目次

  1. 2代目が育てた看板商品
  2. 金融マンだった夫が3代目に
  3. 働く環境の整備と商品開発を加速
  4. 長女はシンガポールで事業展開
  5. 初の女性蔵人になった次女
  6. 新規営業に力を入れる三女
  7. 性格は違っても思いは一つ

 福岡醤油店は1895(明治28)年、福岡長太氏が創業。従業員だった美香さんの父・友宏さんが1960年、廃業危機だった蔵を2代目として引き継ぎました。

 現在は従業員13人を抱え、2022年の製造量は320キロリットル。うち6~7割が三重県内で販売され、地方発送や自社ECサイトが3割となっています。商品アイテムは万能しょうゆ「はさめず」を主軸に、本醸造しょうゆ、ポン酢、めんつゆ、ドレッシングなども含めて20以上にものぼります。9年前からシンガポールにも拠点を置き、レストランを中心に海外での需要も伸ばしています。

4代目社長として蔵を引っ張る川向美香さん

 原料は三重県産の丸大豆と小麦を使い、麹づくりから醪(もろみ)の手入れ、しぼりやラベル貼りまで、ほとんどの工程を人の手で行います。

 仕込みに使う木桶や「キリン式圧搾機」と呼ばれる道具などは、創業時からのものを修繕しながら使い続けています。「蔵全体に住み着いた酵母菌がうちのしょうゆの源。古くなった建物や道具も大事にしてきました」と美香さん。

キリンのように長いケヤキの木に重りをつけて圧搾する「キリン式圧搾機」。時間をかけて搾り、キレの良い味わいと程よいまろやかさに仕上がります

 父・友宏さんが看板商品に育てたのが「はさめず」でした。昔ながらの本醸造しょうゆに、植物性アミノ酸などのうま味成分を加えた加工しょうゆで、当時は珍しいものでした。商品名は「京都でしょうゆのことを『はさめず』(はしではさめない料理という意味)と呼んでいたことに由来すると聞いています」(美香さん)。

 1965年に「はさめず」を商標登録。塩気が強くないまろやかで甘味のある独自の味わいがリピーターを呼びました。友宏さんが引き継いだ時は年商3千万円程度でしたが、はさめずのヒットで90年代後半には8千万円まで成長しました。

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