「母性神話」どうなくす? 無意識のバイアスめぐり女性経営者が座談会
女性の後継ぎを支援するウェブサイト「跡取り娘ドットコム」は2023年7月28日、ツギノジダイとコラボして、「『女性版 骨太の改革座談会』」と題したオンラインでの意見交換会を開きました。政府による「女性版骨太の方針2023」が23年6月に決定されたことを受け、経営の現場で直面する「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」をどのように解消していくか、参加した女性経営者ら12人が話し合いました。(構成・高橋尚之)
女性の後継ぎを支援するウェブサイト「跡取り娘ドットコム」は2023年7月28日、ツギノジダイとコラボして、「『女性版 骨太の改革座談会』」と題したオンラインでの意見交換会を開きました。政府による「女性版骨太の方針2023」が23年6月に決定されたことを受け、経営の現場で直面する「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」をどのように解消していくか、参加した女性経営者ら12人が話し合いました。(構成・高橋尚之)
「女性版骨太の方針」は、女性が社会で活躍する環境整備のため、政府の男女共同参画会議が毎年6月に決定している目標や取り組みです。ここで決まった方針は各省庁の予算にも反映されます。2023年版では、中小企業に関して次のような方針が盛り込まれました。
この中で示されている「アンコンシャス・バイアス」とは、「家事・育児は女性がするべきだ」、「組織のリーダーは男性のほうが向いている」といった、性別による無意識の思い込みのことを指します。こうした思い込みが、中小企業における女性の活躍を阻んでいるとして、政府も解消を目指しています。
実際の経営の現場では、どのようなアンコンシャス・バイアスが存在しているのでしょうか。またそれを解消するために、どんなアクションが必要でしょうか。女性経営者ら12人が、自身の経験や自社での取り組みをもとに話し合いました。
女性の事業承継をサポートしている行政書士の山下絵理さんは、「日本では母性神話が根強くあり、海外にくらべて女性が働きにくい原因になっている」と指摘。共働き家庭で子どもが熱を出したとき、女性ばかりが仕事を休まなければいけないような傾向があるとして、「母親なんだから子供を優先して当たり前、自己犠牲イコール母性、みたいな風潮がいまも根強く残っている。その認識が変わらないかぎり、女性活躍といくら言っても難しいと思う」と問題提起をすると、他の参加者からも共感の声が多く上がりました。
「仕事に対する責任感は男性でも女性でも同じ。でも『母親のほうが仕事を我慢して休まないといけない、育児をやらなければいけない』という無意識のバイアスを男女両方が持ってしまっている」
文房具やオフィス家具の商社であるオカモトヤの社長・鈴木美樹子さんは、こうした「母性神話」を職場でなくすためには「男性の育児休業がいちばんてっとり早い」と、自身の会社での取り組みを紹介しました。
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鈴木さんは、男性育休の制度が変更された22年の4月と10月に、会社の朝礼で「該当するケースの場合は育休を1ヵ月とりなさい」と話したそうです。すると、2人の男性社員が、育休を取ると手を挙げました。
さらにその後、育休をとった男性社員2人と上司、総務の担当者で座談会を開きました。座談会はオンラインで配信して社員だけでなく、取引先の人たちにも聞いてもらったところ、たくさんの反響があったそうです。
また男性が育休をとりやすくするためには、「個人に仕事を任せすぎないのが一番。仕事の代替ができるようにする仕組みや、まわりの協力体制を育んでいくのが大事になる」と述べました。
いっぽう、歯ブラシの製造販売を手がけるファインの社長・清水直子さんは、「うちの職場では昔から、子どもが熱を出したときに、男性社員が妻の代わりに休むことがよくありました」と話しました。男性社員が休みやすい空気が、先代社長のころから「当然のようにあった」と言います。現在も、子連れ出勤をOKにし、「子どもが大変なときはみんなで見よう」と大きな声で言うようにしているそうです。
さらに、ある参加者からは「優秀な女性社員を大事な取引先の担当にあてようとしたとき、仲介者から『女性はNGっぽいです』と言われました。なんで?なにが関係あるの?ととても疑問でした」という意見が出ました。
こうした発言は、以前よりは少なくなったものの、今も残っているといいます。取引先という関係ゆえ、反論のしにくさもあります。この参加者は「ショックでしたが、仕事をもらう身なので、『女性でもいいじゃないですか』とはなかなか言い返せませんでした」と振り返りました。
また取引先との長時間の懇親会などには、女性が家事育児をすることを前提に成り立ってきたものもあります。
オカモトヤの鈴木さんは、仕事上の懇親をかねての宿泊ゴルフや飲み会などに理解を示しつつも、「私は行けません」と、面と向かって断るようにしています。
「記憶がなくなるお酒の席より、昼間の記憶があるときに話をしたほうがビジネスには直結します。いままでと同様のコミュニケーションを継続するのは違うでしょと。他のことにお金をまわしたほうがいいと思います」
鈴木さんはこうした主張を、業界紙でも発信し、「そういう価値観の人がいるという事も浸透していくといい」とコメントしています。他の参加者からも「発信手段のひとつとして有効かもしれない」と賛同する声があがっていました。
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