目次

  1. 空き家の利活用 ビジネスになりにくい課題も
  2. 空き家の仲介手数料の上限引き上げ、売買も賃貸も
    1. 売買取引の報酬額
    2. 賃貸借取引の報酬額
  3. 宅建業者が報酬を受ける際の留意点

 住宅・土地統計調査(総務省)によれば、二次的利用、賃貸・売却用の住宅を除いた長期にわたって不在の住宅などの「居住目的のない空き家」が349万戸と、この20年で約1.9倍に増えました。

空き家対策の背景
空き家対策の背景(国交省の資料から https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749896.pdf)

 国交省の資料によると、空き家が増える一方で、地方移住のニーズが高まっており、空き家・空き室の有効活用のために物件の仲介だけでなく、様々な形で所有者をサポートするノウハウを持つ宅建業者の関与が欠かせないといいます。

 一方で、斉藤国交相は記者会見で「活用に適した空き家が市場に出てこない、空き家はビジネスになりにくい、などの課題があった」と指摘しています。

 こうしたなか、国交省は2024年6月、不動産業者による空き家ビジネス拡大の施策を盛り込んだ「不動産業による空き家対策推進プログラム」を公表しました。流通に適した空き家等の掘り起こしと、空き家流通のビジネス化支援を目的としています。

 その一環で7月1日から、空き家の仲介手数料の上限を引き上げる予定です。元々は、宅建業法にもとづく大臣告知で、宅建業者が請求できる報酬額に上限が設けられています。今回は、売買取引と賃貸借取引でそれぞれ報酬額の上限を引き上げる特例が設けられます。

 空き家等に係る媒介報酬規制の見直し
空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(国交省の資料から https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749896.pdf)

 売買取引の報酬額は原則として、依頼者の一方から受けることのできる報酬額は、物件価格に応じて一定の料率を乗じて得た金額を合計した金額以内と定められています。

 しかし、特例では、物件価格が800万円以下の宅地建物(使用の状態は不問)について、仲介にかかる費用を考慮して33万円まで引き上げます。

 賃貸借取引の報酬額は原則、依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額を1ヵ月分の借賃の1.1倍以内と定めています。

 しかし、特例では、少なくとも1年を超えるような期間にわたり居住者が不在となっている、または相続等により利用されなくなり、今後も所有者等による利用が見込まれない戸建の空き家や分譲マンションの空き室については、仲介にかかる費用を考慮して、貸主である依頼者から、原則による上限を超え1ヵ月分の2.2倍を上限とします。

 報酬について、宅建業者などが仲介契約との区分を明確にし、仲介契約とは別に、書面等により締結した契約で報酬を受ける場合、仲介報酬とは別に報酬を受領できます。

 報酬の上限引き上げについて、国交省は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(通達)のなかで、「契約の締結に際し、あらかじめ、特例で定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることに、特に留意」が必要だとしています。