目次

  1. 「一日も早く入って」と言われ
  2. 「希望が持てない」と辞めた同世代
  3. ベンチャー企業と新素材開発へ
  4. 植物由来の人工たんぱく質を糸に
  5. 逆風下で整理整頓と発信強化
  6. ナノファイバー製品もタオルも
  7. ベンチャーから評価される強み
  8. 家業の根底にチャレンジ精神
  9. 長いスパンで事業に取り組む
  10. 地域から世界を変える挑戦を

 長谷虎紡績は古くから繊維業が盛んな「尾州地方」にあり、100種類以上もの素材を紡績しています。長年培った技術を生かし、OEM(相手先ブランドによる生産)を中心に、大手ホテルや大型施設などのカーペットや、アパレル製品、電子部品、宇宙産業用の繊維などを製造。本社工場では月間で約35トンの糸を生産しています。従業員数は220人です。

東京の大手町サンケイプラザのカーペットも長谷虎紡績が製作しました(同社提供)

 初代の長谷虎吉さんが1887年、絹紡糸を製造する長谷製糸工場を創業。1947年に綿糸の生産を始め、51年に現社名の長谷虎紡績になりました。

創業当時の長谷虎紡績(同社提供)

 国内の紡績業は海外から安い繊維が入り衰退の一途をたどります。それでも、長谷さんは幼いころから「いつかこの会社を背負っていく」と思っていました。

 「3代目の祖父に連れられて毎朝お墓と神社参りをしていました。人のために働くことの喜びや『三方良し』の大切さを教えてもらい、『自分もそういう仕事をしたい』と考えました」

 別の会社での修業も考えましたが、新卒で長谷虎紡績に入社します。決め手になったのは、入社後に直属の上司となる社歴50年超の常務の一言でした。「4回りも年上の常務が『自分の教わったことをすべて教える。一日も早く入っておいで』と言ってくれました。それなら遠回りせずに学ぼうと入社を決めました」

 入社後、常務からは仕事はもちろん、トイレなどの共有部分をきれいにするといった社会人の基本を教わります。仕事を覚える中で見えてきたのは、家業の苦境でした。このころの売り上げはピーク時の半分で、収益は悪化の一途だったのです。

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