家業に入ると親への評価は二極化 家業後継者調査、117人が回答
家族を中心にファミリービジネスを営む家業後継者117人に、家業に入る前後で、親(代表・前代表)に対する見方や考え方が変わったかをアンケートしたところ「非常にポジティブ」「非常にネガティブ」とも増加する結果が出ました。後継ぎ経営者2人が企画した家業後継者調査プロジェクトです。「家業後継者についてもっと社会から目を向けてほしい」と始めた調査は今後に向けて、さらに協力者を募っています。
家族を中心にファミリービジネスを営む家業後継者117人に、家業に入る前後で、親(代表・前代表)に対する見方や考え方が変わったかをアンケートしたところ「非常にポジティブ」「非常にネガティブ」とも増加する結果が出ました。後継ぎ経営者2人が企画した家業後継者調査プロジェクトです。「家業後継者についてもっと社会から目を向けてほしい」と始めた調査は今後に向けて、さらに協力者を募っています。
家業後継者117人にアンケートした「家業後継者調査」の報告会が2024年8月22日、東京都品川区のインキュベーションオフィス「EZOHUB TOKYO」で開かれました。
プロジェクトの企画者は、平和酒造代表取締役社長の山本典正さんとみやじ豚代表取締役の宮治勇輔さんです(協力:家業イノベーション・ラボ、エヌエヌ生命)。
家業後継者調査を企画したのは、スタートアップの「起業」、M&Aの「買収」に比べ、家業の「承継」の社会的注目度は低く、後継者視点の研究も活発とは言えないなか、一般的にはあまり理解が得られていない後継者の苦悩や仕事へのモチベーション、また事業承継に対する困難などについて調査し、広く発信するためだといいます。
企画者の2人によると、今回のアンケートは、回答者の属性の偏りも想定されるため、今後に向けた予備的な「0次調査」との位置づけです。
とはいえ、今後さらに調査を進めていくうえでの示唆を得られる内容だったといいます。
今回のアンケートに協力した家業後継者117人は以下の通りです。
代表権のある役員55人
代表権のない役員42人
管理職9人
非管理職7人
その他4人
アンケート結果のうち、会場の反響が大きかった質問内容の回答について紹介します。
「家業に入ったことで、地域における役割は変わりましたか?」という質問に対し、「役割は増えた」「どちらかというと役割は増えた」との回答が全体の74%を占めました。
この結果に対し、実施者の宮治さんは「消防団や祭事での役割なのか、地域企業の経営者との関わりなのか、もっと深掘りしたいですね」と話し、山本さんは「家業を持つ若者が戻ってきて、人口減少に悩む地域社会に貢献している可能性があるとも考えられる貴重なデータなので、ここはさらに調べたいです」と話しました。
さらに家業に入る前後で家業への見方と親への見方がどう変化したかについても尋ねました。
すると、家業に入る前は「ポジティブ」「非常にポジティブ」が全体45%だったのに対し、家業に入った後は58%にまで増える傾向がみられました。
一方、親への評価については、家業に入る前は「非常にネガティブ」が5%、「非常にポジティブ」が11%だったのに対し、家業に入った後は「非常にネガティブ」が15%、「非常にポジティブ」が20%へとそれぞれ増加。親への評価が二極化する傾向がみられました。
会場に来ていた参加者との意見交換のなかでは「家業に入ったあとは単に親ではなく、経営者としても見るようになった結果ではないか」との意見がでました。
さらに踏み込んで「会社の代表者でもある親が、いかに大変な仕事をしていたのか理解できるようになって評価を上げた人もいれば、社内の課題が見えてきたのに、すぐには改善に取り掛かれない状況に苦渋しているのかもしれない」といった意見もありました。
家業に戻ってきたことを10点満点で総合的に評価してもらうと、回答者の46%が10点満点でした。
これに対して、宮治さんは「後継者は家業に戻ってくると、社内改革や新しい取り組みなどイノベーターとしての役割も担うので批判されやすい立場にもある。家業に戻ってきたどのタイミングで、どのように気持ちの変化が起こるのか、さらに調べていく余地がありそうです」と話しました。
調査を終えて、山本さんは「日本には歴史のある会社がたくさんあります。家業に対して、社会にもっと目を向けてもらうため、調査結果を公開し、いろんな方から協力を得られるようにしていきたいと考えています」と話しました。
今回の詳しい調査結果は、協力者のエヌエヌ生命は公表する予定だといいます。次回以降は、調査結果の生データを共有できるような方法も検討しています。
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