営業ロープレとは?効果的な進め方やチェックシートを事例付きで解説
プロ野球選手が練習を積み重ねて試合で力を発揮できるように、営業にも練習は欠かせません。自信を持って営業現場に臨み、成果を上げられるようになるには、営業ロープレによる営業シーンの擬似体験が有効です。この記事では、効果的な営業ロープレの設定や進め方、チェックシートについて事例を添えて解説します。
プロ野球選手が練習を積み重ねて試合で力を発揮できるように、営業にも練習は欠かせません。自信を持って営業現場に臨み、成果を上げられるようになるには、営業ロープレによる営業シーンの擬似体験が有効です。この記事では、効果的な営業ロープレの設定や進め方、チェックシートについて事例を添えて解説します。
目次
営業ロープレとは、営業員に営業シーンを擬似体験してもらうことで、実際の現場で適切に対応できるようにする営業トレーニング手法です。ちなみにロープレとは、ロール(role:役割)プレイング(playing:演じる)の略語で、「役割を演じる」ことを意味します。
営業ロープレは、多くの場合、新人や若手の営業員向け研修で使われます。ほかにも、新商品が発売されたときに、若手に限らず全員で営業トークをマスターするために定期的におこなうケースもあります。さまざまな場面で活用できる点が営業ロープレの特徴です。
営業員の活動は多岐にわたります。なかでも、若手・新人営業員がよく遭遇する営業シーンが以下の四つです。
営業ロープレのよくある設定 | 内容 |
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テレアポ(アポイント獲得) | 顧客と面談日を取り決める |
会社紹介 | 商品説明の前に自社の紹介をおこなう |
商品説明 | 自社の商品・サービスの魅力を説明する |
ヒアリング | 顧客の困りごとやニーズを引き出す |
それぞれの内容において、目的や心がけたいことについて解説します。
新規開拓営業をおこなう場合、テレアポは欠かせない営業シーンの一つです。既存客との面談もアポイントの獲得から始まります。
テレアポはほかの営業シーンと違って電話でおこなうので、顔の表情や身ぶり手ぶりで伝えることができません。相手の立場に立って面談の目的やメリットをわかりやすく伝える点が重要です。トークスクリプト(台本)を作成して練習しましょう。
初回面談では、自社の紹介から始まります。パンフレットや資料を使って、営業員が会社概要を紹介する場面を想定して実施しましょう。「どういう順序で」「パンフレットのどの部分を指さしながら何を話すのか」を意識させながら営業ロープレに取り組んでください。
自社の商品・サービスを説明する機会は、実際の営業においても数多くあります。カタログやプレゼン資料を使って説明するケースが多いので、営業ロープレを実施する前に資料を読み込んで理解させることが先決です。
わかりやすい説明になっているか、伝えている情報に誤りがないか、質問に対して適切に回答できているかをチェックして、アドバイスをしましょう。
顧客からは、相手自身が何に困っているのかを話してもらえません。営業員には、ヒアリングを通じて顧客の困りごとやニーズを引き出す力が求められます。営業ロープレを通じて「どういうところにお困りですか」のような質問技法や「○○ということですね」と顧客の言葉を自分の言葉に言い換える復唱技法を学びます。
営業役が話す割合が多い前述の三種類の営業シーンと比べて、顧客に話してもらわなければならないので難易度が高くなります。
営業ロープレは営業員に加えて、上司に当たる営業リーダーにも多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるかをおさえて営業ロープレに取り組みましょう。
例えば野球やサッカーの本を読んで知識をインプットしても、本番の試合では思うように体を動かすことは困難なはずです。実際に練習を積み重ねる(アウトプットする)ことで上達して、やがて試合で実力を発揮できるようになります。
営業も、基本的にはスポーツと同様です。ただ知識を蓄える(インプット)だけでは、成功を収めるのは難しいでしょう。実際に話すことで慣れて上達し、自信を持った対応ができるようになります。
課題や改善のポイントがわかる点も、営業ロープレのメリットの一つです。実際に話してみることで、足りない知識やうまく説明できない箇所に気付くようになります。また、ほかの営業員の話し方を聞いたり、顧客役を務めたりすることで別の視点からの気付きも得られます。
営業員にとっては、ロープレを一緒におこなう上司や同僚から的確なアドバイスや意見が受けられるよい機会です。自分では気付きづらい課題や改善のポイントを自覚できるため、教育・指導において役立ちます。
営業員にはそれぞれのやり方があり、うまくいった話し方や成功事例を多く持っています。このような成功パターンを、営業員自身からはなかなか話さないものです。
そこで、営業ロープレを営業チームのなかでおこなうことで、成功パターンを直接伝えられる機会が生まれます。メンバー間でノウハウを共有することで、営業チームの商談成功率が高まります。
上司である営業リーダーや教育係の先輩営業員は、営業ロープレによって部下の商談に関する現段階の実力を把握できます。一人ひとりに苦手とする商談場面があるため、それぞれの特性を知るよい機会です。
各営業員の特性を押さえつつ、実戦に即した的確なアドバイスや指導ができるようになります。このように営業チームの連帯感が強まることも、営業ロープレが有効といえる要素の一つです。
ロープレが「役を演じる」ことを意味するように、演じるための設定や手順をおさえておくことが大切です。ここでは、効果的な営業ロープレの進め方について、五つのSTEPに分けて紹介します。
