目次

  1. フォワーダーとは
    1. フォワーダーの役割
    2. フォワーダーの種類
    3. 乙仲・通関業者とフォワーダーの違い
    4. クーリエとフォワーダーの違い
  2. フォワーダーを活用するメリット
  3. フォワーダーの選び方
    1. 運賃
    2. ネットワーク
    3. 貨物の種類
  4. フォワーダーの大手企業
    1. 日本通運
    2. 近鉄エクスプレス
    3. ロジスティード
    4. Kuehne+Nagel
  5. フォワーダーを賢く活用

 フォワーダーとは、実際に船を持っている船会社や航空機を持っている航空会社から輸送スペースを借り、荷主から対価を得て貨物を輸送する会社のことです。

 自社では船や航空機を持っておらず、荷主と実運送業者の間に立って輸送責任を負って貨物を輸送します。これに対して、船会社や航空会社はキャリアーと呼びます。

 フォワーダーは貨物利用運送事業法で「利用運送事業者」と規定されています。

 フォワーダーの一番大きな役割は、貨物の発送元から荷受地までの国際輸送を、海上輸送と航空輸送を駆使して手配することです。それ以外には、国際輸送の周辺業務があります。周辺業務とは、貨物の保管、通関業務、輸出入貨物の国内輸送、梱包など、国際輸送を手配する際に必要な業務です。

 また、国際輸送を行うためには、日本のみならず海外の法律や各種条約にも精通していなければなりません。フォワーダーは、国際輸送全般の専門家なのです。

 フォワーダーは大きく2種類に分けられます。一つは海上輸送のフォワーダー、もう一つは航空輸送のフォワーダーです。多くのフォワーダーは海上輸送も航空輸送も取り扱っていますが、航空輸送だけを取り扱っているフォワーダーを「エアーフォワーダー」と呼びます。

 航空輸送の場合は、エアーフォワーダーに頼まないと貨物を航空輸送できません。なぜなら、航空会社はエアーフォワーダー以外から直接輸送を引き受けてくれないからです。つまり、一般の荷主はエアーフォワーダーを通じてのみ航空輸送できるというわけです。

 ちなみに、エアーフォワーダーをフォワーダーと呼ぶ人もいるので、呼び方を気にする必要はありません。

 乙仲は死語のため、海貨業者(海運貨物取扱業者)と同義とされたり、通関業者と同義とされたり、フォワーダーと同義とされたりと、あらゆる見方をされることが多くなっています。しかし、一般的には通関業者と同義とされるケースが多いため、ここでは乙仲と通関業者を同義とし、通関業者について解説します。

 通関業者とは、他人の貨物の輸出入申告業務を対価を得て行っている業者のことです。通関業者には、国家試験に合格し税関から認定された、関税法の専門家である通関士が在籍しています。

 フォワーダーは国際輸送を担っている利用運送業者ですが、多くのフォワーダーは通関業務も兼務しています。つまり、乙仲・通関業者とフォワーダーの違いは業務範囲ということです。

 クーリエとは、飛行機で輸送する国際宅配便のことです。つまり、小口航空貨物輸送サービスを指します。クーリエ会社でよく知られた企業に、DHL(ドイツ)、FedEx(アメリカ)、UPS(アメリカ)があります。

 クーリエの主な貨物は小口貨物であり、ドアTOドアで海外に貨物を運びます。一方、フォワーダーは大型貨物、小口貨物にかかわらず国際輸送にかかわるあらゆる手続きをおこないます。

 フォワーダーがクーリエと大きく違うところは、パック商品でないこと、運賃制度がわかりにくいことが挙げられます。以下、クーリエとフォワーダー(エアーフォワーダー)の対比表です。

クーリエ フォワーダー

取り扱う荷物

小口貨物

大小問わずさまざまな貨物

業務内容

輸出に関する業務を一貫して委託し、受託する

輸出地で船に乗せるまでだけ、海上輸送だけ、輸入地での取り扱いだけといった使い方もできる

料金体系

「AからB地点まで、3kgの場合は3000円」と決まっており、わかりやすい

貨物引取料、空港使用料、通関料、取扱料、航空運賃、サーチャージなど多くの費用が発生するため複雑

費用負担

パック式の一律料金。運賃の支払は先払い、後払いで選択できる

輸出地では輸出費用のみ、輸入地では輸入費用のみというように別々に費用が発生する

 クーリエとフォワーダーをどのように使い分けるかというと、書類や宅配便で運べるサイズの貨物はクーリエ、それ以外はフォワーダーと考えておくとよいでしょう。

 インターネットで販売された小口貨物もクーリエ便で運ばれていますが、最近は、このような小口貨物の輸送をクーリエ便とはいわずにSP(スモールパッケージ貨物)と呼ぶことが多くなりました。そして、航空便で輸送する書類のことをクーリエと呼ぶようになり、この二つのサービスを使い分ける人が増えてきました。

 フォワーダーの活用メリットを一言で表すと「楽だ」ということです。

 フォワーダーの役割は、国際輸送を核としたその周辺業務だと前述しました。つまり、フォワーダーに国際輸送を頼めば、貨物の引き取り、輸出通関、コンテナ船への貨物積載手配、海上輸送などの一連の輸出入業務をワンストップサービスで手配してもらえるのです。

 しかし、フォワーダーを活用しない場合は、船会社、通関業者等に個別に連絡して国際輸送を自分でアレンジしなければなりません。

 フォワーダーを選ぶ際に重要なポイントは、「運賃」「ネットワーク」「貨物の種類」です。これらを考慮しないでフォワーダーを選ぶと、トラブルになりかねません。

 では、どのような点を見れば良いのでしょうか。

フォワーダーを選ぶときのポイント
運賃 企業規模の大きいフォワーダーは運賃が安い傾向にあるが、貨物に合うフォワーダーを見極める方が重要
ネットワーク 貨物の輸出先にネットワークを持っているフォワーダーを選ぶ
貨物の種類 輸出する貨物の性質についての知識を持っているフォワーダーを選ぶ

