目次

  1. 育児時短就業給付金とは
  2. 育児時短就業給付金の受給資格と支給要件
  3. 育児時短就業給付金の支給対象期間
  4. 育児時短就業給付金の支給額の計算方法 具体例で解説
  5. 育児時短就業給付金の申請手続き
  6. 育児時短就業給付金の注意点
    1. 2025年4月1日より前に時短勤務を開始している場合
    2. 特別な労働時間制度(フレックスタイム制、変形労働時間制など)の場合
    3. 育児休業を複数回取得する場合

 厚労省の公式サイトによると、育児時短就業給付金制度は、時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に、2歳に満たない子を養育するために時短勤務した場合に、育児時短就業前と比較して賃金が低下するなどの要件を満たすときに支給する給付金です。

育児休業等給付の概要
育児休業等給付の概要

 育児時短就業給付金は、育児休業等給付という枠組みの中に位置づけられます。2025年4月1日から育児休業給付(育休手当)と出生後休業支援給付金をあわせると手取りで10割まで引き上げられる予定です。

 さらに、育児のための短時間勤務制度を選択し、賃金が低下した労働者に対して給付する制度はなかったことから2025年4月から、育児時短就業給付を創設します。

 育児時短就業給付金を受け取るには、まず以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 2歳未満の子を養育するために、育児時短就業する雇用保険の被保険者であること
  2. 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて、育児時短就業を開始した、または、育児時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12ヵ月あること

 さらに、育児時短就業給付金は以下のすべてを満たす月に支給します。

  • 初日から末日まで続けて、雇用保険の被保険者である月
  • 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  • 初日から末日まで続けて、育児休業給付または介護休業給付を受給していない月
  • 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

 育児時短就業給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月に対して支給します。

 たとえば、育児時短就業を4月21日に開始したとします。すると、4月から育児時短就業を終了した日(3/20)の属する3月までの各暦月(4月~翌年3月)が支給対象月となります。

 このほか、3月に、長女の育児時短就業を終了し、次女の育児時短就業を開始した場合、3月は次女の育児時短就業の支給対象期間となり、長女の育児時短就業は前月(2月)までが支給対象月となります。

出生後休業支援給付金の支給イメージ
出生後休業支援給付金の支給イメージ

 育児時短就業給付金の支給額は、原則として育児時短就業中の各月に支払われた賃金額の10%です。ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。また、各月に支払われた賃金額と支給額の合計が支給限度額を超える場合は、超えた部分が減額されます。

 簡単にまとめると、次のルールが適用されます。

  • 支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合……育児時短就業給付金の支給額=支給対象月に支払われた賃金額×10%
  • 支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合……育児時短就業給付金の支給額=支給対象月に支払われた賃金額×調整後の支給率
  • 支給対象月に支払われた賃金額と、上記の支給額の合計が支給限度額を超える場合……育児時短就業給付金の支給額=支給限度額-支給対象月に支払われた賃金額

 2025年7月31日までの支給限度額は45万9000円です。

 育児時短就業給付金の支給額を計算するためには、まず育児時短就業開始時賃金月額を算出する必要があります。

 育児時短就業開始時賃金月額は、原則として育児時短就業開始前6ヵ月に支払われた賃金の総額を180で割った額に30を掛けた額です。ただし、上限額と下限額が設定されています。2025年7月31日までは、上限額は47万700円、下限額は8万6070円です。

 育児時短就業開始時賃金月額が30万円で、支給対象月に支払われた賃金額が20万円の場合は、支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下であるため、支給率は10%となります。このとき、支給額は次のとおりです。

20万円×10%=2万円

 育児時短就業開始時賃金月額が30万円で、支給対象月に支払われた賃金額:28万円の場合は、支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超、00%未満のため、支給率は次のとおりです。

{9000×30万÷(28万×100)-90}÷100=0.06428…(四捨五入で6.43%)

 支給額は以下の通りです。

28万円×6.43%=1万8004円

 育児時短就業開始時賃金月額が47万0700円で、支給対象月に支払われた賃金額:42万円の場合、支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下であるため、支給率は10%となります。

 このとき、支給額は42万円×10%=4万2000円ですが、賃金額とあわせて支給限度額を超えるため、支給されるのは3万9000円までとなります。

 育児時短就業給付金の支給を受けるためには、原則として被保険者を雇用している事業主が育児時短就業開始時賃金の届出、受給資格確認及び支給申請をする必要があります。ただし、被保険者本人が希望する場合は、受給資格確認、支給申請を本人がすることもできます。

 詳しくは、厚労省のパンフレット「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」(PDF)で確認してください。

 不明点は、事業所の所在地を管轄するハローワークへ問い合わせてください。

 育児時短就業給付金の注意点は以下の通りです。

 2025年4月1日より前に時短勤務を開始している場合は、2025年4月1日を育児時短就業開始日とみなして、受給資格・各月の支給要件を満たす場合は、2025年4月以降の各月が支給対象となります。

 フレックスタイム制、変形労働時間制の適用を受けている場合、支給対象月の「週所定労働時間」は、対象期間の総労働時間÷清算期間(対象期間)の月数×12月÷52週で計算します。

 育児時短就業給付金の対象となる時短就業に回数の制限はありません。支給要件を満たしている場合は、再度育児時短就業給付金の対象となります。