目次

  1. 生産性の定義と計算式
    1. 産出量(アウトプット)
    2. 投入量(インプット)
    3. 付加価値
  2. 代表的な生産性の指標
    1. 労働生産性
    2. 資本生産性
  3. 財務分析で使用する生産性の指標
    1. 労働分配率
    2. 有形固定資産回転率
    3. 労働装備率
  4. 補助金の要件が示す生産性の指標
    1. ものづくり補助金
    2. IT導入補助金
  5. 生産性の指標を意識する上での注意点
    1. 目標を設定した計画を作成する
    2. 日々の行動指標を設定する
    3. PDCAを回す
  6. 生産性指標と物的生産性指標のリンクが大切

 生産性の各指標を見ていく前に、生産性の定義と計算方法から確認しておきましょう。

 生産性とは、産出量(アウトプット)に対する投入量(インプット)の割合を意味します。計算式は、生産性=産出量(アウトプット)÷投入量(インプット)とされ、この値が高いほど生産性が高いと評価されます。

 産出量(アウトプット)とは、労働、設備、原材料などの投入によって生み出された成果や価値を表します。

 物的生産性では生産量、重量・面積、売上件数・金額などで表し、付加価値生産性では金額のみで表します。

 投入量(インプット)が同じである場合、産出量が多ければ多いほど生産性は高いことになります。

 投入量を構成するものは生産要素といわれます。生産の3要素とは、生産に必要な自然(土地とする場合もある)・労働・資本のことです。

 自然は土地、水・空気・光・熱などの資源、労働は人間の労働、資本はお金で外部から購入した設備や原材料などを意味します。

 企業が利益を上げるために投入した必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ)の量といえます。

 産出量(アウトプット)が同じである場合、投入量が少なければ少ないほど生産性は高いことになります。

 付加価値とは、企業において新しく生み出された価値を意味します。産出量(アウトプット)を財務諸表の数値を使って金額換算します。

 付加価値の計算方法には、「控除法」と「加算法」の2つがあります。

・控除法
 控除法とは、付加価値額を引き算で計算します。中小企業庁方式の付加価値額は、控除法で付加価値額を計算しています。

 中小企業庁方式:売上高-外部購入価額(材料費、買入部品費、外注加工費など)

・加算法
 加算法とは、付加価値額を足し算で計算します。加算法には色々な計算式がありますが、代表的な加算法に日銀方式があります。

 日銀方式:経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課

 産出量と投入量の割合を示す生産性は、健全な事業運営ができているのかを示す数値です。生産性の向上は、経営者が持つべき目標のひとつといえるでしょう。

 しかし、単に高めようと考えてもうまくはいきません。

 どの程度向上させる必要があるのか、そのためには何にどのくらい取り組めばいいのか、などを客観的に判断できる指標の設定が不可欠です。

 生産性の指標には色々な種類があります。ここでは、代表的な指標、財務分析時に用いられる指標、補助金の要件として用いられる指標にわけてご紹介します。

 まずは、代表的な指標からです。労働生産性と資本生産性の2つがあります。

 労働生産性とは、投入した労働でどのくらいの成果を上げられたのかを数字で示したものです。計算式は、労働生産性=付加価値額÷労働者の数または総労働時間となります。

 働き手一人ひとりがスキルアップすれば、同じ時間働いていてもより多くの成果を生み出すことができるようになり、労働生産性は高くなります。

 資本生産性とは、保有している機械や設備、土地等の資本がどのくらいの成果を上げられたのかを数字で示したものです。計算式は、資本生産性=付加価値額÷有形固定資産となります。

 設備の利用頻度、稼働率向上や高付加価値商品の開発などにより付加価値額が増加し、資本生産性は高くなります。

 財務分析では、収益性、安全性など色々な視点から指標が設定されています。生産性を評価する指標は、主に次の3つがあります。

 労働分配率とは、付加価値額のうち、給料など人件費の割合を指します。計算式は、労働分配率=(人件費/付加価値)×100となります。

 労働分配率の目安は非常に難しいです。高すぎると、利益を圧迫しすぎて赤字に陥りますし、低すぎると、利益に対して給料が少ないと社員から不満が出るかもしれません。

 労働分配率の業種別の目安は中小企業白書などで確認できます。

主要産業の労働分配率(経済産業省の2018年企業活動基本調査速報から)

