紙袋の工夫で荷積み時間を短縮 シコーが支援する物流ホワイト化
高橋尚之
(最終更新:)
輸送力の不足が懸念される「物流の2024年問題」では、フォークリフトで荷物の積み下ろしができる「パレット輸送」が、省力化の手段の一つとして注目されています。一方で積載効率が悪くなる場合もあり、導入にためらう荷主企業も少なくありません。包装容器のメーカーであるシコー(大阪市)は2023年、紙袋の形を変えることでパレットを効率的に使う手段を公開。袋メーカーならではのノウハウで現場の負担を減らし、「物流のホワイト化」を後押ししようとしています。
「片底袋」でパレット輸送を後押し
シコーは1950年創業、従業員は約200人。業務用の原料や資材を入れる産業用包装容器(紙製やポリエチレン製の袋、プラスチック段ボールなど)を開発・製造するBtoBのメーカーです。2021年6月、4代目の白石忠臣さん(41)が社長に就任しました。
そんなシコーは2023年9月、「目前に迫る『2024年問題』解決のご提案です!」と題するYouTube動画を公開しました。
動画でフォーカスしたのが「パレット輸送」です。パレット輸送は、四角い台(パレット)の上に荷物を載せることで、フォークリフトを使ってトラックの荷物を積み下ろしできるようにする方法。手作業の積み下ろしに比べて大幅に作業時間を短縮できるため、輸送力不足が懸念される「物流の2024年問題」への対策の一つとして注目されてきました。
しかし、脱脂粉乳や飼料など粉末状のものを運ぶのに広く使われているのは、枕のような形をした「ミシン袋(たい)」と呼ばれる紙袋。丸みがあることから、積み重ねると隙間ができ、パレットからもはみ出してしまいます。本来はパレット10枚分を載せられるトラックでも、ミシン袋がはみ出たパレットだと8枚分しか載せられないなど、積載効率の悪さがネックとなっていました。
「パレット輸送を導入するためにも、なんとか紙袋をパレットにおさまるようにしてほしい」。そんな食品メーカーの相談を受けて、シコーは「片底袋(かたぞこたい)」を提案しました。
片底袋は文字通り、袋の片側に四角い底を作ることで、中身をいれると直方体のような形になるというもの。ミシン袋と違って隙間なく積み上げることが可能になります。シコーは、標準的なパレットの大きさである1.1メートル四方に安定して収まるよう、試行錯誤を重ね、最適な底のサイズのものを提案しました。この片底袋を導入した食品メーカーは、手積みからパレットに切り替えることで、荷積みの作業時間を従来の4分の1に短縮することができたといいます。
荷主からの引き合いが増加
パレット輸送に適した片底袋は、従来のミシン袋と比べて2割ほど割高であるにもかかわらず、大手を含む10社ほどから引き合いがあると言います。
「紙袋自体の単価が上がっても、より効率的で現場に負担をかけない方法にしなければいけないといった意識が、荷主の側にも広がってきているんじゃないでしょうか」。白石さんは現状をそう見ています。
シコーはまた、パレット輸送に最適な袋の種類がわかるチャート図を作成し、自社のウェブサイトで公開しました。
このチャート作成や、片底袋の開発を担当した部長代理の谷村光則さん(53)は「パレットにきれいに積むための手段は、片底袋がすべてではありません。たとえばいま使っている紙袋がヒダ付き袋なら、ヒダ幅寸法を見直すことでキレイに積める場合もあります。大きな苦労をせずともパレット輸送に対応できる可能性があるということを伝えたくて、チャートを作りました」と、その狙いを話しました。
「当たり前」の見方を変えて課題解決を
シコーはこれまでも「空気を抜けやすくして積載効率をアップする袋」「滑り止めによって荷崩れしにくい袋」などを開発し、2024年問題が話題となる前から、輸送を効率化するアイデアを形にしてきました。
「他社製品との差別化のため『よそがやらないことをやろう』という方針でこれまでやってきました。アイデアはみんなで出し合い、役員含めてあーだこーだと話し合いながら商品開発をしています」と白石さん。2014年には、「困りごと」に応じて自社製品を紹介する専用サイトを立ち上げ、顧客からの相談が集まる環境を整えました。「紙袋をパレットにおさまるようにしてほしい」という今回の相談も、この専用サイトから寄せられたそうです。
「お客さんのリクエストには絶対応えたいという社風があり、課題解決のために新しい設備を買うこともあります。価格ではなく機能面で自社の袋が選ばれるよう、工夫を続けていきたい」と谷村さん。
白石さんも「当たり前だと思っていても、見方や切り口を変えたら解決できる課題ってあると思います。包装資材で困りごとのご相談をもらったら、しっかりそれにお応えできる企業でありたいですね」と話しました。
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この記事を書いた人
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高橋尚之
ツギノジダイ編集部員
2011年に朝日新聞入社。記者としてこれまで奈良、福島、福岡、東京で勤務。主に経済担当として観光業や運輸業、地銀などを取材してきた。福島で4年暮らした経験から、エネルギー分野と日本酒にも関心あり。
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