目次

  1. 建設業法・入契法が改正 担い手確保へ順次施行
  2. 人材確保
    1. 働き方改革等による建設業の魅力向上
    2. 建設事業主等に対する助成金による支援【一部新規】69億円
    3. 「つなぐ化」事業の実施【継続】2900万円
    4. ハローワークにおける人材不足分野のマッチング支援【拡充】50億円
    5. 高校生に対する地元における職業の理解の促進支援【継続】1900万円
  3. 人材育成
    1. 暮らし維持のための安定的な住宅生産・維持管理事業【新規】300億円の内数
    2. 中小建設事業主等への支援【継続】4.9億円
    3. 建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練)の実施【継続】1.3億円
    4. ものづくりマイスター制度による若年技能者への実技指導【継続】24億円
  4. 魅力ある職場づくりの推進
    1. 働き方改革推進支援助成金による支援【継続】70億円
    2. 働き方改革推進支援センターによる支援【継続】30億円
    3. 雇用管理責任者等に対する研修の実施【継続】8200万円

 厚生労働省などによると、建設業の技能者のうち、60歳以上が約26%に上り、10年後にはその大半が引退することが見込まれる一方、29歳以下は全体の約12%となっており、若手人材の確保と育成が急務となっています。

 こうしたなか、建設業の担い手確保を目的とした建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)など第三次・担い手3法が順次施行されています。

建設キャリアアップシステム(CCUS)
建設キャリアアップシステム(CCUS)

 こうした動きに沿って、国交省と厚労省は、建設技能者の資格や現場での就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積し、技能・経験に応じた適切な処遇につなげようとする「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用促進など、建設業の人材の確保・育成に向けた取組を進めるため、関連する支援策を2025年度予算の概算要求に盛り込みました。

 ただし、以下の支援策が実施されるためには、内閣の予算案に盛り込まれ、国会でその予算案が成立する必要があるため、概算要求に盛り込まれた時点では、確実に2025年度に実行されることは確約されていません。

 概算要求に盛り込まれた支援策は、大きく分けて人材確保、人材育成、魅力ある職場づくりの推進の3つがあります。

 人材確保の支援策は、まず国交省の概算要求の支援策の一覧から見ていきます。

 国交省は概算要求のなかで、働き方改革等による建設業の魅力向上事業として、以下の政策に3億円を計上しています。

適正な工期設定等による働き方改革の推進【継続】

 持続可能な建設業の実現に向けて、働き方改革の更なる推進を図るため、工期設定に関する実態調査や工期の適正化のための周知・啓発に係る事業を実施します。

建設技術者の働き方改革の推進【継続】

 適正な施工確保のため建設現場に配置が求められる建設技術者に関して、働き方改革・担い手確保のため、技術者配置要件等の制度合理化及び入職促進等に資する調査を実施します。

建設業の生産性向上の促進【継続】

 建設業の生産性向上の促進に向け、効果的な取組事例に関する調査検討や建設現場でのICT活用の普及、業界構造の適正化に向けた実態調査を実施します。

地方の入札契約改善推進事業【拡充】

 2024年6月に公共工事の発注体制の強化についての入契法・品確法の改正を盛り込んだ「公共工事の品質確保の促進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立。地方公共団体の発注体制の強化・入札契約適正化の一層の加速化を実施します。

建設業における技能者の適正な雇用関係の促進【継続】

 建設業の担い手確保に向け、建設キャリアアップシステム(CCUS)の加入促進や、社会保険や技能向上の機会等が十分に確保されない一人親方の技能者の処遇改善に向けた施策をします。

建設職人の安全・健康の確保の推進【継続】

 建設職人基本計画にもとづき、建設業における労働災害の撲滅に向けて、安全衛生経費が下請事業者に適切に支払われる環境を整備するため、「安全衛生対策項目の確認表」「標準見積書」の使用実態調査及び安全衛生経費の重要性・必要性に関する広報をします。

