目次

  1. 昭和100年問題とは
    1. 昭和100年問題と関連する「2025年の崖」問題とは
  2. 昭和100年問題の原因
    1. 当時のコンピューターの処理能力
    2. 時間的余裕による楽観視
    3. 複雑な事情による問題回避の難航
  3. 昭和100年問題に向けて企業ができる対策
    1. 事前調査とリソース確保
    2. レガシーシステムのリストアップ
    3. それぞれに必要な措置を適切に行う
  4. 20XX年問題とは 
    1. 2000年問題とは西暦の桁数を省略したために起きた問題
    2. 2027年問題とはソフトウェアのサポート終了に関連する問題
    3. 2036年問題とはNTPの32bit処理で起きる問題
    4. 2038年問題とはUNIX時間に関連する問題
  5. 昭和100年問題は将来への布石

 昭和100年問題とは、2025年にコンピューターのシステム障害が起こる可能性がある問題です。2000年問題と同様の「年数処理に起因するシステム障害」が懸念されており、未対応のまま2025年を迎えると、コンピューターの時間処理に問題が起こりさまざまな影響が出ると指摘されています。

 日本の官公庁や企業のシステムでは、元号による年表記が一般的です。元号は突然変わるため、新元号への対応には時間的制約があります。そこで、大規模な改修を回避するために、昭和のまま年数カウント基準を継続し内部処理で新元号へ反映させる方法が採られました。

 例えば、昭和65年を平成2年、昭和66年を平成3年と換算するような方法です。そのため、2025年にはその基準値が「昭和100年」に到達します。2桁処理ではオーバーフロー、または一巡して「昭和00年」と処理される可能性があり、システム誤作動の原因となるのです。

 以上の理由から、2025年に起きるこの問題は「昭和100年問題」と呼ばれています。これは元号を使用する日本特有の問題のため、あまり周知されていません。しかしながら、トラブルや混乱を防ぐためにも早急な調査と対応が求められます。

 昭和100年問題は、単に昭和時代の古いシステムによって引き起こされるコンピューターの問題だけではありません。例えば、「20XX年問題」をはじめとして共通しているのは、対応に伴い増大するコストと労力、IT人材の不足などの深刻化です。

 特に、2025年はタイミング的にもITにおけるさまざまな問題が重なることが予想されています。ポピュラーな例としては、Windows10のサポート終了の問題があります。このような問題を、経産省では日本におけるIT戦略(DX推進)の分岐点、いわゆる「2025年の崖」だといっています。

 昭和100年問題は分水嶺です。古いIT資産への依存度が高いまま世界の潮流から取り残されるか、レガシーシステムから脱却、転換して技術先進国としての地位を保全できるのかという崖っぷちに立たされています。

 2025年はその瀬戸際だという意味でも、まさにそれは「崖」だといえるでしょう。そして、その日本的な問題の象徴としても挙げられるのが「昭和100年問題」であるといえます。

 昭和100年問題が起きる原因には、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。その要因となるものを、詳しく見ていきましょう。

 プログラム作成当時のコンピューターは処理速度が遅く、処理できるデータ容量も限られていました。そのため、可能な限りプログラムの容量を節約する必要があったのです。そこで、日本では直近で影響がなく効果的な方法として、2桁で収まる元号が一般的に使用されました。

 当時、昭和100年問題が想定されなかったわけではありません。しかし、実際に問題が発生するまでには十分な期間があり、将来その問題が起きるまでにシステムはリプレースや更新が行われると考えていました。

 昭和でのカウントが3桁に至るまで、同じシステムが使い続けられるという想定は難しかったのでしょう。ところが、実際にはいまだにその問題を抱え込んで稼働しているシステムが残ってしまっています。

 長期間古いシステムが残ってしまう理由には、古いシステムへの依存やその他の複雑な事情が影響しています。一度システムが順調に安定稼働すると、そのシステムをできる限り長く使いたいと思うのが人間の心理です。また、実際にシステムを更新やリプレースをするとなれば、システムが安定するまで莫大な時間や費用、労力がかかることも予想されます。

 特に経済的な事情やシステムを停止できないなど運用上の都合があると、使用継続せざるを得ないでしょう。また、レガシーシステムへ対応できる人材の確保や、相次ぐ改修によって複雑化したシステムへの対応が困難になったことも問題が回避されてしまう要因です。

 安定稼働しているものを極力変えたくないと思う心理やコスト、冗長化したシステムへの対応などが複雑に絡み合って問題回避や対策が遅れる原因になっています。その結果、昭和100年問題として顕在化することになったといえるでしょう。

 昭和100年問題に向けて、企業ができる対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

昭和100年問題に向けた対策
昭和100年問題に向けた対策(デザイン:中村里歩)

 ここでは、企業が行うべき対策をステップごとに解説します。

 昭和100年問題への対策には人的、経済的、技術的なリソースが必要です。対応漏れや移行後のトラブル回避を防ぐためにも、片手間に行うのではなく全社一体となった取り組みが必要です。そのための人的配置、予算措置、情報収集などについて調査や準備が必要です。