営業ロープレを実施するうえで、まずは営業シーンを設定しましょう。上述しましたが、主に設定される営業シーンはテレアポ・会社説明・商品説明・ヒアリングです。
商品説明であれば、商品の型番を決めて、どのような資料を使って説明するのかを詳細に決めます。実際の現場で生かせるように、営業シーンを詳細に設定しましょう。
営業シーンが決まったら、ロープレ参加者に予習をさせましょう。あまりにも知識が不足していると、営業ロープレにも支障が出てしまうためです。
商品説明を例にとると、カタログや取扱説明書を読んだり、商品を操作したりする予習方法があります。話すために必要な商品知識を学習させるなどをして、実りのある営業ロープレになるように取り組んでください。
どのような顧客に対してロープレをするのか、顧客情報を設定します。住宅や車のような個人向け営業であれば、顧客の年齢や家族の人数、建物の状態などを設定します。ここでは、住宅リフォーム会社と仮定したときの顧客情報の設定例を紹介しましょう。
【顧客情報の設定例・住宅リフォーム会社の場合】 |
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・顧客は50歳代の夫婦二人暮らし ・住まいは郊外ベッドタウンにある築30年以上の一戸建て(2階建)、敷地面積50坪 ・車は2台 など |
実際に人物像をイメージすることで、上司側も商談に関する具体的なアドバイスができるようになります。
営業ロープレは、営業役、顧客役、オブザーバー役の3人1組でおこなうことが一般的です。顧客役は現場経験が少ない人には務まりにくいので、上司や先輩営業員が担当します。オブザーバー役は、中立的な立場から商談を観察してアドバイスをします。
営業シーンに応じて、5分あるいは10分と時間を決めてロープレをおこないます。ロープレを終えたら、オブザーバー役や顧客役がフィードバックしましょう。このとき、評価する人は複数人いた方が、より客観的な評価ができるので効果的です。まずは「よかった点」を挙げて、営業員を励まします。その次に、改善すべき点を具体的にフィードバックします。
フィードバックする際には、チェックシートを用意すると効果的です。例えば、商品説明に関する営業ロープレの場合は、以下のようなチェックシートを作るとよいでしょう。
【商品説明におけるチェックシートの例】 |
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①商談全体の印象 ■言葉づかい・表情・態度は適切であったか ■営業員の対応から、誠実さ・熱意・信頼を感じたか |
②商品説明 ■商品の特徴やメリットを正確に伝えられたか ■顧客が理解しているか確認しながら説明していたか ■顧客の質問に正確に答えられたか |
③商談内容 ■商品に対する顧客のニーズや関心を把握できたか ■商品に対する顧客の不安や懸念を取り除けたか ■次回商談につなげられたか |
このようにチェックシートを準備すれば、改善点を指摘しやすいだけでなく、教育や指導における漏れを防げます。
これまで説明したように、営業ロープレは本番の営業で成功する確率を高められる効果的なトレーニング手法なのです。しかし、人前で恥ずかしい姿を見せたくないために、ロープレをやりたがらないケースが多く見受けられます。そこで、営業員が前向きに取り組むためにも次のポイントをおさえて実施しましょう。
営業ロープレの重要なポイントは、リラックスした雰囲気づくりを心がけることです。営業会議や職場の延長線上でおこなうと、緊張感や上下関係を引きずってしまいます。営業役を務める当人は、恥ずかしがらずに役に徹しましょう。
また、うまくできなかったとしても、最後まで続けることが大切です。実際の商談では、失敗したと感じたところで中断はできません。つねに本番を想定し、失敗してもうまくリカバリーできるように指導しましょう。
営業ロープレを実施する際には、商談の設定を十分に理解させ、商品知識をしっかり予習したうえで臨むように指導しましょう。商品知識がない状態で営業ロープレをおこなうと、期待する効果を得られません。知識が不足してうまくいかないのか、話し方の問題なのかの判別がつかなくなってしまうためです。
商品説明の営業シーンに見られやすい傾向として、自分から説明できても予期せぬ質問に対して答えられないケースがあります。
相手からくる質問の内容はだいたい決まっています。先輩営業員の協力を仰ぎ、頻繁に投げ掛けられる質問と模範解答例をセットにした「よくあるQ&A集」を用意しましょう。質疑応答を営業ロープレに組み込むことで、より実戦的な営業シーンを模擬体験できます。
営業ロープレが一通り終了したら、よかった点や改善できる点について、前向きなフィードバックをしましょう。フィードバックは「相手がよりよくなってほしい」と願う、心からのプレゼントです。
また、メモを見ながら具体的によかった点や改善できる点を教えることも大切です。フィードバックを受けた人が実際の商談に生かせるように、さまざまな視点からロープレの成果をアドバイスしましょう。
新人だけでロープレをおこなうと、実際の営業シーンとずれてしまったり、ロープレ後のフィードバックが低調になりがちです。必ず先輩や指導役が一人は加わるようにしましょう。
営業成果を上げるためには、実際の営業シーンを想定して練習を積み重ねることが欠かせません。営業ロープレこそ、営業員にとっての実践型練習です。これまでに解説した営業ロープレの設定や進め方、チェックシートに沿って取り組んでみましょう。
世の中で強い営業といわれる会社の多くは、営業ロープレを毎週、毎月のようにおこなっています。何度も繰り返しながら営業ロープレに本気で取り組み、実際の商談をスムーズに進めて、受注につなげていきましょう。
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