「ストーリーのゴリ押し」はもう古い?ウェブで新商品の顧客をつかむコツ
新型コロナの影響で、これまで展示会や店舗で新商品を発表してきた中小企業が、ウェブ上に視点を移し、テストマーケティングに取り組むケースが増えています。マクアケの中山亮太郎社長ら4人で、新商品で顧客をつかむコツやマクアケを活用するメリットなどについて話し合いました。(聞き手・杉本崇、構成・牧野佐千子)
新型コロナの影響で、これまで展示会や店舗で新商品を発表してきた中小企業が、ウェブ上に視点を移し、テストマーケティングに取り組むケースが増えています。マクアケの中山亮太郎社長ら4人で、新商品で顧客をつかむコツやマクアケを活用するメリットなどについて話し合いました。(聞き手・杉本崇、構成・牧野佐千子)
Makuakeは、ものづくり、一次生産者、飲食店などあらゆる産業から新しいものを生み出していくための「アタラシイものや体験の応援購入サービス」です。
これまでは展示会や実店舗で新商品をデビューさせていた企業などが、コロナによる新商品開発のニーズが高まる一方、従来の新商品のデビューの場が稼働していないため、オンラインシフトが加速し、利用者が増えています。
中山さんは、「一つのことだけをやっていた企業が、コロナで危機感を持ち、2本目、3本目の矢が必要だと気づきました。日本の中小企業は、BtoBの事業や、下請けの領域が多いのですが、BtoCの自社ブランド事業もやっていくことも大切になっています」と話します。
中山さんは、さまざまな企業との電話ミーティングを繰り返してきたなかで「幕末や大戦もくぐりぬけてきたような、伝統工芸や製造、食品などの老舗企業があります。商工会などの地元のつながりはありますが、ネット広告やネットマーケティングなど、IT系のつながりは弱いと感じています」といいます。
そのうえで、「マクアケは割りばし一つ作れないし、金属滑らかに削るなどできない。得意の部分はオンライン。そこにはデジタルとモノづくりの分断があるが、いまは、非合理的なものを合理化させていく、今までできなかったデジタル化のチャンスがあります」と捉えています。
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Makuakeで新商品のプロジェクトを立ち上げるときの注意点は何でしょうか。
マクアケ西日本事業部マネージャーの松岡宏治さんは「ひとりの熱狂する顧客、ユーザーを獲得する事を考えるミクロな目線『虫の目』、それをどうすればもっと多くの人に伝わるかと考えるマクロな視点『鳥の目』、それと、3年後、5年後続けるにはどうすればいいのかを考える『魚の目』が大事」と話します。この3つを考えれば、プロジェクト後も、多くの人の注目を集めることができるだろうと説明します。
さらに、商品を考える際には「Why(なぜ)、How(どのように)、What(なにを)の順番が大事」と紹介します。まず、どんな社会を目指したいのか、なぜビジネスをやりたいのかを考えて、最後に何をやるのかを組み立てますが、「消費者に伝えるには逆の順番」がよいと言います。
「こんな商品があるんです、こんな技術で、こんな風に商品化しました。最後に、こんな世界を実現したいんです、という順番。それにより、骨太なストーリーが作り上げられます」
2,3年前までは「地域に貢献したい」「こんなに一生懸命作っています」という「ストーリーで売ろうとするプロジェクト多かったといいますが、今は、Why,How,Whatの3つが、「ヒットのための土俵に立つ条件」だといいます。
Makuakeのなかで「日常生活の新常識!ポケットサイズの予防衣 "ポータブルガウン"」と題し、医療用のガウンを一般の人向けに販売するプロジェクトが、2日間で目標額を達成しました。実施者は、アパレルベンチャー「ヴァレイ」CEOの谷英希さんです。
谷さんは、「ウイルスに対して何をしていいかわからない多くの人々の不安を解消させていければと思って開発しました」とガウン開発に込めた思いを伝えました。
当初は、一般用に販売する際には、その「機能性」を売りにしたいと考えていましたが、担当の松岡さんと話していくなかで、別のアプローチに気づきました。その結果、プロジェクトのページでは、カップルがガウンを着て距離を縮める動画を使い、「ガウンを持っていることが時代を先取りしています」という方向性のプロモーションを打ち出しました。8月13日現在で目標額の591%となる177万円が集まっています。
松岡さんは、プロジェクト実行者に対する自身の立場について「教えるのではなく、こういうやり方もありますよねと、いろいろ話していく中で提案していく『コーチング』が役割かなと思います」と話します。
松岡さんと谷さんのように、キュレーターがプロジェクト実行者とともに考え、アイデアを出し合って応援者のニーズにあったプロジェクトを作っていくことの重要性が高まっています。中山さんは、「キュレーターは、思いの強さがあって、アツいものを持った人のみを採用しています。挑戦者へのリスペクトは絶対に忘れないようにしよう、と常々言っています」といいます。
マクアケは「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げています。中山さんは「今は、生まれるべきものが生まれていません。もっと引っ張り出していける世の中になればいいですね」と話しました。
中山 亮太郎 マクアケ代表取締役社長
慶応義塾大学卒業。2006年サイバーエージェント入社。社長アシスタントやメディア事業の立ち上げに従事。2010年、ベトナムにベンチャーキャピタリストとして赴任。現地のネット系スタートアップへの投資を担当。2013年に日本にサイバーエージェント・クラウドファンディング(現・マクアケ)を設立し、代表取締役社長に就任。ものづくり、一次生産者、飲食店などあらゆる産業からあたらしいものを生み出していくための「アタラシイものや体験の応援購入サービス」として展開している。
松岡 宏治 マクアケ西日本事業部マネージャー
学生時代、立ち上げ初期のマクアケでアルバイト。その後IT企業に入社。法人の新規開拓営業で新人スタートダッシュ賞を受賞。その後、サイバーエージェント・クラウドファンディング(現・マクアケ)に参画。2人目の社員として関西支社の立ち上げに貢献。担当プロジェクトとして、2017年に当時国内記録となる1億2800万円の応援購入額を集めるメーカーブランド「glafit」の電動バイク「HYBRID BIKE GFR」などを手がけた。
谷 英希 ヴァレイCEO
2016年1月 奈良県にて創業 在宅縫製サービス"My Home Atelier"を運営し、様々なデザイナーズブランドの縫製加工を行う。2018年makuakeにて親子三代で作る究極のシャツプロジェクトで約200万円の売り上げを達成。2019年経済産業省が選ぶ「羽ばたく中小企業300」に選出 2020年 4月〜7月 経済産業省より要請を受け安倍首相との対談を経てANAホールディングスと共同で約10万枚の医療用ガウンを生産。同時に独自のガウンプロジェクトを立ち上げる。
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