目次

  1. 伝統の「引き染め」を守り続ける
  2. 建設業の現場監督から家業へ
  3. 18年間の下積みで「一人前」に
  4. 称賛と現実とのギャップ
  5. ニーズが普段着から晴れ着に
  6. 伝統工芸の支援プログラムに応募
  7. オーダーメイド着物を始めたが…
  8. 引き染めイベントで得た気づき
  9. 引き染めスカーフをパリに出展
  10. 20歳の4代目と切り開く未来

 ふじや染工房は1952年、中村さんの祖父が創業しました。当初は帯専門でしたが、徐々に顧客を増やして工房の敷地を広げ、着物が染められる広さになりました。現在は中村さんの父で2代目の博幸さん(76)と母、長男の拓朗さん(20)の4人による家族経営です。

 完全分業制が主流の着物づくりは、完成までに多くの工程があり、それぞれを異なる職人が担います。ふじや染工房は、白生地の反物を染料で着色する「染め」専門です。主に着物用の反物を扱い、受注数は年間500~600反になります。最終製品は一般向けの着物展示会で販売されることが多いそうです。

 中村さんは「仕事の約8割は、江戸時代中期からの伝統工芸品『東京手描友禅』の着物作家さんからのオーダーです。反物を預かり、指示書通りの色に染め上げて色止めし、納品するまでが私たちの仕事です」といいます。

引き染めは鮮やかな色合いが特徴的です(ふじや染工房提供)
引き染めは鮮やかな色合いが特徴的です(ふじや染工房提供)

 「引き染め」という伝統技法を使い、工房内に反物を張りめぐらせ、染料を含んだハケで1枚1枚色付けします。

 「引き染めの特徴はクリアな発色です。常温の染料で染めるため、色のツヤと鮮やかさが保てます。白い反物をいちから染めるため、着物作家の要望に沿った色を再現できるのも、引き染めの良さです」

 そんな中村さんも、かつては「家業に興味はなく継ぐ気もなかった」といいます。

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