目次

  1. 法改正の背景 増加する使用目的のない空家
  2. 改正空家対策推進特措法とは 3つのポイントを紹介
    1. 活用拡大
    2. 管理の確保
    3. 特定空家の除却等

 住宅・土地統計調査(総務省)によれば、二次的利用、賃貸・売却用の住宅を除いた長期にわたって不在の住宅などの「居住目的のない空き家」が349万戸と、この20年で約1.9倍に増えました。国土交通省は、2030年にさらに470万戸まで増えると推計しています。

改正空家対策推進特措法の背景と方向性(国交省の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621961.pdf)

 2014年に制定した空家対策推進特措法は、周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空家」の対策を進めてきました。特定空家などへの勧告・命令・行政代執行は増加傾向にありますが、特定空家になってからの対応には限界がありました。

 国交省の公式サイトによると、こうしたなか、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(改正空家対策推進特措法)が2023年6月14日に公布され、12月13日に施行されました。

 改正法は、所有者の責務強化として、現行の「適切な管理の努力義務」に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務を定めています。

 さらに、特定空家の除却だけでなく、周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用や適切な管理を総合的に強化することも定めています。3つのポイントを紹介します。

改正空家対策推進特措法の活用拡大(国交省の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621961.pdf)

 空家の活用を拡大するために、まず、空家活用の重点的実施として、市町村が、空き家の活用の必要な区域を「空家等活用促進区域」と定めて用途変更や建替えなどを促進します。

 具体的には、安全確保等を前提に接道に係る前面道路の幅員規制を合理化したり、指針に合った用途に用途変更等する場合の用途規制等を合理化したりします。市区町村長から所有者に対し、指針に合った活用を要請できます。

 つぎに、所有者不在の空家の処分として、所有者に代わって処分を行う財産管理人の選任を市区町村が裁判所に請求できるようになります。

 さいごに、支援法人制度として、市町村長が、空き家の活用や管理に取り組むNPO法人や社団法人を「空家等管理活用支援法人」に指定できるようになります。所有者の同意が得られれば、空家等管理活用支援法人市区町村から情報提供を受け所有者との相談対応をすることができます。

改正空家対策推進特措法の管理の確保(国交省の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621961.pdf)

 空家の増加が見込まれる中、周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空家」になる前の段階から、管理の確保を図るため、放置すれば特定空家となるおそれのある「管理不全空家」に対し、市区町村が指導できるようになります。

 指導してもなお状態が改善しない場合には「勧告」ができるようになり、勧告された空家は固定資産税の住宅用地特例(1/6~1/3に減額)が解除されます。

 このほか、所有者把握の円滑化に向けて、市区町村が電力会社などに所有者情報の提供を求めることができることも明確にしました。

改正空家対策推進特措法の特定空き家の除去等(国交省の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621961.pdf)

 改正前は、市町村長に特定空家の所有者から報告徴収を行う権限がなかったのですが、改正後は、市区町村長に特定空家の所有者に対する報告徴収権を付与し、特定空家への勧告・命令等をより円滑に行うことが可能となりました。

 また、緊急には命令等の手続を経ず代執行を可能となりました。代執行費用の徴収も、これまでは裁判所の確定判決が必要でしたが、略式代執行時や緊急代執行時においても、行政代執行法に定める国税滞納処分の例により、強制的な費用徴収を可能となりました。

 相続放棄、所有者不明・不在の空家についても、市町村が所有者に代わり財産を管理・処分できる「財産管理人」の選任を裁判所に請求し、修繕や処分を実施できるようにしました。