正露丸のキョクトウに富山県が業務停止命令「虚偽の試験記録を作成」
杉本崇
(最終更新:)
正露丸などで知られる医薬品製造業「キョクトウ」(富山市)が、製造した医薬品の試験結果について承認規格に不適合だったのに、適合したとする虚偽の試験記録を作成して出荷していたことなどがわかりました。富山県は薬機法にもとづき、医薬品製造について2024年4月30日から5月22日まで23日間、第2種医薬品製造販売業については5月21日までの22日間の業務停止命令を出しました。富山県によると、製品はすでに自主回収されており、健康被害の報告はないといいます。
キョクトウとは
キョクトウの公式サイトによると、1950年10月に富山市で設立された医薬品製造会社で、国内で数社ある正露丸の製造販売メーカーの一つです。現在はFUKUMIグループのグループ会社の一つです。
薬機法に違反したと指摘された内容
富山県の公式サイトによると、富山県はキョクトウに対し、薬機法にもとづき、4月30日から5月22日までの23日間の医薬品製造業の業務停止と、4月30日から5月21日までの22日間の第2種医薬品製造販売業の業務停止を命じました。
さらに、違反事項の原因の究明・改善に向けて、医薬品製造業、第2種医薬品製造販売業の業務改善も命じました。
違反が指摘されたのは以下の行為についてです。
医薬品製造業
製造した医薬品の試験結果が承認規格に不適合となったにも関わらず、適合したとする虚偽の試験記録を作成して出荷した
原料受入試験の一部を実施せず、虚偽の試験記録を作成した
県の調査員に虚偽の記載のある文書を提示した
製造業者の業務の適正を確保するために必要な体制の整備等の措置を十分に講じなかった
製造・品質関連業務を適切に実施するための人員を十分に配置しなかった
医薬品製造管理者が従業者を適切に監督せず、必要な注意を怠った
第二種医薬品製造販売業
試験結果が承認規格に適合しない医薬品を製造販売した
医薬品の品質管理に関する業務を適正に遂行するために必要な体制の整備等の措置を十分に講じなかった
品質管理業務を適正かつ円滑に遂行するための人員を十分に配置しなかった
法令に従い適正に製造販売が行われるよう必要な配慮をすることを怠り、医薬品の品質管理を適正に行わなかった
総括製造販売責任者が、品質管理業務を適切に行うことを怠った
業務停止命令に至った経緯
キョクトウは公式サイトで、薬機法違反に至った経緯を報告しています。
2022年7月及び8月の富山県による弊社工場へのGMP(製造管理および品質管理の基準)調査を契機として、自主的な社内調査を実施しました。その結果、試験結果の改ざん、原料受入試験の未実施、製造記録の虚偽記録等が判明いたしました。
これまでの調査において、製造の継続及び出荷を優先し、法令及び手順書上の手続を経ることを避けようとする企業風土が、上記の違反行為を生じた一因となりました。
また、慢性的な人手不足により、GMP遵守に対する意識が形骸化した企業風土となり、改善がされなかったのは、経営者による薬機法に対する法令遵守への対応と人的補充が欠けていたものでした。
社内調査におけるヒアリングを通じて、経営者及び従業員、特に製造部門や品質管理部門の作業員に共通する問題意識として明らかになったのは、作業人員数に比して生産数が過多であり、生産計画の逼迫が常態化しているために、業務に余裕がないということでした。
作業員は、生産計画及び納期に追われ、目先の作業をこなすことに精一杯の状況でした。
行政処分に関するお詫びとお知らせ(キョクトウ公式サイトから)
製品は自主回収済み 回収対象品の製造番号一覧
富山県によると、品質に影響があると考えられる一般用医薬品は、キョクトウによる自主回収を2022年9月に実施したといいます。また、重篤な健康被害が発生する恐れはなく、これまでに健康被害の報告もないと説明しています。
回収対象品の製造番号の一覧はキョクトウの公式サイトに掲載されています。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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