オカモトヤでは2015年から働き方改革に取り組み、制度の構築とフィードバックを繰り返してきました。その結果、直近では育児休業の取得率100%を実現。月あたりの平均残業時間も、13時間まで削減することに成功しました。
残業削減のために、仕事が俗人化しないようチーム制にしたり、業務シェアをはかったり、といった取り組みを積み重ねてきました。なかでも大幅な残業削減のきっかけとなったのが、電話の対応時間の短縮だったといいます。従来は、顧客などからかかってくる電話に午後7時までスタッフが対応していましたが、これを段階的に午後5時半までに短縮。以降は留守電としました。
鈴木さんは残業削減のポイントとして「自分たちの会社でなかなか一歩踏み出せないことに、あえてチャレンジしてみるのがよいと思います。そこが一番盲点になっていて、(残業削減の余地が)あったんだと気づけるのでは」と話します。
「商売の要になることを否定しないといけないというのはとても大変だし、私もどうやって説得をすればいいのかと非常に悩みました。そういう超えられない壁は誰でも持っています。時間がかかってもいいので、あきらめずやり続けるのが大事かなと思います」
残業を減らしても売り上げは増加
1981年創業のウイッシュボンは、横浜・東京エリアのお土産品を製造する菓子メーカー。「横濱レンガ通り」といった自社製品のほか、OEMも手掛けています。従業員数は社員約50人、パート約80人。2015年、2代目の永野さんが社長に就任しました。
永野さんが家業に入った2005年ごろのウイッシュボンは残業と休日出勤が多い会社でした。また菓子メーカー特有の事情として、クリスマスなどの繁忙期とそれ以外の閑散期とで残業時間の差が大きく、従業員の負担になっていたといいます。
そこから約10年かけて改善を進め、繁忙期に80時間、閑散期に40時間あった残業時間を、それぞれ半分ほどまで削減することに成功しました。さらに残業を減らしても売り上げは落ちておらず、むしろ8.5億円だった年間売り上げを17.5億円まで増やすことができました。
クリスマスでも仕事を増やさない
残業削減のため、永野さんは「残業するのが会社のため、売り上げのためになる」という文化を変えました。まずは自分が率先し、それまで午後10時ごろだった帰宅時間を午後5時に繰り上げ。一方で「社長の返事待ち」で従業員の帰りが遅くならないよう、従業員からのメールには迅速に対応する体制を整えました。
さらに仕事のとり方を変え、繁忙期に仕事をあまり増やさないようにしました。
「クリスマスがある冬のシーズンは、売り上げをのばそうとするといくらでも仕事がとれてしまいます。でもそうすると従業員の負担も大きくなってしまう。仕事をもらえるのはありがたいですが、クリスマスケーキをやめるなどして仕事量を調整しました」
現在は繁忙期にプラスアルファで売り上げを増やすのではなく、通常期の売り上げを重視して、通年での売り上げを確保しているといいます。
「直近の業績向上が見込めるからといって全部の仕事をとるのではなく、この仕事って通常運転でやってちゃんと利益が出るんだろうか、今後に続くお客様になるんだろうか、というところを重視して、仕事をコントロールしています」
人件費=投資の発想を
質疑応答では、「残業削減によってかえって生産性が落ちたり、結果的に人件費があがったりしないか」といった声が寄せられました。
鈴木さんはそれに対し「働き方改革を7、8年やってみて、生産性は落ちていないと思っています」と回答。また「働く環境が改善されて、社員の満足度があがり、業績ものびている。(環境改善にかかる費用を)先行投資と考えてできるかが一番のポイント」と述べました。
永野さんも「残業が減ることによって、人件費や利益が悪化しているということはないですね。また人件費があがることは必ずしもコストではなくて、将来に向けての投資。人件費イコールコスト、だから下げなきゃいけない、という感覚だと、残業削減しながら利益を出すというのはなかなか難しいんじゃないかなと思います」と話しました。
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