目次

  1. 所信表明演説とは
  2. 日本を守る(経済・財政)
  3. 国民を守る(物価に負けない賃上げ)
  4. 地方を守る(地方創生)
  5. 若者・女性の機会を守る(女性活躍と女性参画)
  6. 締めくくりに「納得と共感の政治」

 所信表明演説とは、首相が臨時国会や特別国会で政権の運営方針や重点課題などを説明するものです。これに対し、毎年1月に開催される通常国会では1年の政策方針などを「施政方針演説」として訴えます。

 4日の石破首相の所信表明は以下の5本の柱を中心に説明しました。

  1. ルールを守る
  2. 日本を守る
  3. 国民を守る
  4. 地方を守る
  5. 若者・女性の機会を守る

 首相官邸の公式サイトに公開された所信表明のなかから中小企業に影響する政策について紹介します。

 2本目の「日本を守る」分野で、石破首相は「国全体の経済成長のみならず、国民一人あたりのGDPの増加と、満足度、幸福度の向上を優先する経済の実現を目標とします」と訴えました。目標に向けて、官民で総合的な「幸福度・満足度」の指標を作って共有するといいます。

 さらに「デフレ脱却」を最優先に実現するため、「経済あっての財政」との考え方に立った経済・財政運営と、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するとし、具体的には、イノベーション促進による高付加価値創出や生産性の向上、意欲ある高齢者が活躍できる社会を実現し、日本のGDPの半分以上を占める個人消費を回復させ、消費と投資を最大化する成長型経済を掲げました。

 コストカット型経済から高付加価値創出型経済へ移行しながら、持続可能なエネルギー政策を確立し、イノベーションとスタートアップ支援を強化するとしています。また、経済安全保障の観点から、半導体等のサプライチェーンの国内回帰を含む強靱化や技術流出対策を進める予定です。

 3本目の「国民を守る」では、「賃上げと人手不足緩和の好循環に向けて、一人ひとりの生産性を上げ、付加価値を上げ、所得を上げ、物価上昇を上回る賃金の増加を実現してまいります。適切な価格転嫁と生産性向上支援により最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けます」と、最低賃金1500円という目標を引き継ぐことを宣言しました。

 目標に向けて、自由に働き方を選択しても不公平にならない職場づくりを目指した個人のリ・スキリングなど人への投資を強化し、事業者のデジタル環境整備も含め、将来の経済のパイを拡大する施策を集中的に強化するとしています。

 具体的には、高付加価値のモノとサービスを、グローバル市場において、適正な価格で売ることのできる経済を目指し、輸出企業の競争力を強化し、中小企業を中心とする高付加価値化、労働分配率の向上、官民挙げての思い切った投資を実現すると宣言しました。

 その一方で、目の前の物価高への支援として以下の政策を挙げました。

  • 物価高の影響を特に受ける低所得者世帯への支援
  • 地域の実情に応じたきめ細かい対応
  • エネルギーコスト上昇に強い社会の実現など「物価高の克服」
  • 新たな地方創生施策の展開
  • 中堅・中小企業の賃上げ環境整備
  • 成長力に資する国内投資促進

 4本目の「地方を守る」で、初代地方創生担当大臣に就いた経験を持つ石破首相は「地方こそ成長の主役です。地方創生をめぐる、これまでの成果と反省を生かし、地方創生2.0として再起動させます」と、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指すと掲げました。

 具体的には、岸田前首相のデジタル田園都市国家構想実現会議を発展させ、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、今後10年間集中的に取り組む基本構想をつくる予定です。このとき、ブロックチェーンなどの新技術やインバウンドの大きな流れなどの効果的な活用も視野に入れるといいます。

 農林水産業は地方の成長の根幹と言及しました。そのうえで「農山漁村の雇用と所得を生み出すとともに、国家の安全保障の一環でもあることから、その持てる力を最大限引き出してまいります」と訴えました。

 新たな基本法の下、最初の5年間に計画的かつ集中した施策を講じることにより、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農林水産業の持続的な発展、中山間地域をはじめとする農山漁村の振興を図るといいます。

 このほか、農林水産物の輸出をより一層促進することや、持続可能な食品産業への転換促進、循環型林業など強い林業づくり、海洋環境の変化を踏まえた操業形態や養殖業への転換、海業の全国展開などについても触れました。

 さらに、観光産業の高付加価値化を推進するとともに、文化芸術立国に向けた地域の文化、芸術への支援強化にも取り組む方針です。地域交通は地方創生の基盤だとして、全国で「交通空白」の解消に向け、移動の足の確保を進めることを約束しました。

 5本目の「若者・女性の機会を守る」では、女性活躍と女性参画についても言及しました。
 意思決定の在り方を劇的に変えていくため、社会のあらゆる組織の意思決定に女性が参画することを官民の目標にすると掲げました。

 男女間の賃金格差の是正は、喫緊の課題だとして、多くの女性に社会活動を長く続けてもらえるにはどうすればよいか、国民的議論を主導して制度改革を実現するとしています。

 締めくくりに、石破首相は「政治を信じていただいている国民の皆様が、決して多くないことを私は承知しております。しかし、政治は国民を信じているのでしょうか。どうせ分かってはもらえない、そのうち忘れてしまうだろうなどと思ってはいないでしょうか」と国会の壇上から投げかけました。

 そのうえで、「国民を信じない政治が、国民の皆様に信じていただけるわけがありません。勇気と真心をもって真実を語り、国民の皆様の納得と共感を得られる政治を実践する」と宣言しました。