正常性バイアスとは?企業における危険性や強い人の特徴を簡単に解説
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正常性バイアス、これは誰にでも起こる心理作用です。心の安定を保つために必要なものですが、その危険性を知っておかないと企業にとっては大きな損失につながることもあります。企業における正常性バイアスの取り扱いについて、企業の危機管理などを取り扱うコンサルタントが解説していきます。
正常性バイアス、これは誰にでも起こる心理作用です。心の安定を保つために必要なものですが、その危険性を知っておかないと企業にとっては大きな損失につながることもあります。企業における正常性バイアスの取り扱いについて、企業の危機管理などを取り扱うコンサルタントが解説していきます。
目次
正常性バイアスとは、非常事態にもかかわらず「大したことはないだろう」と過小評価をしてしまうことです。
例えば、非常ベルが鳴っているのに、「またか」という顔で平然として避難せずにいつも通りに過ごしているといったことも正常性バイアスがかかっている状態です。
この正常性バイアスは心理学用語で、正常化への偏見、正常への偏向とも呼ばれています。
正常性バイアスは、関わる人数が多いほどかかりやすい傾向があります。
とある危機条件を模した実験で、被験者が1人と3人のときの反応時間の測定を行ったところ、3人のほうが長くなるという結果が出ています。この結果は「他の人が大丈夫だから自分も大丈夫」という認識がお互いに働いているからと考えられます。
個人がその状況を「おかしい」と判断しても、集団レベルでは「正常なこと」と意味づけされるため、正常性バイアスに対して抵抗することは困難であるということが言えます。
正常性バイアスと似たようなものに同調性バイアスがあります。その違いは以下です。
どちらも物事の捉え方を変えて心の安定を図ろうとする点は同じですが、正常性バイアスは非常時のみに誤った判断を下しやすいのに対して、同調性バイアスは常時でも誤った判断を下す可能性がある点に違いがあります。
正常性バイアスの傾向が強い人は、一般的に次のような特徴を持っています。
これらの特徴に多く当てはまる場合は正常性バイアスの傾向が強い可能性があります。
ただし、正常性バイアスは誰もが持っていることであり、傾向が強いことが悪ではありません。最も重要なのは、適切な対処ができるようにすることです。
例えば、日頃からあらゆる事態を想定しておき、その場面でのイメージを作っておくと正常性バイアスに陥らない判断を下すことができます。また、行動指針のように行動のルール・方針を作っておくことで、独自の価値基準に陥らずに判断を下せます。
企業において正常性バイアスが働くと、次のようなリスクが発生する危険性があります。経営者はこの危険性を認知しておき、対策を講じておくことが必要です。
企業で定められているルールに対しても「このくらいだったらいいだろう」と自分勝手な都合で判断をしてしまうことがあります。このようなことが集団で起き始めると、ルールを遵守しなくなる風潮が浸透する危険が生じます。
特に安全については重大事故につながる危険性もあるため、小さなルール違反も見逃さないようにする対策が必要です。
仕事の進め方に対して正常性バイアスが働くと「今までこれでやってきたから大丈夫」という過信が生まれてきます。その結果、もっと良い方法や改善点に対して「そんなことしなくてもいい」という判断を下してしまい、結果的に従業員や企業の成長を妨げることになります。
小さな改善を見過ごさず、「このままで大丈夫」という意識を捨てる工夫や仕組み作りを施しましょう。
人事評価では担当者の主観が入ってしまうことも少なからずあるでしょう。このような場面で正常性バイアスが働き「自分の評価は正しい」と認知すると、公平な評価とならずに従業員の不満を高め、その結果辞職してしまうこともあります。
従業員が辞める理由の中に「自分が正当な評価をされていないと感じた」というものもあります。そうなると優秀な人材を手放すことにもなりかねないので、公平な評価ができる仕組みを考えることも必要です。
正常性バイアスによる悪影響を防ぐには、まず正常性バイアスを理解することが大切です。その上で、企業は次のような対処法をとるといいでしょう。
行動指針とは従業員の模範となる行いを定めたものです。行動指針を作成することで、自分勝手な判断での行動を避ける効果が期待できます。
正常性バイアスが働きそうになった際に、行動指針を確認させることで、企業にとって望ましい行動へと軌道修正させるのも可能になります。
