もいます。また、仕事が少ないことで会社の経営状況が心配になる人もいるでしょう。

 このような状況が続くと社員は気力が低下し、モチベーションが下がる傾向があります。また、将来の会社に対する不安から、転職などを考え始める社員も出始めます。

 製造業や飲食業に限らず、どの業界においても、一定のアイドルタイムは発生します。しかし、その多くは努力や工夫などによって削減できるでしょう。

 そこで、アイドルタイムを減らす方法を2つご紹介します。

  1. 生産性向上を意識する
  2. 仕事の必要性や方法を見直す

 生産性向上の意識を徹底することで、アイドルタイムの削減につながります。

生産性とは
生産のために投入する要素(人件費、設備、原材料など)の量に対して、どれぐらいの生産物(売上や生産個数など)があったのかを測定する指標

 投入される量(インプット)に対して生産物の量(アウトプット)が多ければ生産性が高く、逆に投入される量に対して生産物が少なければ生産性が低い状態と言えます。

 つまり、生産性向上とはインプットに対して、アウトプットをより大きくすることになります。そのためには、アイドルタイムを減らし、決められた勤務時間のなかで、より多く仕事をする必要があるのです。

 生産性を向上させる意識作りには、会社側の施策や工夫なども必要になります。たとえば、生産性を向上させたことで会社の利益が上がり、自分たちの豊かさにつながっていると実感してもらうのです。施策としては、給料にインセンティブを付けたり、賞与に反映させたりする方法があるでしょう。

 このように、インプットに対してより大きなアウトプットを求める意識を徹底することは、各自のアイドルタイムを減らしていく動機づくりに役立ちます。

 アイドルタイムを減らすために仕事を見直し、必要がないことをやめてみましょう。時間的な側面と動作的な側面を分析し、ムダな時間や動作を取り除いた後に、より効率的な方法や手順に置き換えます。

 多くの製造業では、QC活動(Quality Control活動:品理管理改善活動)に代表される小集団活動や提案制度の活用によって改善のアイディアを広く募集する取り組みがおこなわれています。

 また、IE(Industrial Engineering) など科学的手法の導入が有効です。

IE(Industrial Engineering)とは
作業や工程を科学的に分析する手法。IEの7つ道具である時間研究や稼働分析、工程分析、作業分析(動作研究)、レイアウト分析、マテハン分析、事務工程分析が有名。いずれの分析からも、問題の把握と改善案の立案が可能。

 たとえば、工程を分析し、運搬距離や検査工程を見直すことで手待ち時間の削減を図ります。そのほかにも、段取りの方法を変えることで機械の稼働率が高まり、アイドルタイムを減らすことにつながります。

 飲食業では、作業効率を高めるとともに、顧客満足度にも配慮しながら改善しましょう。

 たとえば、複数の皿で提供していた料理をワンプレートで美しく盛り付けても良いでしょう。ワンプレートにすることで顧客満足度を損なうことなく、配膳や皿洗いの手間や破損のリスクなどが低減できます。

 アイドルタイムの時間で、競合店と差別化する取り組みをおこなうことが集客につながり、「顧客を待つ」というアイドルタイムも減らせるでしょう。

 アイドルタイムを完全になくすことは難しいため、その時間を有効活用し、売上アップにつなげていきましょう。

 アイドルタイムを使い、教育研修や事務作業をおこないましょう。

 業種を問わず、仕事や来店客がない時間帯であれば、実務を離れて学ぶOff-JT(Off the Job Training)による研修や訓練をおこなえます。多くの研修機関でリモートによるオンライン研修を実施しており、移動する時間も必要ありません。

 また、先輩が顧客役を務めるロールプレイング研修で、新人スタッフのトレーニングで対応力向上を図るのもひとつの方法です。人気(ひとけ)のある店舗には、来店しやすくなるという心理を使い、店外から研修の様子を見た通行人に来店を促す効果もあります。

 来店客が少ないなかでのOJT(On the Job Training)もおすすめです。ピークタイムに慌ててしまう新人に対して、落ち着いて仕事を振り返る機会になります。