建設産業の担い手確保に向けた女性・若者の入職・定着の促進【継続】

 建設産業における将来の担い手確保のため、2024年度に建設業界における女性のさらなる活躍を目指す新行動計画をつくっているとして、2025年度には新行動計画にもとづくコンテンツ作成、技能者を雇用する企業経営者への啓発などを実施予定だといいます。

 つぎに、厚生労働省の人材確保に関する概算要求について紹介します。

 雇用管理改善や人材育成に取り組む中小建設事業主等に経費や賃金の一部を助成する制度があり、目的別に人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金及びトライアル雇用助成金があります。

 人材確保等支援助成金は、建設キャリアアップシステム等普及促進コースを廃止し、建設キャリアアップシステム等活用促進コース(仮称)を創設。このコースの雇用管理改善促進事業で、技能者の能力・経験に応じた適切な処遇を目的としてCCUSを活用した雇用管理改善の取組を支援します。

 登録手数料に係る助成は普及促進事業として2025年度末まで継続します。人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)について、建設キャリアアップカード登録者については賃金助成額を1.1倍にする制度は2025年度末まで延長します。

 若年者の建設業に対する理解や定着促進を図るため、高等学校(工業科、普通科)や高等専門学校の先生・生徒と建設業界がつながる機会として、出前授業や現場見学会等を開きます。

 医療・福祉、建設、警備、運輸などへのマッチング支援を強化するため、ハローワークに「人材確保対策コーナー」を設置し、関係機関等と連携した人材確保を支援します。

 「人材確保対策コーナー」は、求人者への求人充足に向けた助言・指導、求職者に対する担当者制による職業相談・職業紹介、関係機関、業界団体等との連携によるセミナー、事業所見学会、就職面接会等を開催する予定です。

 「人材確保対策コーナー」を中心に、ハローワーク利用者に対してCCUS制度を周知するとともに、建設業の就職を希望する求職者に対してCCUS登録済み建設事業主の求人情報を提供し、応募を勧奨します。

 建設等も含めた多様な業種に関しての職業理解を進めるため、業界団体や地元企業による高校内企業説明会等を実施します。

 人材育成の概算要求の一覧です。

 国交省は、概算要求のなかで、災害へのレジリエンスの向上を目的とした、地域の住宅生産事業者等で構成されるグループによる、地域の特色ある質の高い住宅の整備による技能維持・継承、地域グループによる担い手の確保・育成等及び防災・減災の備えに資するモデル的な取り組みに対する支援を盛り込みました。

 一方、厚労省は、建設労働者育成支援事業として、離転職者、新卒者、学卒未就職者等を対象とした、訓練カリキュラムの策定、訓練生募集、職業訓練の実施、就職支援をパッケージで業界団体が行う事業を継続します。

 建設機械等の運転技能だけでなく、パソコンスキル講習等と組み合わせたハロートレーニングを継続予定です。また、建設分野の職業訓練受講者に対するリーフレットを活用したCCUS制度の周知もします。

 ものづくりマイスターを中小企業等に派遣し、若年技能者への実技指導をするといいます。

 魅力ある職場づくりの推進は、厚労省からの概算要求の項目が多くなっています。

 生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業・小規模事業者や、中小企業から構成され、傘下企業を支援する事業主団体に助成します。

 建設業等の2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されている業種については、他の業種と比べ労働時間が長い実態があることも踏まえ、専用のコースを用意し、引き続き助成します。

 47都道府県に「働き方改革推進支援センター」を設置し、労務管理等の専門家による働き方改革全般に関する窓口相談や、企業訪問やオンラインによるコンサルティングの実施、企業の取組事例や労働関係助成金の活用方法等に関するセミナー等を実施するほか、働き方改革全般に係る周知啓発及び総合的な情報発信などを支援します。

 雇用管理に関する基礎的な知識を習得する「基礎講習」に加え、若年者の職場定着を高めるため、熟練労働者と若年労働者が円滑なコミュニケーションを取りながら働くことのできる環境づくりの手法等を学ぶ「コミュニケーションスキル等向上コース」を建設業の雇用管理責任者等に対して実施します。