目次

  1. 改正大麻取締法・向精神薬取締法、わかりやすく整理
    1. 大麻由来成分を含む医薬品を可能とする規定の整備
    2. 大麻使用罪などの整備 使用の立証は尿検査
    3. 大麻草の栽培に関する規制の見直し
  2. カンナビノイド製品を継続使用するための手続き

 厚生労働省の公式サイトによると、大麻取締法・向精神薬取締法の改正の目的は、大麻草の医療や産業における適正な利用を図るとともに、その濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するためだと説明しています。

 改正法のポイントは以下の3つです。

  1. 大麻由来成分を含む医薬品を可能とする規定の整備
  2. 大麻使用罪などの整備
  3. 大麻草の栽培に関する規制の見直し

それぞれについて詳しく紹介します。

大麻由来成分を含む医薬品を可能とする規定の整備
大麻由来成分を含む医薬品を可能とする規定の整備

 大麻取締法は、大麻から製造された医薬品の施用等を禁止しています。しかし、大麻由来のカンナビジオール(CBD)を使った医薬品が欧米各国で承認されているようになってきました。麻薬に関する国際条約「麻薬単一条約」でも、大麻に関する規制の分類が変更され、国際的にも大麻の医療上の有用性が認められました。

 日本でも、大麻由来のカンナビジオール(CBD)を有効成分とし、難治性のてんかん患者に対し、長期に発作頻度を大きく低下させることが期待されている「エピディオレックス」の国内治験が始まっています。

 しかし、いまの法律のままでは、医療現場で活用できないという問題がありました。

 そこで、改正法から、大麻から製造された医薬品の施用、交付、受施用の禁止規定を削除しました。その一方で、大麻とその有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)について、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬の一つとして位置付けました。

 改正法は、テトラヒドロカンナビノール(THC)の残留限度値を設けます。そのため、規制値を超えるTHCを含有する製品は「麻薬」扱いとなります。

 厚労省の公式サイトで、製品中のTHCの含有量に関する検査が可能な機関は以下を紹介しています。

  • 三重大学 神事・産業・医療用大麻研究センター
  • Anresco Laboratories(東京・銀座に支社)
  • Eurofins Food Chemistry Testing US Madison USA(ユーロフィン・フード・テスティング株式会社が窓口)
  • Eurofins WEJ Contaminants GmbH(ユーロフィン・フード・テスティング株式会社が窓口)
  • KCA Laboratories LLC(ケーシーエーラボジャパン合同会社が窓口)

 ただし、それ以外での検査機関における検査等を妨げるものではないといいます。

 ここ数年、覚せい剤の検挙数は下がっているのに、大麻は2021年まで8年連続で増えていました。

 大麻は所持や栽培に罰則がありますが、厚労省は「大麻について、他の規制薬物と異なり、その使用について禁止規定及び罰則が設けられていない。大麻に使用罪がないことが使用へのハードルを下げているという調査結果が得られている」と指摘しています。

大麻使用罪などの整備
大麻使用罪などの整備

 そこで改正法は、大麻等を麻薬として位置付け、不正使用に対し、麻向法の禁止規定及び罰則(施用罪)を適用し、7年以下の懲役刑となります。

 大麻等の不正な所持、譲渡や輸入等の規制も、麻向法に基づく規制・罰則に移行し、たとえば、大麻所持は5年以下の懲役から7年以下の懲役となります。

 大麻の使用を調べる場合は尿検査を実施します。

 厚生労働省によると、THCは体内に摂取された後、代謝され、THC代謝物(THC-COOH-glu)として尿中に排泄されます。そのため、使用の立証には、THC代謝物のTHC-COOHを調べることとなります。

 一般的にTHC摂取後1週間程度、検査可能な量が尿中に排泄されますが、常習者の場合、3ヵ月を超えて検出される例があることが知られています。

 厚労省によると、繊維や種子を採取するための大麻栽培は都道府県知事による免許制となっていますが、栽培者は大幅に減少しており、神事・祭事への大麻草の利用などの伝統的な麻文化の継承も困難になっているといいます。

 大麻草の活用方法が医薬品への活用など変化するなか、欧米は、大麻草の栽培に関し、大麻草の有害成分の濃度の上限値を設けて、対応していますが、日本は盗難防止等の栽培管理規制が中心で、栽培者の負担が大きいといった課題がありました。

大麻草の栽培に関する規制の見直し
大麻草の栽培に関する規制の見直し

 そこで、大麻取締法を「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更したうえで、大麻草の栽培免許について、「大麻草の製品の原材料とする場合」(第一種)と「医薬品の原料とする場合」(第二種)に区分します。さらに、大麻草からの成分抽出等の加工(繊維の採取等を除く)は、上乗せで、許可制度を設定します。

 「大麻草の製品の原材料とする場合」(第一種)には、有害成分(THC)の濃度が基準値以下の大麻草から採取した種子等を用いて栽培しなければならないとする管理方法を定める予定です。

 そのうえで、行政が定期的に収去検査をし、栽培者に対する行政への報告事項の追加、帳簿の備付け、廃棄の届出、保管義務等の規定を整備します。

 厚労省の公式サイトは、難治てんかん患者がカンナビノイド製品を引き続き使用するための手続きを案内しています。