社外取締役とは?中小企業における役割やメリット・デメリットと選び方
社外取締役という言葉を耳にしたことがある経営者も多いと思います。最近、中小企業でも、社外取締役が果たす役割や設置の効果が注目されています。そこで、中小企業の経営支援の専門家である中小企業診断士が、中小企業において社外取締役を設置する意義、効果やメリット、さらにデメリット、選び方について説明します。
社外取締役という言葉を耳にしたことがある経営者も多いと思います。最近、中小企業でも、社外取締役が果たす役割や設置の効果が注目されています。そこで、中小企業の経営支援の専門家である中小企業診断士が、中小企業において社外取締役を設置する意義、効果やメリット、さらにデメリット、選び方について説明します。
目次
社外取締役は、社内で利害関係がない外部の人材を取締役に加えることで、客観的な立場から経営状況の健全性を監視・監督する制度です。現在では、株主や取引先など企業に関わるすべてのステークホルダーの利益増大に向けて、透明で公正な意思決定を推進するために有効な制度と考えられています。
社内取締役は、会社内で昇進した社員が就任する場合の役職です。もともとは社員であるため会社とは利害関係があり、経営陣とも緊密に関係しています。また、社内業務の執行や経営判断に関与しているため、社内取締役が代表権を持つことが一般的です。利害関係がない社外取締役とは立場が異なります。
2021年3月1日に施行された改正会社法により、上場企業に社外取締役の設置が義務付けられました。社外取締役の選任義務に違反した場合には、制裁金が科されます(参照:会社法の一部を改正する法律について|法務省)。
一方で、中小企業には社外取締役を設置する義務はなく、設置するかどうかは各企業の自主的な判断によります。とはいえ、経営陣にはない幅広い知見や経験を吸収したり、持続的な成長に向けて経営の質を高めていくことを考えると、社外取締役の設置は有力な選択肢です。
企業の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に向けてコーポレートガバナンス改革が重要視されているなかで、政府も社外取締役の設置を後押ししています。
2024年1月に金融庁と経済産業省が中心となって、新任や経験年数が浅い社外取締役に対する基本的なガイダンス資料として「社外取締役のことはじめ」を作成し公表しています。
参照:社外取締役の質の担保・向上に向けた取組の一環として、「社外取締役のことはじめ」を作成しました|経済産業省
社外取締役には、「経営の監督」「経営に対する助言」「リスク管理の適正化」「ステークホルダーとの橋渡し」の役割が期待されています。
社外取締役の役割 | |
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経営の管理 | 客観的な立場から、取締役会において重要な意思決定が適正に行われているか、あるいは取引における利益相反がないかを監督します |
経営に対する助言 | 自らの豊富な経験や専門知識に基づき、会社の持続的成長や企業価値の向上などについて建設的な助言を行います |
リスク管理の適正化 | コンプライアンスの観点から、経営におけるリスクの把握と適切な対応について指摘を行います |
ステークホルダーとの橋渡し | 株主や従業員、取引先などの利害関係者の意見を取締役会に適切に反映させます |
実際、社外取締役を設置している中小企業はまだ少数派というのが実情です。しかしながら、オーナー経営の割合が高い中小企業においてこそ社外取締役を設置するメリットを生かしてくことが望まれます。
以下でそのメリットを説明します。
中小企業が社外取締役を設置することで、以下のようなメリットを得られます。
社外取締役を設置するメリット | |
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経営の透明性と客観性の向上 | 社外の第三者が関与することで客観的な視点が加わり、経営の透明性が高まります |
外部の専門知識やネットワークの活用 | 社外取締役が持つ独自の専門知識や外部のネットワークを活用できる余地が広がります |
コーポレートガバナンスの強化 | オーナー社長に対するけん制機能が発揮され、健全なコーポレートガバナンスを実現することができます |
取引金融機関の信頼向上 | 経営の透明性や客観性が向上することにより、取引金融機関からの信頼度が向上し、円滑な資金調達につながります |
事業継続や後継者育成への貢献 | 豊富な経験や専門知識を通して、事業継続や後継者育成への貢献が期待できます |
社外取締役の設置にはメリットがありますが、以下のデメリットについても考慮する必要があります。
社外取締役を設置するデメリット | |
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報酬負担の増加 | 社外取締役に対する報酬はコスト負担となります |
適任者の選定の難しさ | 社外取締役にふさわしい経験や能力を持つ人材は限られており、実際に適任者を探索して選定するのは容易ではありません |
社外取締役の関与が過剰になるリスク | 社外取締役の意見を重視しすぎると、迅速な経営判断や意思決定が妨げられるリスクがあります |
社外取締役を選ぶ前に押さえておきたい、登用要件や報酬、任期などを解説します。
社外取締役は誰でも登用できるわけではなく、一定の条件を満たしていなければなりません。例えば、経営の独立性を担保するため、就任前の10年間にその会社(または子会社)で取締役、会計参与、監査役ではなかったこと、親会社などの取締役、従業員でなかったことなどが条件に挙げられます。
親会社などに該当するかどうかは、株式の保有比率はもちろんですが、会社の財務や事業の方針に対する実質的な決定権があるかどうかによって判断されます。
そのほかにも、独立性という観点から、兄弟会社の業務執行取締役・従業員でないこと、取締役・重要な従業員・会社の経営を支配している者の配偶者および二親等内の親族でないことが条件とされています。
上場企業における社外取締役の場合、報酬のだいたいの「相場」があり、一説では社内取締役の役員報酬の3〜4割程度が目安とされています。中小企業における社外取締役の報酬設定でも参考になるでしょう。
とはいえ、社外取締役に就任する人材の経歴や経験、期待する役割に応じて適切な報酬を検討することが必要です。さらに、会社の支払い能力とのバランスにも配慮が必要です。
社外取締役の任期は、社内取締役と同様に会社の定款によって定められますが、一般的に1年または2年とされる場合が多い傾向にあります。もし再任を重ねる場合には、長期にわたり社内取締役を務めることになります。
筆者が知る限りでは、社内取締役の最長任期や定年が定められているケースはほとんどありません。しかし、本来求められている客観性や独立性を確保するという観点では、在任期間が過度に長くなることは避けるべきです。
一方で、社外取締役にふさわしい人材は決して多いとはいえません。他社と掛け持ちするケースがありますが、社外取締役としての責任と役割を適切に果たすことができれば問題ないと考えられます。
中小企業が社外取締役を選任する際に求めたいスキル・資質はどのようなものでしょうか。適切な社外取締役を選ぶための視点として、以下を参考にしてみましょう。
企業経営の経験がある人材を求める場面は多いものです。経営の実務を通して蓄積してきた経験やノウハウに対する期待度は大きいでしょう。
健全なコーポレートガバナンスを実現するためには、法務や会計・財務などに関わる専門知識が必要です。弁護士、公認会計士などの専門士業、あるいは大学教授などの学識経験者が招へいできればベターです。
経営の透明性や客観性を高めるためには、社内取締役のプロフィールを考慮しながら社外取締役に多様な人材を求めていくことが重要です。近年では、特に女性の社外取締役を積極的に迎え入れる傾向が強くなっています。
社外取締役社を設置する効果やメリットについて説明してきました。実際に社外取締役が持つ経験や知識を効果的に経営に活かしていくためには、経営陣が社外取締役とのコミュニケーションを円滑に行うための仕組みを整えることが必要です。
取締役会の枠に留まらず、必要に応じて現場の視察や実務担当者との意見交換などを交えながら、相互の理解を深めていくことが望まれます。
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