「ハンコのために出社」は不要【政府指針】中小企業も使える代わりの手段
政府が民間同士や官民の契約書などに押印しなくても法律違反にならないとする「脱ハンコ」に向けた指針を公表しました。中小企業がハンコをやめたくても、取引先の契約方法に従わざるをえないことが多かったのですが、政府が指針を出したことでこれまでの慣習が変わる可能性があります。
政府が民間同士や官民の契約書などに押印しなくても法律違反にならないとする「脱ハンコ」に向けた指針を公表しました。中小企業がハンコをやめたくても、取引先の契約方法に従わざるをえないことが多かったのですが、政府が指針を出したことでこれまでの慣習が変わる可能性があります。
ハンコは本人が文書を作成したことの証明として広く使われていますが、実は法令などで押印が義務づけられているのは、原則として会社の取締役会関連の書類など一部にとどまっています。
それでも、多くの契約書でハンコが使われ続けている一つの理由として挙げられているのが、民訴法第228条第4項の「私文書は、本人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」という一文でした。何か契約上のトラブルが起きたとき、 ハンコを押した文書は「契約の意思が確認できる証拠」として使いやすいため、契約時にハンコが使われ続けてきたと考えられています。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて、従業員を在宅勤務に切り替えた企業も多くありましたが、契約書のハンコを押すために出社する人が相次ぎ社会問題になりました。
そこで、メルカリ、ヤフー、LINEなどが契約手続きをハンコから電子契約へ移行することを次々公表しました。
GMO インターネットグループの熊谷正寿代表はTwitterで脱ハンコの賛同を呼びかける「#さよなら印鑑キャンペーン」を展開したところ、1万回以上RTされした。
【ハンコ出社はテレワークの落とし穴】
— 熊谷正寿【GMO】 (@m_kumagai) May 11, 2020
脱はんこで捺印痛勤を無くそう。この声を広げたいので「#さよなら印鑑キャンペーン」中。賛同いただける方は↓を。300名様に3000円のAmazonギフト券プレゼント🎁
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詳細👇 pic.twitter.com/z4vRUNXAjN
中小企業の多くの経営者もハンコには頭を悩ませています。アドビは、中小企業のハンコの慣習の実態を探るため、従業員300名以下の企業に勤める全国の経営者・役員、計500人にインターネットでアンケートを実施し、調査結果を公表しました。
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こうしたなか、政府は2020年6月19日、押印についてのQ&Aを公表しました。
【#規制改革 #押印】
— 内閣府 (@cao_japan) June 19, 2020
内閣府、法務省、経済産業省の3府省で「押印についてのQ&A」を作成しました。押印に関する民事訴訟法上の取扱い、押印の効果、押印を代替し得る手段などについて整理しています。
詳細はこちら→https://t.co/UFYcRYWpyt pic.twitter.com/6N8hYN5Au1
「契約は当事者の意思の合致で成立するもので、 書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合をのぞき、必要な要件とはされていない」「押印をしなくても、 契約の効力に影響は生じない」と説明しています。
さきほどの民訴法第228条第4項では、ハンコを押した文書は契約の意思が確認できる証拠として使いやすいと考えられてきましたが、Q&Aでは次のように解説しています。
本人による押印がされたと認められることによって文書の成立の真正が推定され、そのことにより証明の負担は軽減されるものの、相手方による反証が可能なものであって、その効果は限定的である。
押印についてのQ&A
テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、重要な文章でも押印以外の手段で代替したりすることが有意義である。
ハンコの代替手段として、政府は次のようなものを例に挙げています。
取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存。請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等 は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認 められる重要な一事情になり得ると考えられる。
契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存 本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでの PDF 送付)の記録・保存文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存
利用時のログイン ID・ 日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。
今回の対応は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて政府としてテレワークを推し進めるため、政府として押印について見解を示したものです。これまで通り、押印の必要な契約書を求める取引先に対しては、このQ&Aを示しながら業務効率の改善を提案するのも良いでしょう。
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