IT導入補助金申請の労力を軽減 「補助金コンシェル」で生産性向上を
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中小企業・小規模事業者のITツール導入を支援する国の「IT導入補助金2024」の申請が、2024年2月から始まりました。資金や人的リソースが限られる企業は、補助金によるITツール導入で、労働生産性の向上が期待できます。一方、事業者が1人で補助金の申請手続きを行うのは、労力がかかるという懸念もあります。ソフトバンク株式会社は今回、IT導入補助金の申請をサポートする「補助金コンシェル」というサービスを立ち上げました。各社の課題にマッチしたITツール選びから、補助金申請書類の記入・申請、交付手続き、交付後の実施報告まで寄り添い、中小事業者の事務負担を減らして生産性向上を後押しします。
補助金申請のメリットと課題
IT導入補助金は中小企業・小規模事業者のITツール導入を支援して労働生産性を高めるために設けられた制度です。ツールの導入費用総額の50%~80%(※各種条件によって変動。最大で450万円まで)を国が補助します。
補助金は通常枠のほか、インボイス制度に対応したソフトや受発注システム導入などをサポートする「インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)」、サイバー攻撃などに備える「セキュリティ対策推進枠」などがあります。
補助金の対象も、会計や受発注などのソフトウェア購入費、クラウド利用料、機能拡張、導入コンサルティング、マニュアル作成、研修などと幅広く、中小企業にとってお得な制度と言えます。
しかし、人手が限られる中小企業の事業者にとって、制度の内容を理解し、申請手続きを社内リソースだけで進めるのは労力を要します。さらに、「申請書類の入力ミス」、「生産性向上に効果的なITツールを選べていない」といった理由から、不採択になる恐れもあります。
そんななか、ソフトバンクは2023年9月、中小事業者のIT導入補助金申請をサポートし、ITツール導入を進めるため、「補助金コンシェル」というサービスをスタートしました。
ソフトバンクの村田浩基さん(法人事業推進第1統括部 ソリューション営業企画部)は「限られた人数で生産性や売上を上げるという目標がある中で、初めて補助金内容や説明事項を読んでも理解が難しく、調べる手間も工数もかけられないという声が、中小事業者の皆様から多く上がりました。その部分をサポートしていこうと、補助金コンシェルを始めました」と話します。
対象ツールは25種類以上
まず、導入を検討しているITツールや業務課題について、補助金コンシェルに相談すると、担当者が課題を整理し、最適なITツールの選定やIT導入補助金について説明し、課題に沿った提案を行います。
導入対象のITツールは25種類以上にのぼります。後述するBCDMなどのソフトバンク製品だけでなく、Google Workspace、Microsoft 365、サイボウズ Office、Money Forward クラウド、freee会計など、他社のツールも扱っています。
どのツールが良いか分からない場合は、ソフトバンクの「デジタル化診断 Standard」という無料サービスも併せて活用すると、より便利です。
村田さんは「たくさんのツールを用意できるのがソフトバンクの強みです。今は特にインボイス対応の関連ツールにニーズを感じています。単体だけでなく複合的なツールの活用方法も提案できます」と話します。
補助金申請を手厚くサポート
ITツールの選択後は、IT導入補助金の交付申請に移ります。国への申請は事業者自身で行う必要がありますが、補助金コンシェルの担当者がウェブ会議に入り、申請ページの画面を共有しながら、マンツーマンでサポートします。
「補助金コンシェルを利用することでお客様独自でご対応いただくよりも採択率を高めることができると思っています。準備段階から会話をし、書類の抜け漏れも確認しますので不備が減りますし、必要な文章も一緒に確認していますので、的を射た申請書面を作ることができます」(村田さん)
交付決定後も続くサポート
IT導入補助金の交付決定後も、ITツールの契約・導入、補助事業の実施という形で補助金コンシェルのサポートは続きます。
補助金を活用する事業については、事業者が国にITツール導入の実績を報告する義務があり、納品書や各種ツールの導入を証明する写真などの提出が求められます。補助金コンシェルでは、こうした実績報告の書き方などもサポートし、補助金入金後のアフターフォローも行います。
補助金コンシェルのサービス自体は、すべて無料で利用できます(※ソフトバンクのスマートフォン購入または15万円以上の年間契約プランが必要。ITツールの費用は別料金)。
補助金コンシェルでは対象ツールの拡充も計画し、さらなるサービスの充実を図っていくといいます。
村田さんは「中小企業にとっては、ITツールの導入は負担が大きいものですが、IT導入補助金という国が導入を支援してくれる制度があります。検討中の企業にとっては非常によいタイミングではないでしょうか。ぜひ、補助金コンシェルをうまく活用していただきたいです」と話しました。
スマホの浸透で高まる情報漏洩リスク
補助金コンシェルが扱うITツールの中で、特におすすめが、同社が2011年からサービスを開始した「ビジネス・コンシェル デバイスマネジメント(BCDM)」です。社用のスマートフォンやタブレット端末などを一元管理するクラウド型のMDMツールで、セキュリティーの強化につながります。政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)にも登録されています。
