コロナでブリの出荷に相次ぐキャンセル

 「養殖ブリが1万匹残っている。どうにか出荷できんかね?」。2020年(令和2年)2月末、天草市でネット通販やクルマエビのオーガニック養殖を手掛ける「クリエーションWEBプランニング(以下”ク社”)」代表の深川沙央里さんのところに、弟がブリの養殖を担当している水産会社「深川水産」から相談が持ち掛けられました。

 聞けば、コロナの影響で大口顧客からのキャンセルが相次いで、困っているとのことでした。ブリや真鯛は、養殖に2年ほどかかり、脂が乗った時期を逃すと産卵時期に入って身が痩せ、商品価値が落ちてしまいます。販路を考える前に、まずは鮮度を保つために冷凍しないといけません。しかし、様々な女性の働く場所づくりを理念に掲げ、女性スタッフ6人と働く深川さんですが、コロナ下の家族介護や休校による保育などでみんな忙しく、スタッフが足りませんでした。「どうしよう」と悩むなか、3月半ばに開催された天草市宝島観光協会での会議で、宿泊業を営む「サンタカミングホテル」の横島龍一社長が「うちから人を出しますよ」と声をかけました。

弁当をつくるホテルの従業員たち(深川さん提供)
弁当をつくるホテルの従業員たち(深川さん提供)

 「サンタカミングホテル」でも、コロナの影響で宴会や宿泊予約のキャンセルが相次ぎ、従業員を交代で休ませている状況だったのです。会議の3日後にはシェフを含む従業員2人がク社の手伝いに来てくれました。深川さんは「このメンバーなら昔から温めていた冷凍弁当が実現できるかもしれない」と考え、シェフの協力を得て養殖ブリを使った具体的なメニューが生まれたのです。

アマビズが社会意義を盛り込んだメディア発信を支援

 プロモーションを考え始めた深川さんから相談を受けたアマビズは、コロナ下での顧客意見の取り入れと、販路開拓のためのメディア発信を支援しました。顧客意見の取入れ先として、地域の子ども食堂「いこいスペース∞まるちゃん家(以下 ”まるちゃん家”)」を紹介しました。まるちゃん家は、子どもたちの孤食を何とかしようと立ち上がり、現在では地域の子どもが数十名、保護者の方も参加しています。3月末にコロナ下で食堂は閉鎖していますが、企業などから余った食品を集めて、子育て家庭に無料で配る「フードパントリー」の形で主にひとり親家庭を中心に食材支援をしていました。深川さん自身がシングルマザーであることもあり、試作を100食寄付しました。保護者の方に冷凍弁当のアンケートを取る形で意見を吸い上げることができました。

ブリ弁当を手にする深川さん(本人提供)
ブリ弁当を手にする深川さん(本人提供)

 改良を重ねるなか、ブリ南蛮にブリ煮付け、甘辛ネギ焼、ガーリックバターしょうゆステーキ、香草パン粉焼きという5種類の総菜をセットとした「天草ブリのお弁当」として商品化しました。4月1日から発売中です。

 次に、いかにメディアに効果的に取り上げられるかを一緒に考えました。

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