 それぞれについて、以下で詳しく解説します。

 どの荷主も、できる限り安いコストで輸送することが一番重要だと考えています。結論から伝えると、企業規模の大きいフォワーダーは運賃が安い傾向にあります。大きなフォワーダーの方が、取扱貨物量が多いからです。船会社や航空会社から見ると、貨物量が多い会社はお得意様ということになり、より安価な運賃を提供しがちなのです。

 しかし、小さなフォワーダーだから運賃が高いわけでもありません。フォワーダーによって得意な地域や不得意な地域があるからです。自社の貨物に合ったフォワーダーを探して見極めることが重要です。

 フォワーダーは、グループ企業や関連企業との間で世界中にネットワークを張り巡らせています。そうすることで、貨物の到着地で荷主に貨物を引き渡すことができているのです。しかし、世界中すべての国と地域に仲間がいるわけではありません。

 そこで、荷主はフォワーダーを選ぶにあたって、そのフォワーダーがどの国と地域にネットワークを持っているのかを知っておく必要があります。ネットワークが広いに越したことはありませんが、貨物の輸出先にネットワークがあればよいので、ネットワークの大小にこだわる必要はありません。

 また、海外拠点に日本人駐在者がいるかどうかもフォワーダーの選択条件の一つになり得るでしょう。

 委託するフォワーダーが、輸出する貨物の性質についての知識を持っているかどうかもフォワーダー選びのポイントの一つになります。

 例えば、精密機器の場合を考えてみましょう。コンテナ船は当然ながら海の上を航行しますから、コンテナ内の湿度は高くなります。航行する地域によっては、温度も高くなります。精密機器の特質を考慮して、湿度や熱に強い梱包方法を提案できるようなフォワーダーを選びましょう。

 また、危険品の場合は国連で定められた梱包方法でなければ船積みすることができません。適切な梱包方法をよく知っているフォワーダーを探しましょう。

 日本では、一般社団法人「国際フレイトフォワーダーズ協会」という団体があり、日本で営業しているほぼすべてのフォワーダーが加盟しています。加盟しているフォワーダーは、2024年3月6日時点で532社にのぼります。

 このなかから、自分に合ったフォワーダーを選ぶのはとても難しいでしょう。ここでは、大手のフォワーダーを何社か挙げてみます。

日系企業 外資系企業
・日本通運
・郵船ロジスティクス
・近鉄エクスプレス
・阪急阪神エクスプレス
・西日本鉄道
・ロジスティード
・Kuehne + Nagel(スイス)
・DHL(ドイツ)
・DB Schenker(ドイツ)
・CEVA Logistics(フランス)
・DSV AV(デンマーク)

 下記では、日本通運、近鉄エクスプレス、ロジスティード、Kuehne + Nagelについて少し詳しく解説します。

 日本で一番大きなフォワーダーですが、フォワーダーというよりも総合物流企業といった方が正しいでしょう。その業務はフォワーダー業務だけにとどまらず、倉庫保管、重量品輸送、美術品輸送、海外引越など、物流関係の仕事は何でも行っています。

 2024年3月6日時点で、世界49カ国、318都市に718の拠点を有しています(参照:日本通運)。

 近鉄エクスプレスは、近畿日本鉄道の親会社である「近鉄グループホールディングス」の子会社です。もとは⽇本初の航空貨物専業会社としてスタートし、現在では陸海空すべてを網羅した総合物流業者として、日本はもとより世界中でフォワーディング業務やロジスティクス業務を展開しています。

 また、2015年にはシンガポールに本社を置く船会社「Neptune Orient Lines Limited(NOL)」の完全出資子会社であり、世界35カ国でロジスティクスビジネスを展開している「APL Logistics Ltd(APLL)」を傘下に収め、高付加価値のロジスティクスサービスを提供しています。

 2023年9月時点で45カ国、662の地点に拠点を持っています。なかでも得意としている地域は、中国とインドです(参照:近鉄エクスプレス)。

 ロジスティードはもともと日立の物流子会社として発足し、その後「日立物流」という名前で物流業を行っていました。その後、資生堂、内田洋行、DIC、ホーマック、日立電線各社の物流子会社や、日産系の物流会社であるバンテックなどを子会社とした後、2023年4月に商号をロジスティード株式会社に変えました。

 その成り立ちや子会社化した企業からもわかる通り、扱っていないものはないというくらい幅広く物流業務やフォワーディング業務を行っています。

 2023年3月末時点で、国内では334拠点、海外では27カ国と地域に474拠点の体制を整えています(参照:ロジスティード)。

 Kuehne+Nagel(キューネ・アンド・ナーゲル)は、スイスに本社を構える、世界最大のフォワーダーであり、総合物流業者です。世界100カ国に1,395の事務所を構えているということからも、日系フォワーダーの拠点数とは桁が違うことがわかります。

 どの国に強いというよりも、どの国にも強いといえます。また、扱えないものはないともいえるでしょう(参照:Kuehne+Nagel)。

 フォワーダーは、国際海上輸送・航空輸送のプロフェッショナルであり、貨物の輸出や輸入の際には必ず必要なサービスです。

 小口貨物の輸送であるクーリエやスモールパッケージ(SP)とは違うので、その違いを理解して使い分けてください。

 また、日本には500を超えるフォワーダーがいますが各社それぞれ得意な地域や取扱貨物が異なるので、自社に合ったフォワーダーを選択するようにしてください。