MDMは「Mobile Device Management」の略で、社内で使用する複数台のスマートフォンやタブレット端末をリモートで一元管理・運用できる仕組みのことを指します。最近では、スマホの浸透やコロナ禍によるリモートワークで、デバイス活用の重要性が高まる一方、セキュリティーリスクも増しています。
BCDMを担当する中井玲奈さん(セキュリティ事業統括部 SaaSプロダクト部)は「今ではメールやチャットツール、アプリで業務を行うのが当たり前になっています。大事な業務データやお客様の個人情報がどんどんスマホに蓄積され、紛失などの情報漏洩リスクも高まっています」と言います。
スマホ紛失時も迅速にロック
BCDMでは社内の管理者が、社用のスマホやタブレット端末などについて、パスワード、アプリやカメラ、テザリングの制限などをリモートで設定できます。業務に必要なアプリを一斉にインストールし、逆に不必要なアプリを一括で禁止する設定も可能です。
最新のウイルス対策ソフトも提供するほか、SaaS系ツールにログインする際の多要素認証、私用デバイスからのアクセス制御も可能にしています。
デバイスの紛失時も、24時間365日対応のヘルプデスクに連絡すれば、迅速にロックをかけたり、端末内のデータを消去したりできます。
BCDMは、一つのIDあたり月額300円が基本料金です。ヘルプデスクからのリモートロック機能は追加で200円がかかるため、IDあたりの平均利用額は月額約500円(税抜)ほどといいます。
導入に関する初期費用はかからず、1デバイスから申し込みが可能です。さらに、BCDMの年間利用料はIT導入補助金の対象になるため、50%~80%の費用補助を受けられる可能性があります。
シングルサインオン機能を実装
クラウドでの業務管理が浸透するのに対応するため、2024年2月29日からは、アイデンティティー管理を手がけるOktaと協業し、BCDMにシングルサインオン機能を実装しました。約7千のクラウドを対象に、一度の認証で複数のクラウドにログインすることができるため、都度IDやパスワードを入力することがなくなります。
IT部門の許可のない私用デバイスで業務用ツールにアクセスする「シャドーIT」を防ぐため、デバイス証明書やワンタイムパスワードを利用した認証を追加料金なしでご利用いただけます。また、生体認証のような高度な多要素認証の機能も、有償プランとして提供を始めました。
「セキュリティー機能は入れると不便になるイメージがあるかもしれませんが、シングルサインオンのように、セキュリティーを高めつつ便利になる機能もあります。ユーザーの皆様に体験をしていただくことで、社内のセキュリティー意識も少しずつ高まるのではないでしょうか」(中井さん)
BCDMは現在、約1万6千社の約240万デバイスに導入されています。
中井さんは「BCDMのようなサービスは大企業が利用していると思われがちですが、実際は中堅・中小企業の皆様がボリュームゾーンです。補助金コンシェルで費用負担を減らしながら、BCDMでセキュリティーを強化する。二つのサービスを組み合わせることで、ITツール導入にかける工数や費用を減らし、本業に割く時間を増やしていただきたいと思っています」と話しました。
ツール利用で残業時間が10分の1に
それでは、補助金コンシェルとBCDMはどのように活用されているのでしょうか。ソフトバンクは、約200人規模の訪問介護事業者の例を挙げました。
その事業者は元々、電子カルテの閲覧用にiPhoneやiPadを使用していましたが、紛失時の対策などに課題を抱えていたといいます。それでも、コスト面から対策に踏ん切りがつきませんでした。
しかし、補助金コンシェルを利用したことで、ツールの費用負担が半額になり、BCDMも導入することができました。「管理者側の負担が減ったうえで、情報漏洩リスクも低減したと伺っています」
また、別の病院事業者はBCDMを導入して、看護師に業務用スマホを支給したことで、ナースステーションに戻ってパソコンにデータを入力する作業を無くしました。この結果、残業時間が10分の1になり、病院内を移動する歩数も減るという効率化につなげました。
中小企業に使いやすいサービスに
ソフトバンクでは、中小企業の労働生産性をさらに高めるため、今後も補助金コンシェルやBCDMのサービスを拡充する方針です。最後に、補助金コンシェル担当の村田さんと、BCDM担当の中井さんに、今後の意気込みを伺いました。
村田さんは「請求書や見積書の発行ツールを導入したお客様からは、『業務効率化が進んで、本来やりたい業務に集中できるようになった』という声をいただきました。IT導入補助金のサポートはこれまで以上に力を入れ、補助金コンシェルで扱うツール数もどんどん増やしていきたいです。また、中小企業関連の補助金は他にもたくさんありますので、我々と親和性のある補助金の申請サポートも積極的に検討を進めています」と話しました。
中井さんも「セキュリティー対策はいたちごっこなので、どんどん複雑なツールを入れなければいけないという悩みもあるかもしれません。しかし、せっかく入れてもうまく運用できなければ意味がありません。BCDMでは、セキュリティーを強固にしながらも、ITに苦手意識のある中小企業の方にも使いやすいサービスを目指したいです」と力を込めました。
補助金コンシェル
「IT導入補助金」の申請業務を支援するサービスです。お客さまの課題に合わせて、ソフトバンクが抱えるITツールの提案から補助金の申請までをワンストップで提供します。
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ビジネス・コンシェル デバイスマネジメント
ビジネスで利用する携帯電話やスマートフォン、ノートPCなどのモバイル端末を一元的に管理するサービスです。端末の設定情報やアプリケーションを管理するほか、紛失時の遠隔ロックやデータ消去といったセキュリティー機能を提供しています。
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