 また、中堅やベテラン従業員向けに、多能工(複数の作業ができる従業員)化に向けたOJTの機会を作れます。どの業種においても、一人で複数を担当できる従業員がいれば、人員不足によるアイドルタイムやアイドルコストの発生を抑えられます。

 アイドルタイムをスケジュール管理や計画策定などの事務作業の時間に充てるのもよいでしょう。

 アイドルタイムに厨房機器や設備など普段行き届いていない部分の清掃や点検をおこないましょう。

 勤務時間中に実施することで労働強化の防止や残業代削減にもつながります。

 5S活動の内、整理・整頓・清掃が行き届いた仕事場は、生産効率が高く顧客満足度が高まります。設備などの予期せぬトラブルの防止にも有効です。

5S活動とは
作業の安全や質を向上させる目的で職場環境を維持する5つの活動。
整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Shitsuke)の頭文字のSをとって「5S」と呼ぶ。

 支援先のラーメン店では、朝のアイドルタイムに調味料の補充とテーブルを清掃すると定めています。この作業を徹底したことで、調味料が足りないというクレームがなくなりました。

 それまでは、ピークタイムに作業を中断して対応する必要があり、大きなストレスになっていたのです。また、毎朝テーブルを清掃することで、事前に汚れや故障などに気づけるようになり、予期せぬトラブル対応がなくなりました。

 アイドルタイムに集客活動や採用活動をおこないましょう。とくにSNSを活用した方法であれば、手待ち時間などの少ない時間でも効率よく活動できます。

 多くの企業がSNSを集客ツールとしているなか、飲食業も多くの来店客を獲得するために、SNSを使ったPRが欠かせません。しかし、現状は取り組む時間がないのが悩みの飲食店も多いのではないでしょうか。そのため、SNSを使った集客活動はアイドルタイムを活用し、取り組むべき活動と考えられます。

 たとえば、日頃から料理や店の雰囲気をこまめにスマートフォンで撮影し、撮りためておきます。これらに紹介文やコメントをつけて、アイドルタイムに投稿すれば良いのです。

 メッセージや投稿へのコメントの返信も、基本的にはアイドルタイムに対応すれば良いでしょう。

 また、SNS経由で採用活動するというケースも増えてきています。若い世代を中心に、SNSで興味を持った会社や店舗に応募する動きもあります。YouTubeの動画配信を始めたところ、店の公式Instagramに応募が激増し、今ではすべての採用がSNSでおこなわれているという飲食店もあるようです。

 製造業も飲食業も、人手不足がなかなか解消しない職場です。アイドルタイムに会社やお店などの魅力を発信することで、新たな人材との出会いが広がるかもしれません。

 新たな取り組みをおこない、アイドルタイムであった不稼働時間を稼働時間に変えましょう。

 たとえば飲食店では、カフェタイムをつくる、ランチタイムを延長する、テイクアウト営業を始めるなど多くの取り組みが考えられます。

 支援先の中華料理店では、コーヒーマシンを新たに導入し、店内のWi-Fiを自由に使えるコワーキングスペースをアイドルタイム限定で始めました。コーヒーをセルフ提供にして人件費を抑え、ランチタイムのプラスアルファの売上にも貢献しています。

 製造業では、既存の設備で対応可能な新たな生産や加工の受注を検討しても良いでしょう。新商品などの開発時間に充てると決めても良いかもしれません。

 設備や労働力を十分に活用する環境整備は、経営者や管理者の役割です。つまり、アイドルタイムをいかに売上につなげられるかは腕の見せ所になります。

 アイドルタイムは味方であり、うまくコントロールするとビジネスを伸ばすことが可能です。どのような将来を描いて、そのためになにを準備すべきなのか、アイドルタイムをフル活用して、そのビジョンを実現してほしいと考えます。

 常にフル稼働を強いられると機械も人も疲弊し、かえって生産性が下がりかねません。ただし、待つだけの「アイドルタイム」が多い職場も疲れるものです。

 この記事では、製造業や飲食業を中心に説明しました。しかし、アイドルタイムを減らし、従業員が生き生きと働ける生産性の高い職場は、どの業種にも共通する課題ではないでしょうか。アイドルタイムの過ごし方を工夫して働きやすい職場に変えていきましょう。