芯(コア)はポリエステル繊維、鞘(シース)は綿の複重層糸でつくる「パルパー」や、極細超長綿(スビンゴールド)とユニチカの紡績技術を組み合わせた綿100%の超極細紡績糸「舞鳳凰」など業界内でも評価の高い素材を作り続けてきました。
しかし、原燃料価格の高止まりによるコスト上昇、市況の変化に伴う需要の減少、東南アジアを中心とする海外市場での価格競争激化などから営業赤字が続くなか、繊維事業を縮小しつつ、事業の軸を高収益事業である高分子事業へシフトしていました。
そのなかで、事業の「選択と集中」により、以下の繊維事業から撤退することを明らかにしました。
- 衣料繊維事業
- 不織布事業
- 産業繊維事業(一部事業を除く)
他社への事業譲渡や移管生産等の取組みは、当該事業の特性や相手先との協議内容等を考慮しながら、原則として、2025年8月までの合意を目指すといいます。
ただし、協議が不調に終わる場合は、取引先に通知し可能な範囲で一定の供給責任を果たした上で、事業清算手続に移行する可能性があるといいます。
そのうえで、高分子などの将来性のある事業を中心とする事業ポートフォリオへと変革し、2029年度に営業利益65億円を目指す事業計画を明らかにしました。
新社長に藤井実・上席執行役員
経営責任を明確にするため、上埜修司社長ら取締役4人と監査役2人の社内役員全員は2025年4月30日ごろに退任する予定です。
一方、上埜社長の後任には、藤井実上席執行役員が就く予定です。2025年4月30日ごろの取締役会で正式に決定となる予定です。藤井新社長の経歴は以下の通りです。
1987年4月 ユニチカ入社
2008年3月 ユニチカファイバー生産開発本部ナイロンファイバー製造部長
2009年10月 ユニチカグラスファイバー垂井工場製造部長
2012年7月 同社垂井工場長兼当社垂井事業所長
2017年9月 ユニチカ機能材事業本部ガラス繊維事業部ガラス繊維業務室長
2018年4月 執行役員 ガラス繊維事業部事業部長代理兼ガラス繊維業務室長
2018年10月 執行役員 ガラス繊維事業部事業部長代理兼ガラス繊維業務室長兼機能材企画管理部長
2019年4月 執行役員 ガラス繊維事業部長
2020年4月 執行役員 ガラス繊維事業部長兼ユニチカグラスファイバー代表取締役社長
2022年4月 上席執行役員 ガラス繊維事業部長兼ユニチカグラスファイバー代表取締役社長
2023年4月 上席執行役員 技術開発本部長兼生産統括本部長
2023年10月 上席執行役員 技術統括部長
ユニチカの繊維事業撤退「1.9万社に影響」と分析
帝国データバンク大阪支社は、ユニチカの繊維事業撤退の影響を分析し公表しています。
それによると、ユニチカの繊維事業の直接取引先は国内に664社(仕入れ・外注先:256社、販売先:454社。一部重複)あり、販売先の販売先である二次取引先を含めると1万8960社に事業撤退の影響が及ぶ可能性があるといいます。
都道府県別や業種別にも影響を分析しています。
都道府県別の取引先、大阪が最多
帝国データバンクによると、直接取引先のうち、仕入れ・外注先企業を見ると、繊維関連産業が多い「大阪府」が78社と最多でした。次いで、化学品関連での取引が多い「東京都」が33社、繊維関連の「福井県」が26社と続きました。
都道府県名 |
社数 |
大阪府 |
78 |
東京都 |
33 |
福井県 |
26 |
京都府 |
21 |
愛知県 |
16 |
和歌山県 |
10 |
石川県 |
9 |
兵庫県 |
6 |
三重県 |
5 |
奈良県 |
5 |
埼玉県 |
4 |
岐阜県 |
4 |
滋賀県 |
4 |
岡山県 |
4 |
販売先企業は、「大阪府」が112社で最も多く、「東京都」が90社、「愛知県」が31社と続きました。
二次取引先は1万8506社に上り、社数でいうと、「東京都」が4105社で最も多く、「大阪府」が2792社、「愛知県」が1259社となり、この3都府県で4割を超えました。
業種別の取引先、二次まで見ると建設業や小売業にも
直接取引先のうち、仕入れ・外注先企業について細かい分類でみると、「繊維・繊維製品・服飾品製造業」(83社)、「繊維・繊維製品・服飾品卸売業」(35社)と繊維関連業種が上位を占め、次いで「化学品製造業」(26社)、「化学品卸売業」(14社)と続きました。
業種 |
詳細な業種 |
社数 |
製造業 |
繊維・繊維製品・服飾品製造業 |
83 |
化学品製造業 |
26 |
機械製造業 |
5 |
卸売業 |
繊維・繊維製品・服飾品卸売業 |
35 |
化学品卸売業 |
14 |
その他の卸売業 |
13 |
機械・器具卸売業 |
9 |
運輸・通信業 |
15 |
サービス業 |
メンテナンス・警備・検査業 |
7 |
専門サービス業 |
4 |
その他 |
12 |
帝国データバンクは「ユニチカが繊維事業から撤退することにより、繊維や化学関連の取引先において、販売先喪失などの影響が出る可能性が示唆される」とコメントしています。
販売先企業を見ると、「繊維・繊維製品・服飾品卸売業」(133社)、「繊維・繊維製品・服飾品製造業」(102社)、「化学品製造業」(32社)、「繊維・繊維製品・服飾品小売業」(19社)が上位に並びました。
一方で、二次取引先まで見ると、「卸売業」と「製造業」の占める割合が低下し、「建設業」や「小売業」、「サービス業」の割合が上昇しました。
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