大手饅頭伊部屋と側島製罐が受賞 ツギノジダイ・リーダーズ アワード
広部憲太郎
(最終更新:)
ツギノジダイは配信記事の中から、読者の皆様の支持を集めた企業を表彰する「ツギノジダイ・リーダーズ アワード」を始めました。第1回は大手饅頭伊部屋(岡山市)がグランプリ、側島製罐(愛知県大治町)が準グランプリに輝きました。表彰式は2025年1月24日、「ザ ストリングス 表参道」で開催する「中小企業リーダーズサミット」で行います。当日は受賞を記念し、大手饅頭伊部屋6代目の大岸聡武さん、側島製罐6代目の石川貴也さんに公開インタビューします。中小企業の経営層の方は、表彰式やインタビューを直接会場でご覧いただけます。
読者に支持された企業を表彰
ツギノジダイは2020年のサイト開設以来、約千人の中小企業経営者にインタビューを重ねています。読者の皆様の関心を集めた企業を表彰することで、中小企業経営をさらに後押しするため、アワードを初開催します。
アワードはアクセス数などを基準に、読者(reader)の支持を集めた経営者(leader)の記事を編集部が選定する方式です。今回は、2024年に配信したインタビュー記事が対象となります。
審査の結果、グランプリに大手饅頭伊部屋、準グランプリに側島製罐を選びました。ともに家業の老舗企業を、気鋭の6代目がリードしているという共通点があります。
「大手まんぢゅう」の特化戦略
グランプリに輝いた大手饅頭伊部屋は1837年に創業し、たっぷりのあんこを薄皮で包む岡山名菓「大手まんぢゅう」を製造しています。大手まんぢゅうは岡山土産として定着し、「日本三大まんじゅう」の一つと称されています。
代々続く家業で常務を務める大岸さんは、売り上げの9割を占める「大手まんぢゅう」との接点を広めるための新規事業を、次々と打ち立てています。
大手まんぢゅうに使うあんこと甘酒を練り込んだソフトクリームを開発し、自社工場の看板商品にしたほか、2020年には岡山県倉敷市の名所・美観地区に「大手まんぢゅうカフェ」をオープンしました。
廃棄される小豆の皮で染色したエコバッグや、後継ぎ仲間とコラボしたクラフトビールの開発も推し進めています。
大手まんぢゅうはできたてを消費者に届けるのを信条としており、生産量や販路の拡大にはおのずと限界があります。大岸さんの新規事業は奇抜に見えて、大手まんぢゅうとの「出会い」を提供する特化戦略なのです。
中小企業リーダーズサミットでは、大岸さんに老舗饅頭店を背負う6代目としての経営戦略について、直接インタビューします。
「余白」を作る側島製罐のDX
準グランプリの側島製罐は、1906年に創業した缶メーカーになります。乾物やお菓子などを製造する缶を長年製造していますが、2020年前は売り上げが低迷していました。
大手金融機関から家業に転じた6代目の石川さんは、「子供の想い出を大事にしまう」というコンセプトで「Sotto」という缶を生み出すなどの改革を進め、2023年に代表取締役に就任しました。
石川さんが特に力を入れているのが組織の底上げです。最低限の決まり事以外は社員それぞれが仕事に裁量権を持ち、給与額まで自分で決める「自己申告型報酬制度」をはじめました。
会計・勤怠・給与・経費・販売管理に関するシステムやAmazonプライムといったサブスクリプションに、月27万円を出費しているのも特徴的です。
DXはコストパフォーマンスの向上が目的ではありません。「一緒に働いているみんなの余白を作り、新しいことに挑戦し、仕事の質を高めるためです」と石川さんは言います。実際、従業員から残業時間の削減につながる資料が提案されるなど、意識変革が進みつつあります。
中小企業リーダーズサミットの会場では、石川さんが進めたDXや組織改善の具体例を掘り下げる予定です。
「野人」岡野雅行さんの講演も
中小企業リーダーズサミットは2025年1月22日~24日の3日間開催します。表彰式と大岸さん、石川さんへの公開インタビューは、最終日の24日午後3時50分から、「ザ ストリングス 表参道」(東京都港区北青山3丁目6−8)で行います。
会場でのリアル参加は中小企業の社長・役員などの経営層限定(事前審査制)で、無料となります。
24日は「野人」の愛称で親しまれるJリーグ・ガイナーレ鳥取前代表取締役の岡野雅行さん、生成AIを自作した旭鉄工社長の木村哲也さんの講演も企画しました。表彰式や講演の模様は、オンラインの無料視聴も可能です。こちらは経営層以外も視聴できます。
なお、22日、23日はすべてオンライン開催となり、無料で視聴できます。日本バレーボール協会会長・川合俊一さん、すかいらーく創業者・横川竟さんが基調講演で登壇します。こちらも併せてご参加ください。
支持を集めた中小企業は他にも
最後に、「ツギノジダイ・リーダーズ アワード」の受賞企業以外でも、2024年に幅広く読者の支持を集めた企業を紹介します。
東京都立川市の伊藤養鶏場は、ブランド鶏の「東京うこっけい」など約5700羽を飼育しています。3代目の伊藤彰さんは結婚を機に妻の家業に入り、鶏舎の衛生管理やエサの配合などを改善。卵や肉の質を高め、生産だけでなく自ら営業に励んで販路を開拓しました。経営方針を巡って義父と大げんかした末に3代目となり、都内の有名料理店などとそぼろ肉やプリンなどの加工商品も開発。ブランド力を高めて、売り上げを5倍に伸ばしました。
静岡県沼津市のサツマ電機は、産業用ブレーキの専業メーカーです。4代目社長の梶川久美子さんは、入社した2013年当時、職場で会社や同僚への不平不満を言う社員が多いことに驚きました。すぐに全社員と面談してそれぞれの思いを聞くと、社内でのコミュニケーションの機会の無さが、不満の遠因だと気づきます。その後社員の要望に応えて働きやすい職場環境を整備し、対話の場づくりに注力。納得性のあるルールや仕組みを構築し、持続可能な会社経営を目指しています。
映画『ゴジラ-1.0』で切り札として活躍した局地戦闘機「震電」。実際には、太平洋戦争末期、アメリカ軍のB29爆撃機に対抗するために開発され、実戦に臨むことなく終戦を迎えたことから「幻の戦闘機」とも呼ばれています。開発を担った九州飛行機は現在、「渡辺鉄工」として産業機械を手がけており、7代目として承継予定の渡辺雄輝さんは「1886年創業の老舗でありながらもベンチャー精神は今も引き継がれています」と話します。