目次

  1. 特定技能とは
  2. 自動車運送業の特定技能
  3. 全日本トラック協会が手引き公表
  4. 所属機関(受入れ事業者)に関する要件
    1. 事前ガイダンス
    2. 出入国する際の送迎
    3. 住居確保・生活に必要な契約支援
    4. 生活オリエンテーション
    5. 公的手続等への同行
    6. 日本語学習の機会の提供
    7. 相談・苦情への対応
    8. 日本人との交流促進
    9. 転職支援(人員整理等の場合)
    10. 定期的な面談・行政機関への通報
  5. 雇用形態・契約内容に関する要件
  6. 入社後に必要な手続き
    1. 日本人・特定技能外国人共通
    2. 特定技能外国人特有
  7. 採用・支援コストの目安

 出入国在留管理庁の特定技能ガイドブック(PDF方式)によると、人材確保が難しい産業分野で、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みのことを指します。

 「特定技能」には、2種類の在留資格があります。

「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です

 「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

 2024年3月29日の政府の閣議決定で、自動車運送業等の4分野が特定技能制度に追加されることになりました。今回、特定技能に追加される自動車運送業は、特定技能1号です。

 政府が公表した自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(PDF方式)によると、「2024 年問題」などの影響でドライバーの確保が課題となっています。

 生産性向上や国内人材の確保を考慮してもなお人手不足のため、自動車運送業分野における特定技能外国人の受け入れ見込み数を、2024年度からの5年間で最大で計2万4500人と設定しました。

 特定技能外国人を受け入れるためには、一定の技能水準と日本語能力を持つことが求められます。具体的には、自動車運送業分野特定技能1号評価試験に合格し、トラック区分での就業には国際運転免許等では認められず、第一種運転免許が必要なため、いわゆる「外免切替」を行う必要があります。

 また、特定技能外国人の雇用形態は直接雇用に限ります。

 こうしたなか、全日本トラック協会は5月31日、「自動車運送業分野 トラック区分における特定技能外国人受け入れの手引き」(PDF方式)を公表しました。

 まず、所属機関(受入れ事業者)に関する要件として、必要条件は以下の3つです。

  1. 労働・社会保険・租税に関する法令を遵守すること
  2. 特定技能雇用契約締結の日前1年以内および締結後に同種の業務に従事する労働者の非自発的離職を発生させていないこと
  3. 特定技能雇用契約締結の日前1年以内および締結後に企業の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないこと

 つぎに、技能実習計画の取り消しを受けて5年が経過していないなど欠格事由にも注意が必要です。

 さらに、1号特定技能外国人を雇用する際には、職業生活や日常生活、社会生活上の支援計画を作成・実施する義務があります。支援は、必ず行わなければならない「義務的支援」と行うことが望ましい「任意的支援」があります。

 義務的支援10項目は以下の通りです。

雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等について、対面・テレビ電話等で説明

入国時に空港等と事業所又は住居への送迎
帰国時に空港の保安検査場までの送迎・同行

連帯保証人になる・社宅を提供する等
銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助

円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等の説明

必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続の同行、書類作成の補助

日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等

職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応、内容に応じた必要な助言、指導等

自治会等の地域住民との交流の場、地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助等

受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供

支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3ヵ月に1回以上)に面談し、労働基準法違反等があれば通報

 業務内容は、トラックの運転およびそれに付随する業務であることです。雇用形態は直接雇用に限り、所定労働時間が「フルタイム」であることが必要です。原則、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上、かつ労働時間が週30時間以上で、仕事の掛け持ち、アルバイト等はできません。

 報酬は、同等の業務に従事する日本人労働者と同等以上である必要があります。ただし、フィリピン国籍者は別途ルールがあるため注意が必要です。

 外国人が一時帰国を希望した場合は、業務上、取得させないことがやむを得ない場合を除き、必要な有給休暇を取得させる必要があります。

 また、入社後に必要な手続きは以下のものがあります。

 日本人・特定技能外国人共通の項目は、法令・就業規則・雇用条件などに沿って日本人従業員と同様に対応してください。

社会保険加入/脱退→年金事務所に届出
労働保険加入/脱退→ハローワークに届出
健康診断(雇い入れ時・定期)→費用を事業主が負担し受診させる
安全衛生教育
勤怠管理・給与の支払い・給与明細の発行
年末調整・源泉徴収票の発行
特定技能外国人特有など

 特定技能外国人特有のものは、登録支援機関等に相談しつつ対応してください。

入管への定期届出(四半期に1回ごと)→入管に届出
外国人雇用状況の届出書(雇用保険非加入の場合のみ)→ハローワークに届出
義務的支援→登録支援機関に業務委託が可能
在留カード情報・在留期限の管理(期限を1日でも過ぎたら不法就労)
在留資格(ビザ)更新(特定技能1号は基本的に1年ごと)→入管に申請

 手引きは、採用・支援コストの目安も示しています。採用ルートや求める人材のレベルにより変動しますのであくまで目安と考えてください。外部に委託する項目は、額面だけでなくサービスに見合った金額であるかの確認が必要です。

人材紹介費:1人あたり~60万円程度
支援委託費:月額~5万円程度
ビザ取得費用:印紙代4000円、委託費~20万円程度
寮の手配費:エリア等による
渡航/国内移動費:~15万円程度