事業停止は早期に決断すべきか?コロナで廃業した33歳が学んだこと
イロモアの清算手続きに入った福井寿和さん。28歳から33歳まで、時間と情熱をつぎ込んだ事業は、終わりを迎えました。しかし、福井さんはこれからの人生を悲観してはいません。今後の人生をどのように歩んでいくのでしょうか。
イロモアの清算手続きに入った福井寿和さん。28歳から33歳まで、時間と情熱をつぎ込んだ事業は、終わりを迎えました。しかし、福井さんはこれからの人生を悲観してはいません。今後の人生をどのように歩んでいくのでしょうか。
家に帰ると、妻、3歳の長男、1歳の長女が待っています。忙しく働いていたときと比べて、家族と過ごす時間が増えました。家族を養うために働かなければならない、という思いが強くなっています。
全店舗を閉店し、会社を清算することを記したnoteはツイッターのトレンドにも入るなど、大きな反響を呼びました。たくさんの人から連絡があり、これからどうするの、と聞かれたそうです。福井さんの今後は、まだ何も決まっていません。ただ、再起することを考えると、前向きな気持ちが少しずつ芽生えてきました。
店や会社など、目に見えるものはもうすぐ無くなります。それでも、考えに考えて結果を出してきた経験は消えません。新しいフィールドでも、必ず活躍できると信じています。
新型コロナウイルスにより、飲食店に限らず多くの経営者が苦しんでいます。福井さんは会社を清算した経験を共有し、少しでも危機にある人の力になりたいと考えています。
事業に失敗したとき、再起できない人は多くいます。将来を悲観して、死を選んでしまうこともあるでしょう。店舗を閉鎖したり、会社を清算したりした人が、その経験を語ることは多くありません。
福井さんもこれまで築いてきた実績が壊れてしまったような感覚で、本当は「穴があったら入りたい」そうです。それでも、似た状況にある人の役に立てるよう、講演やnoteを通じて、「廃業しても元気に前向きに生きていることを伝えていくのが使命」と考えています。
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— 福井寿和@全店舗閉店して会社を清算中の人 (@aomorio) June 15, 2020
一方で、「早期の事業停止が必ずしも正しいとは思っていない」といいます。発信の目的は「会社を清算するという選択肢」を掲示することにありました。企業は現預金が尽きると事業を継続できなくなります。赤字が出ても融資を受けたり、資本を追加したりすることができれば、倒産はしません。
国の支援もあり、現在は経営状態の悪い企業も融資を受けやすい状況です。しかし、融資はいつか返済しなければなりません。借りた金額以上の利益を得られなければ、いつか破綻します。
ぎりぎりまで事業を継続する場合、金融機関からは融資を断られやすくなります。その場合、経営者は個人資金だけでなく、親族や友人に借入をした資金まで投入してしまうことがあります。そうなってから破綻した場合は、人間関係も崩壊し、家族や地域からも孤立してしまいます。早期に事業を停止した場合と比べて、再起はとても難しくなるでしょう。
福井さんは新しいチャレンジとして、そのようなケースを減らすために、廃業を支援するビジネスを検討しています。急激な事業変化により、飲食事業では利益を回復させるシナリオを描けませんでした。それでも、早期に決断したことで、自身や取引先、従業員への影響は最小限に抑えることができました。
事業が立ち行かなくなった際、追い詰められる前のソフトランディングを助けることで、経営者や従業員の再起を支援したいと考えています。他にも、経験を生かしたカフェ従業員のオンライン教育など、いくつかアイデアが生まれているそうです。
飲食店開業が失敗する理由の一つとして『料理への過信』があります。
— 福井寿和@全店舗閉店して会社を清算中の人 (@aomorio) June 14, 2020
料理が良ければ客は来ると思ってることです。
でもコロナで気づいたはず。
"テイクアウトが売れない!"
料理が良いなら売れるはず。なのに売れない。
どういうこと?
料理だけじゃないってこと。飲食店は総合格闘技なんです。
「この決断が良かったかどうかは、今はまだわかりません。半年後、1年後、もしかしたら数年後に『あの時決断してよかった』と思うのかもしれません。これからどのような行動をしていくかで、この決断が正しいものに変わっていくのだと思います」
創業の地である1号店は、最後に片付ける予定です。どんな気持ちで最後を迎えるのか、少しだけ怖さもあります。「いつかこの経験がいい思い出になり、借りていた場所にも違う店が入って、新しい気持ちでお店を訪問できればいいなと思います」
福井さんは笑顔で、新たな一歩を踏み出しました。
おわり
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