 有形固定資産回転率とは、有形固定資産を効率的に活用しているか、稼働状況は良いのかを確認する指標です。計算式は、有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産×100 となります。

 有形固定資産率が高いほど設備などの生産性が高いと判断されます。

 この数値は、回転率ですので、回転率が高い=少ない固定資産額で効率的に付加価値額を生み出していると評価できます。

 労働装備率とは、従業員一人あたりの設備投資額を求める指標です。計算式は、労働装備率=有形固定資産÷従業員数×100となります。

 労働装備率は高ければ高いほど望ましい指標です。労働装備率が高いほど、最新化、自動化などの設備投資が行われていると評価でき、人手を介さないで、効率よく利益を上げることができます。

 この指標は、製造業、サービス業など業種間で大きな違いがあります。

 生産性向上は、中小企業の重要な課題とされ、経産省などの経営改善支援施策でも、生産性向上が支援の要件となっています。

 代表的な補助金の労働生産性の指標は次の通りです。

 ものづくり補助金とは、中小企業が新商品開発や新たな生産方式導入のための設備投資を行う場合、2021年版では最大3,000万円(補助率1/2または2/3)が交付される補助金です。

 補助金の額が大きいことからとても人気があり、また採択される競争が激しい補助金です。

 申請の要件として付加価値額の増加があり、会社全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させる3~5年の事業計画を作成する必要があります。

*ものづくり補助金の付加価値額
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

 IT導入補助金は、中小企業が課題解決やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップを支援する補助金です。

 たとえば、2021年版のIT導入補助金のA類型なら補助金額は30万~150万円(補助率1/2)、B類型なら150万~450万円(補助率1/2)となっています。
 申請の要件として、労働生産性の伸び率の向上があり、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上及びこれらと同等以上の、数値目標を作成する必要があります。

*IT導入補助金の労働生産性
労働生産性=粗利益(売上-原価)/(従業員数×1人当たり勤務時間(年平均))

 先述したように、生産性向上は自然に達成できるものではありません。目標を設定し、指標の向上に不断に取り組むことが重要です。

 生産性の向上を実現するためには、規模や業種に沿った目標値を設定することが重要です。

 目標を設定したら、目標を実現するための計画を作成し、経営者と社員が一体となって取り組むことが必要です。

 例えばサービス業では、労働生産性や労働分配率を指標とし、社員のスキルアップや多様なサービス・価格体系の設定などに取り組みます。

 製造業では、資本生産性や有形固定資産回転率を設定し、設備の刷新、高付加価値製品の開発などに取り組みます。

 会社全体の目標値として財務諸表による指標を設定することは重要なことです。

 しかし、財務諸表からの指標は、現場には理解しづらく、また日々のマネジメントが難しくなります。例えば「労働生産性」を向上させようと現場に言っても、現場は動きようがありません。

 そのため、現場で理解しやすく日々の行動につながりやすい行動指標を設定することが、最終的に生産性の指標向上につながります。たとえば、行動指標例は次の通りです。

  • 一日の生産目標と達成実績
  • 製造設備の停止時間
  • 社員間の残業時間の平準化

 PDCAとは、 PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(改善)という4つの言葉の頭文字を取った言葉です。

 計画を立てて実行し、検証し、改善したら、また計画を立てる、とサイクルを回すことで、指標の達成状況確認や課題解決などを図るフレームワークです。

 指標や計画を設定しても、実際にどのように実行されているかを確認しないと生産性の改善につながりません。

 指標の種類や内容に応じて、日々の朝会、月1回の全社会議などで、指標の状況や改善の方向性を共有することが重要です。

 生産性向上は、目標を立てて計画・実行することが重要です。生産性の指標は、その際の目標値の設定や目標値の達成状況の確認に使われます。

 注意しなければならないことは、財務諸表から導き出される指標は、一定期間(会計期間)を経た結果論に過ぎないことです。

 生産性向上に向け実効性のある取組みとするためには、財務諸表と関連する物的生産性指標(行動指標)をきちんと設定した上で、日々モニタリングすることが大切です。

 経営者として自社の現状を分析し、生産性指標と現場の行動指標をきちんと設定しリンクさせることをおすすめします。