目次

  1. 標準的運賃とは 反映はいつから?
  2. 距離別運賃表 関東運輸局の場合
  3. 新たなトラックの標準的運賃に3つの柱
    1. 荷主等への適正な転嫁
    2. 多重下請構造の是正等
    3. 多様な運賃・料金設定等
  4. 運賃交渉したトラック事業者は約71% 国交省調査

 国交省の公式サイトによると、標準的な運賃とは、トラック事業者が荷主との交渉力が弱いことや、2024年度から年960時間の時間外労働の限度時間が設けられることを踏まえ、運転者の労働条件の改善などを図るため、2018年の貨物自動車運送事業法の改正により、導入されたものです。

 国交省によると、実運送事業者に正当な対価が支払われるよう、「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」を開催して、標準的運賃について、以下の見直しをする方向が決まりました。

  • 燃料高騰分や高速道路料金なども含めて適正に転嫁できるよう、運賃水準の引上げ幅を提示
  • 荷待ち・荷役などの輸送以外のサービスの対価について、標準的な水準を設定
  • 下請けに発注する際の手数料の設定

 このほか、標準運送約款について、契約条件の明確化等の見直しを行うこととなりました。

 その結果、新たなトラックの標準的運賃は、運賃水準を8%引き上げることとなりました。2024年3月22日に告示、2024年6月1日から施行します。

 国交省の公式サイトでは、運輸局別に、新たなトラックの標準的運賃にもとづく距離制運賃表を示しています。そのなかから、関東運輸局を例に紹介します。単位は円です。

小型車(2t) 中型車(4t) 大型車(10t) トレーラー(20t)
10km 15790 18190 23060 29070
20km 17710 20430 26110 33160
30km 19630 22660 29160 37240
40km 21550 24890 32200 41320
50km 23480 27130 35250 45400
60km 25400 29360 38300 49480
70km 27320 31590 41340 53570
80km 29240 33830 44390 57650
90km 31160 36060 47440 61730
100km 33080 38290 50480 65810
110km 35010 40500 53450 69770
120km 36930 42710 56410 73720
130km 38850 44920 59370 77680
140km 40770 47120 62330 81640
150km 42690 49330 65300 85590
160km 44620 51540 68260 89550
170km 46540 53740 71220 93500
180km 48460 55950 74190 97460
190km 50380 58160 77150 101420
200km 52300 60360 80110 105370
200kmを超えて500kmまで20kmごとの加算額 3830 4380 5850 7800
500kmを超えて50kmごとの加算額 9580 10950 14620 19490

 新たな運賃では、以下の3つを見直しの柱としています。

  1. 荷主等への適正な転嫁
  2. 多重下請構造の是正等
  3. 多様な運賃・料金設定等
「標準的運賃」等の見直しのポイント
「標準的運賃」等の見直しのポイント(国交省の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000294.html)

運賃水準の引上げ幅を提示

運賃表を改定し、平均約8%の運賃引上げ【運賃】
運賃表の算定根拠となる原価のうちの燃料費を120円に変更し、燃料サーチャージも120円を基準価格に設定【運賃】

荷待ち・荷役等の対価について標準的な水準を提示

現行の待機時間料に加え、公共工事設計労務単価表を参考に、荷役作業ごとの「積込料・取卸料」を加算【運賃】
待機時間料…1760円
積込料・取卸料…機械荷役の場合2180円、手荷役の場合2100円

※金額はいずれも中型車(4tクラス)の場合の30分あたり単価

荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合は、割増率5割を加算【運賃】
標準運送約款において、運送と運送以外の業務を別の章に分離し、荷主から対価を収受する旨を明記【約款】
「有料道路利用料」を個別に明記するとともに、「運送申込書/引受書」の雛形にも明記【運賃】【約款】

「下請け手数料」(利用運送手数料)の設定等

「下請け手数料」(運賃の10%を別に収受)を設定【運賃】
元請運送事業者は、実運送事業者の商号・名称等を荷主に通知することを明記【約款】

契約条件の明確化

荷主、運送事業者は、それぞれ運賃・料金等を記載した電子書面(運送申込書/引受書)を交付することを明記 【約款】

「個建運賃」の設定等

共同輸配送等を念頭に、「個建運賃」を設定【運賃】
リードタイムが短い運送の際の「速達割増」(逆にリードタイムを長く設定した場合の割引)や、有料道路を利用しないことによるドライバーの運転の長時間化を考慮した割増を設定【運賃】

その他

現行の冷蔵・冷凍車に加え、海上コンテナ輸送車、ダンプ車等5車種の特殊車両割増を追加【運賃】
中止手数料の請求開始可能時期、金額を見直し【約款】
運賃・料金等の店頭掲示事項について、インターネットによる公表を可能とする【約款】

 標準的運賃の活用状況について国交省が2024年1~3月、事業者及び荷主約2000社にアンケートしたところ、運賃交渉を行ったトラック事業者は約71%、このうち荷主から一定の理解を得られた事業者は約75%という回答が得られました。

 事業者全体のうち運賃交渉について荷主から一定の理解を得られた事業者は約53%となります。

標準的運賃に係る実態調査結果の概要
標準的運賃に係る実態調査結果の概要(国交省の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000303.html)