目次

  1. IHI原動機とは
  2. 燃料消費率のデータ改ざんの概要
  3. IHIの中間報告で明らかになった原因
    1. 仕様確認のための出荷前試運転
    2. 海洋汚染等防止法に基づくNOx放出量確認試験
  4. 国土交通省のIHI原動機への対応

 IHI原動機とは、陸舶用ディーゼルエンジン、陸用ガスエンジン、ガスタービン、舶用システムの製造などを手がけており、IHIの連結子会社です。元々は、1910年(明治43年)に創立した新潟鐵工所がルーツとなっています。2003年に石川島播磨重工業(現IHI)が継承し、新潟原動機を設立しました。

 2019年にIHIグループの原動機事業を統合するなかで、IHI原動機に商号変更しました。

 IHIと国交省によると、新潟内燃機工場(新潟県新潟市)および太田工場(群馬県太田市)で、確認できた限りでは2003年以降に出荷した船舶・陸上用エンジンの組立完了後に行う試運転で、実際に測定された燃料消費率とは異なる数値を工場試験成績書に記載していたといいます。この数値は取引先に提出するデータでした。

 船舶用エンジンとは、公官庁船、漁船、内航船、タグボート、作業船向けが含まれます。陸上用エンジンには、発電装置や鉄道車両が含まれます。

製品区分 船舶用エンジン 陸上用エンジン
該当機種数 58 40
出荷台数 4881台
(国内1938)
(海外2943)
656
(国内604)
(海外52)
データ修正台数 4215
(国内1594)
(海外2621)
146
(国内111)
(海外35)
修正台数のうち、仕様値を満たした台数 2169
(国内798)
(海外1371)
134
(国内107)
(海外27)
修正台数のうち、仕様値を満たさない台数 2046
(国内796)
(海外1250)
12
(国内4)
(海外8)

 ※仕様値とは、取引先へ提出する仕様書に記載の燃料消費率のことを指します。

 IHIは2024年6月、国交省に対し、中間報告を提出しました。それによると、IHI 原動機の太田工場と新潟内燃機工場において、以下の2種類の試験における燃料消費率に関する改ざんが判明しました。安全性に関する不適切行為は確認されていないといいます。

  1. 顧客に納入するにあたっての仕様確認のための出荷前試運転
  2. 海洋汚染等防止法に基づくNOx放出量確認試験

 規制の対象外ですが、燃料消費率計測時の数値と異なる数値を顧客へ提出する成績書に記載することなどにより、2003年以降の国内向けに出荷された舶用エンジン1973台中、1689台について改ざんを行い、そのうち621台において顧客に提出している仕様値からの逸脱が判明しました。

 改ざんした理由について「両工場において試運転による燃料消費率の計測値が顧客に提出している仕様値に入らない場合に仕様値の範囲に収めるため、あるいは、過去に顧客に納入した同一エンジンの値との整合を図るために改ざんを行った」と説明しています。

 新潟内燃機工場において燃料消費率計測時の数値(実測値)と異なる数値をNOx計算時に使用し、この数値を認証機関に提出しており、NOx 放出量規制の対象となる国内向け舶用エンジン1932 台のうち242台において改ざんを確認しました。

 このうち、国内向けに出荷された舶用エンジンについては、NOx放出量に係る基準値を逸脱するものは確認されませんでしたが、海外向けに出荷された舶用エンジン4台について、NOx放出量に係る基準値を逸脱しているものが確認されました。

 なお、国内向けに出荷された舶用エンジンのうち、226台が調査未了とのことです。

 改ざんした理由について「新潟内燃機工場において、NOx 放出量確認試験での燃料消費率が顧客に伝わった場合の懸念から、燃料消費率の改ざんを行った」と説明しています。

 国土交通省は、残りの調査及び報告の速やかな実施と、特別調査委員会の調査結果も踏まえた抜本的かつ具体的な再発防止策の策定を指示しました。

 また、今後新たに製作されるIHI原動機社製のエンジンについて、再発防止策の妥当性確認の一環として、当分の間、NOx放出量確認試験を国の立ち会いの下で厳格に行った上で、証書の交付を再開します。