 準備が整ったら、古いシステム、いわゆるレガシーシステムの早急な洗い出しを行います。 使用頻度が低くても、稼働をさせる可能性があるものを放置しておくと、2025年以降使用を開始した途端にトラブル要因になる可能性があります。

 現在稼働中のシステム以外にも、組込みシステムや個別管理しているデバイス、機器なども含めてリストアップすることが大切です。

 リストアップが終わったら、改修、更新、新規入替など、それぞれに適した対応をただちに行います。 調査やリストアップ、対応実施には、レガシーシステムに明るい人材や技術者、または外部の事業者からの支援が必要になることもあります。

 20XX年問題とは、年号や時間といった処理に関連して西暦2000年以降に到来する可能性があるコンピューター関連のトラブルやその影響のことです。

 「昭和100年問題」は「2025年問題」とも読み替えることができますが、それ以降では例えば「2027年問題」、「2036年問題」、「2038年問題」などの発生が予想されています。

 実際に「2000年問題」では世界中でコンピュータシステムにトラブルが発生しました。事前の対応などにより大きな混乱やトラブルはなかったものの、20XX年問題で起きるトラブルの規模や影響の大きさは実際に起きてみなければわかりません。これらの問題の放置はリスク管理面でも大きな不安材料です。可能な限り早期に対応が必要な問題です。

 そこで、ここからは「20XX年問題」の概要と影響範囲、深刻度、対応について見てみましょう。

 2000年問題とは、2025年問題と同様、西暦の桁数を省略したために起きた問題です。年数処理を西暦4桁の末尾2桁で処理する簡略化されたシステムにより、1999年以降が1900年とカウントされるシステム障害が起こりました。

2000年問題とは
影響範囲 世界各地でその影響が報告されましたが、事前に対策が呼びかけられ対応策が取られたため、予想されていたような広範囲に及ぶライフラインの停止など大規模な問題はありませんでした
深刻度 事前の予想より限定的で局所的な問題以外、大きなトラブルは起きませんでした
対応

日本では官民で事前対応を行ったため大きな混乱はありませんでした

 2027年問題とは、基幹システムパッケージの代表格であるSAP社のERPソフトウェア「SAP ERP 6.0」の保守延長サポートが終了する問題です。サポートが終了してもセキュリティーへの対応については更新されるため継続利用は可能ですが、万が一の場合にサポートがないのでリスク対応が必要です。

2027年問題とは
影響範囲 日本では企業などでおよそ2,000社あまりが「SAP ERP 6.0」を使用しているといわれており、影響範囲は狭くないと考えられます
深刻度 システムエラーによって業務停止やデータへの影響が発生する可能性があります。特に、物流や製造業などが影響を受けると社会的にも影響が及ぶリスクが懸念されます
対応

有償で延長サポートを受けられますが、その期間も長くはなく、対応を完了させるための「猶予期間」と捉えて行動することが重要です。対応としては、バージョンアップや代替システムへの移行が考えられます

 2036年問題とは、NTP(Network Time Protocol)の32bit処理で起きる問題です。NTPはシステム間の同期など、正確な時間処理のために必要な基準値を生成する仕組みです。しかし、NTPで使用される32bit符号付き整数を使ったシステムでは、2036年にオーバーフローを起こし、時刻情報が正しく処理されなくなり、システムの誤作動などが起きる可能性があります。

2036年問題とは
影響範囲 NTPを利用している組込み機器やシステム(ネットワーク機器やコンピュータなど)はいまだに稼働しているものが多いため、2036年時点でも影響範囲はかなり広いと考えられます
深刻度 時刻情報が正しく処理されず、システムの誤作動によって通信障害やシステムの誤作動、データ損失などが発生する可能性があります
対応

システムを64bit化する必要があるため、NTPを改修したり代替のソフトウェアに更新、変更したりする必要があります。または、ハードウェアを対応済みの新しい物へ交換するのも有効です

 2038年問題とは、UNIX時間を32bitで扱っていた場合、2038年に扱える値の上限値を超え、システムエラーが発生する可能性がある問題です。

2038年問題とは
影響範囲 主にUNIXやUNIX時間を使用している古いシステム、組込みシステムが該当します。2038年までに古いUNIXシステムはほとんど残存していないと予想されるため、影響は限定的でしょう。しかし、万が一のために事前の調査は必要です
深刻度 時間を適切に扱うことができずにシステムエラーやトラブルが発生し、業務が停止したりデータへ影響が出たりする可能性があります
対応

システム自体を64bit化する、または古いシステムをリプレースしたり新規に更新したりする必要があります

 古いシステムからの脱却は、処理能力の向上だけでなく、企業にとって体質改善や競争力強化のきっかけにもなり、よりよい未来への布石となることが期待されます。そのような意味でも昭和100年問題への確実な対応は企業にとって「2025年の崖」の試金石ともなり得るでしょう。