目次

  1. 家族で創業した会社
  2. 議員秘書から入社、アメリカへ
  3. 社長就任後にデジタル化を主導
  4. 仕事の「濃度」を高めるための時間割作成
  5. 唯一無二の製品開発
  6. 高齢者も会社も得するCSR活動

 I.S.Tは、1983年に阪根さんの父が創業しました。当時の従業員は、技術者3人を含めた計4人。操業を開始し、まずはガラスとフッ素樹脂の機能性複合繊維の開発に着手します。

 「提供していただいた資材置き場が滋賀県にあったため、家族で兵庫県の芦屋市から引っ越したんです。創業前の父は会社員で、何もないところからのスタートでした。当時中学生だった私も、会社に置く靴箱や机を運んだり、掃除を手伝ったり。忘年会は家族会のようなものでしたし、創業当時は本当に『家族で作った会社』という感じだったんです」と、阪根さんは振り返ります。

創業当時のI.S.T(I.S.T提供)

 設立以降は、電機電子機器などに使用されるポリイミド樹脂、また現在世界シェア70%以上(技術供与分を含む)となっているプリンターの中核部材であるトナー定着チューブなどの高機能素材を、次々に開発していきます。さらに1994年、ポリイミド樹脂の皮膜成形用ワニスの製造・販売権をアメリカのデュポン社から譲り受け、I.S.Tの現地法人をニュージャージー州に設立。国内拠点も滋賀県のほか、兵庫県、岐阜県、東京と拡大していきました。

 大学を卒業した阪根さんは、まずは議員秘書として働き始めます。

 「秘書の仕事は楽しみつつもしっかりやっているつもりでしたが、父からすると遊んでいるように見えたのかもしれません。『アメリカに会社を作るから行ってこいや』と背中を押され、1995年にI.S.Tに入社し、渡米しました」

 突然の話で、当時英語が堪能だったわけでもなかったという阪根さん。現地で語学学校に通いながら会社の業務も行う日々が始まりましたが、「アメリカへ行くことに、あまり不安はありませんでした。それよりも、『面白そう!』と思う気持ちが勝っていたんです」と語ります。

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