目次

  1. デジタルノマドとは 日本では誘致に向けたビザも発給
  2. デジタルノマド誘客促進事業とは
  3. 補助対象となる事業者
  4. 補助対象となる経費と補助上限額
  5. 事業申請のポイント
  6. 事業者の選定プロセス
    1. 審査における必須項目
    2. <審査における加点項目> 
  7. 公募期間と申請手続き

 近年、「デジタルノマド」と呼ばれる国際的なリモートワーカーが世界的に増加しており、その市場が急速に拡大しています。デジタルノマドは、特定の場所に縛られず、インターネットを活用して働きながら、世界各地を旅する人々のことを指します。

 世界各国がこのデジタルノマドを誘致するため、専用のビザを発給するなどの取り組みを進めるなか、日本の出入国在留管理庁の公式サイトによると、日本でも2024年4月からデジタルノマドにビザを発給しています。

デジタルノマド向け在留資格
デジタルノマド向け在留資格(出入国在留管理庁の公式サイトから https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities10_00001.html)

 しかし、デジタルノマドの誘致を本格的に進めるためには、多様な生活スタイルやニーズに合わせた受入環境の整備が急務となっています。特に、中長期滞在に適した施設や、利用者同士の交流を促進する環境の構築が必要とされています。

 観光庁は2025年4月30日から、質の高い消費と投資を呼び込むためのデジタルノマド誘客促進事業(補助事業)の公募を開始しました。

 質の高い消費と投資を呼び込むためのデジタルノマド誘客促進事業の目的は、質の高い消費と投資を呼び込むデジタルノマドの継続的な誘致・受入を促進することです。得られた知見やモデル事例を踏まえつつ、さらなる受入環境の拡充を目指すことです。

 補助事業の実施期間は、交付決定後から2026年2月28日までと定められています。また、支援を受けた取り組みは、単年度で完結するのではなく、事業の成果を踏まえて2026年度以降も事業者が自ら継続して行う意向があることが前提となっています。

 事業によって得られた成果や知見は、デジタルノマド誘致推進のために公開される場合があります。

 補助対象となる事業者は以下の通りです。

• 地方公共団体
• 観光地域づくり法人(DMO)
• 地域振興を目的とした民間事業者等の組織、協議会等

 ただし、申請主体が地方公共団体でない場合は、地方公共団体との連携が必須となります。申請時には、地方公共団体の実施体制への参画に関する趣意書の提出が求められる場合があります。

 また、過去に観光庁や他の官公庁から補助金交付等停止措置や指名停止措置を受けていないこと、過去3年以内に情報管理の不備で契約解除されていないこと、実施体制に暴力団等が含まれていないことなどが条件となります。

 事業の補助率は補助対象経費の1/2以内で、1事業あたりの補助上限額は500万円です(金額の下限は特に設けられていません)。

 補助対象となる経費は多岐にわたり、複数のメニューを組み合わせて実施することが可能ですが、補助対象の総額は500万円を超えない必要があります。

 具体的な補助対象メニューは以下の通りです。

  • 受入環境整備の実施に向けた戦略の策定等に係る費用(事業の企画開発や専門家からの意見聴取に関する経費)
  • デジタルノマドのニーズに合わせた施設改修・整備等に係る費用(宿泊施設等へのワーキングスペースの改修・整備、コリビング等デジタルノマド向け中長期滞在に適した宿泊施設の改修、宿泊施設やワークスペース等にジムやバーなど交流機会の創出を目的とした設備の整備)。
  • デジタルノマドのニーズに合わせた設備導入・物品購入等に係る費用(ワーク環境の世界との時差対応のためのスマートロック、防犯カメラ等24時間利用化設備の導入経費)
  • デジタルノマドの招聘・受入、モニターツアーの実施(海外からの渡航費、宿泊滞在費、コワーキングスペース利用費、滞在中の交流会・体験プログラム造成費用及び実費、滞在中の支援費用)
  • デジタルノマド受入に必要な人材育成費、受入側の関係者向けセミナー・研修開催費
  • 必要な情報(宿泊施設、コワーキング施設、体験プログラム等)を閲覧可能なウェブページ等の構築
  • SNS等を活用した情報発信
  • デジタルノマドが集まるイベント等への参加費や広告出稿
  • デジタルノマド同士や地域とのつながりを促進するコミュニティツールの導入
  • 招聘したデジタルノマドへのアンケート・ヒアリング実施経費、データ集計・分析、成果とりまとめ・報告に関する経費

 事業の申請にあたっては、いくつかの重要なポイントがあります。

  • デジタルノマドの生活スタイルに対応した中長期滞在に寄与し、継続的な誘致に資する取り組みであること。通常のインバウンド観光客向けではない点に留意が必要です。
  • 次年度以降も継続してデジタルノマド誘致に取り組む意向があること。
  • 施設改修や設備導入を実施する場合、数日間のイベントやモニターツアーのためだけでなく、継続的な受入に繋がるものであること。
  • デジタルノマドを招聘する場合、長期滞在による地域消費の拡大に資する取り組みや、ビジネスマッチング等によるイノベーション創出・経済効果の拡大に資する取り組み、都市部の大規模誘客やリゾート地の閑散期対策として、フェス等による大規模誘致を図る取り組みであること

 観光庁が有識者を含めた委員会等を実施して選定します。応募要件を満たしている提案の中から、以下の観点に基づいて総合的に評価が行われます。

1. 事業内容の理解度: 事業趣旨や補助事業への理解、実現戦略・計画の検討状況
2. 提案内容の独創性: 取り組み内容の独創性・新規性、他地域への横展開への寄与
3. 提案内容の具体性: 検証仮説の具体性、計画に沿った妥当なアウトプット(定量的・定性的)の設定
4. 計画の確実性: 実施体制・実施工程の確実性、資金調達計画の確実性
5. 次年度以降の継続性: 次年度以降の継続に向けた具体的なアウトカム、計画、実施体制の確実性

• 観光庁が登録した「登録観光地域づくり法人(DMO)」が実施体制に参画していること
• 複数の地域が連携して行う広域的な取り組みであること
• 日本企業への具体的な投資やビジネスにつながるアイデアが含まれていること
• 海外を本拠地とするデジタルノマド50人以上を誘致する大規模な取り組みであること
• 滞在期間が1ヶ月以上の取り組みであること(3ヶ月以上の長期プログラムはさらに加点)
• 申請段階で事業の自走化に向けた具体的な取り組みに関する記載があること
• 地域の幅広い産業との連携等により、経済波及効果の最大化、地域の雇用の質・生産性の向上を図る取り組み、地域資源や産業・雇用・社会の持続可能性向上に資する分析・取り組みが検討・実施されていること

 2025年度の採択予定件数は4件程度とされています。

 事業の公募期間は、2025年4月30日(水)から年5月30日(金)17時までです。質問受付期間は、公募期間とは異なり、4月30日(水)から5月29日(木)17時までとなっています。

 詳しくは、観光庁の公式サイトに掲載された公募要領を確認してください。