リフレーミングの活用事例、ご当地×非常食が大ヒットした売り場とは?
廣畑達也
(最終更新:)
愛知県岡崎市で、1000超の新規事業・新商品を生み出している「岡崎ビジネスサポートセンター(オカビズ)」の立ち上げセンター長の秋元祥治さんは、ヒト・モノ・カネのない小さな会社、小さなビジネスであっても、新規事業を生み出す「ひらめき」は必ず起こせるといいます。今回は、授産施設と連携して開発された「缶入りパン」の画期的な売り出し方から、強みをいかにリフレームするかを学びます。後段では売上の悩み解決を目指すスクール「事業アイデアを量産できる”ひらめき”プログラム」もご案内します。
地方の「缶入りパン」の隠された強みをリフレーミング
今回は、趣向を変えて、お題から発表してみましょう。自分ならどんなアドバイスをするか、考えてみてください。
建設現場で用いられるアルミ製の仮設階段の製造販売を行っている会社があります。後継ぎが戻ってきて、新規事業と社会貢献を兼ねた、授産施設と連携しての缶入りパンの製造販売を始めました。味はいいと評判だけど売上がパッとしない、と相談にやってきました。あなたなら、どのようなアドバイスをしますか?
相談に訪れたアルディの首藤政俊さんは、中小企業と障害者就労支援施設等のマッチングを手掛けるなど「事業を通して社会に貢献していく」という意識の非常に強い方でした。その思いを受け取りつつも、商材は缶入りパン。普通は非常食として防災グッズの中に入っているもので、日常で消費するものではありません。どちらかといえば“地味な”商材と言えるでしょう。
しかしそこはオカビズ。連載でも繰り返し述べてきたとおり、まずは「強み」探しが鉄則です。
上記のお題を読んで、あなたならどこを深掘りするでしょうか。相談員のセンサーに引っかかったのは、非常食において普通求められることのない「味はいいと評判」です。非常食で味がいいとは、どういうことなのでしょうか。詳しく聞いてみることにしました。
すると、思ってもみない答えが返ってきたのです。
「実はうち、最小ロットが小さくて、264缶でつくれるんです。だから、いろいろな味をつくれます」
非常食とだけ捉えていれば、缶入りパンに「味」なんていらない、となったかもしれません。
しかし、アルディではその「味」を考えていたのです。これはうまくリフレーミング(捉え直し)ができれば、消費者にも刺さる「強み」になる――そう考えた相談員は、このときも脳内検索……。
すると、あるトレンドが見えてきたのです。
リフレーミングとは ひらめきの先までイメージ
私の頭の中でひらめいたのは、「ご当地〇〇」でした。
この相談が寄せられた2015年ごろは、まさに「ご当地ポテチ」や「エリア限定ビール」が大当たりしたころでした。
その特徴は、地域限定の小ロット。味もパッケージも多種多様。これは、まさにアルディが缶入りパンで実現していたことと同じです。
こうした「ご当地非常食」というコンセプトが生まれ、「味噌ですよ」として売りに出され、大ヒットを遂げました。NHK「おはよう日本」や、30を超える紙誌で取り上げられました。
ここで大事なのは、「なるほど、こうやってアイデア商品を出せばうまくいくんだ」ということではありません。
ご当地非常食というコンセプトによって何が可能になるかまで考えて立案している、という点が重要なのです。この場合で具体的に言うと、「販路」が変わります。
賞味期限が5年ある非常食は、「ご当地」というコンセプトを掛け合わせてリフレーミングすることで「お土産」になる可能性が生まれました。
では、産地特有のお土産が売られる場所はどこでしょうか。
たとえば、サービスエリア。またたとえば、百貨店。こうした場所のお土産コーナーで、「東海限定〇〇味!」といったコピーとともに地域限定のお菓子が売られているのは、見たことはあるではないでしょうか。
授産施設の商品だったものが、駅前百貨店で売られるようになる。ご当地非常食というリフレーミングによって変わる一番大事なポイントは、この販路だったのです。
こうして知名度と販路をともに拡大したアルディは、豊田市からJAと連携した米粉を使った缶入りパンを3000万円分受注するなど、大きく飛躍を遂げました。
★やってみよう★
・あなたが扱う商品やサービスで、これはという強みは何だろうか。その強みを支える背景まで含めて深掘りして言語化してみよう。
・その隠された強みと、似た属性を持つ別業界のヒット商品がないか調べて、掛け合わせてみよう。
「事業アイデアを量産できる”ひらめき”プログラム」次回検討中
本連載で秋元氏が述べた「強み」に気づいてリフレーミングする手法や、トレンドと紐付けるための8つの「ちいさな習慣」について、2024年4月から体系立てて学べるスクールをオンラインで開講しています。
全5回で20万円 (税込22万円)。
次回の開催は未定ですが、ご関心のある方は、ツギノジダイの問い合わせフォームからご連絡いただければ、開催決定時に優先的にご案内します。
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この記事を書いた人
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廣畑達也
編集者
1983年生まれ、大阪府出身。ダイヤモンド社にて17年勤務した後、現在は英治出版に所属。駆け出しの頃、社会起業家という存在に出会い、事業を通して「経済性」と「社会性」を両立させるそのあり方に感銘を受け、以来、12年以上にわたり「ソーシャルイノベーション」について取材を続けている。また、本や書店をめぐる状況をいかに持続可能にできるのかも探究中。
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