また、部下からの相談に対しても行動指針をもとに適切な判断を下せるため、正常性バイアスが働くことを防げます。
正常性バイアスを防ぐには、日頃から「なぜ?」を考えるように習慣づけることが大切です。「なぜこうなったのだろう?」と考えることで、現状を冷静に分析し正しい判断を促すきっかけになります。
こういった思考する習慣を身につけることで、「正常性バイアスの影響で自分は物事を楽観視していないか?」という考えを客観的に見ることができるようになります。
人を評価するというのはどうしても評価する人の主観が入りがちになります。ここで公平な評価ができるような評価基準を明確にしたり、評価を数値にして可視化する仕組みを作ると、正常性バイアスが働くことを防止できます。評価する人を複数人にするのも有効です。
正常性バイアスは企業に危機をもたらす可能性があります。危機を防ぐためには「現状のままではいけない」という意識を持ち、従業員一人ひとりが企業で発生した課題を認識することが大切です。
企業の危機意識を高めるためには次のような対策を行いましょう。
働いている企業や環境に対して従業員がどのように感じているのかを適切に把握しておかなければ危機管理はできません。上層部が把握していないことで、気がついたら会社を去る人が多数出てしまうというケースも考えられます。
とある企業では定期的に1on1ミーティングを導入し、管理職が部下に対しての悩みや現状に対しての不満などを聞き取り、ケースによっては管理職会議を行い対策を施す仕組みを取り入れました。その結果、離職率が低下したというケースがあります。
また、「企業の方針や自社の取り巻く環境を、従業員に理解してもらっていなかった」ということもよく耳にします。これは従業員が危機意識を持たずに、言われたことだけをこなすということになりかねません。
従業員の状況に対して適切に把握できるような仕組みとして、定期的な面談などを用いることも必要です。
従業員が働く現場では何が課題となっているのかを組織全体で共有し、解決していく意識を高めることも重要です。
従業員が抱えている課題、経営層が抱えている課題は、それぞれ規模や方向性が違うものですが、全体的な課題として一人ひとりが認識することで、同じ危機管理意識を高められます。
課題認識を共有すると、今のままでは問題となることへの意識も高まり、そこから改善に対しての意欲も高まるでしょう。また管理職や上層部も、従業員の言葉に耳を傾け、現場の働き方改善を実施しやすくなります。
ある組織では従業員が抱えている問題や課題を投書できる社内目安箱を作成し、それを上層部が確認して現状把握を行い、内容によっては聞き取り調査をした上で改善行動を起こすということを行っています。これにより自分たちの声が反映できるということで従業員の改善意識も高まり、提案活動も活発化しています。
個人の目標を持たせている企業も多いでしょう。しかしこの目標が会社の方針とリンクしていなければ、自分勝手な判断により、会社を危機的状況に陥らせてしまうこともあります。
そうならないためにも、会社が直面している課題や目指す方向性を従業員に理解してもらい、これにリンクした個人目標を立ててもらいましょう。そうすることで、常に会社の状況に対して危機意識を持って目標達成に対する行動を起こしやすくなります。
リスクマネジメントに対しての研修を行うことも危機意識を高めるには有効な手段です。従業員の業務上のリスクに対する意識を向上させ、起こり得る危機を回避できる能力を高めておくことで、必然的に危機意識は高まります。
まずは管理職がこのような研修を受けることで、自部門への落とし込みを行い、従業員全体が危機意識を高めることにつなげられます。
筆者も管理職研修を行うことが多く、今の自分達が取り巻く現状に対しての課題を明確にし、それを解決するための「問題解決型会議」を行っています。その結果、現状に対しての危機感を高めつつ、解決するための方法を組織全体で考えられるようになりました。
正常性バイアスは、心の安定を保ちながら生活するために必要な心のメカニズムでもあります。しかし、その働きと危険性を理解しておかないと、企業にとっては脅威になることもあります。
まずは、自分が下した判断が状況判断によるものなのか、それとも正常性バイアスによるものなのかを客観的に知るように心がけましょう。その上で周りの判断も同様に確認することが大切です。
正常性バイアスを正しく理解し、危機意識を持って取り組むことが企業を守ることにつながります。ぜひ正しい知識を持ってください。
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