目次

  1. 電子帳簿保存法とは
  2. 電子帳簿保存法改正のメリットと注意点
  3. 電子取引の改正と注意点
  4. 改正電子帳簿保存法への具体的な対応方法

 電子帳簿保存法(電帳法)とは、会計帳簿やその根拠となる証憑(しょうひょう)類を紙ではなく、電子データ(電磁的記録)として保存することを認める法律です。証憑とは、取引の成立を立証する書類のことで、納品書や契約書がこれに当てはまります。

 最近では、会計や税務でもパソコンなどを使って帳簿書類を作ることが一般化しています。電子帳簿保存法は、ペーパーレス化の推進で取引関連書類を電子データで保存するニーズが高まったことを受け、1998年に施行されました。
 その後、要件が順次緩和され、紙で受領した領収書は、一定の要件のもとでスキャンデータによる保存、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像データによる保存も認められるようになりました。

電子化を勧める国税庁のパンフレット(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_01.pdf)から引用 

 電子帳簿保存法にもとづいて証憑のデータ保管を始めるには、税務署長の事前承認が必要になるので確認してください。申請書類については国税庁のサイト にあります。

 この法律の大きな目的は、ペーパーレス化の推進と保管負担の軽減です。施行当初から順次要件の緩和は進んでいたものの、改ざん防止の観点から、電子データによる取引記録についても、受領者にデータへのタイムスタンプ付与を求めるなどの点が煩雑なため、普及しているとはいえない状況でした。

 今回の改正のメリットは、取引データを基準に沿ったサービスを利用して保管するなどの要件を満たせば、領収書は印刷して保管する必要がなくなることが挙げられます。具体的には、紙の原本を保管する手間や保管場所を減らすことができます。

電子的に受け取った請求書等をデータのまま保存する場合の要件について、ユーザーが自由にデータを改変できないシステムを利用している場合には、タイムスタンプの付与が不要となる。財務省の「令和2年度税制改正」のパンフレット(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei20_pdf/zeisei20_05.pdf)から引用

 ただし、きちんと保管や運用のルールを定めておかないと、外部専門家に会計チェックを受ける際に資料が散逸したり、税務調査のときに資料の保管場所がわからなくなったりするおそれもあります。ファイル名の付け方や保存先などのルールを定めましょう。

タイムスタンプとは

 タイムスタンプとは、「特定の時刻に電子データが存在し、その後に改ざんされていないこと」を証明するツールです。改正前の規定では、電子取引に該当しない取引については、領収書をスキャンや撮影するなどの方法でデータ化したうえで、電子取引については受領したデータについて、それぞれ保管義務者がタイムスタンプをおおむね3営業日以内に付与することが求められていました。

電子取引とは

 電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引です。取引情報とは、取引に関して交付する契約書、領収書、見積書などの書類に記載される事項を指します。  具体的な内容としては、電子商取引、インターネットによる取引、電子メールにより取引情報を授受する取引などが電子取引に該当します。

 紙で受け取った領収書や会計帳簿を電子化せず、電子取引に関する取引関連情報だけをデータ保管する場合については、税務署長の事前承認は不要とされています。

 今回の改正で、電子取引の次の点が変わります。ユーザーが自由にデータを改変できないシステムを利用している場合や、発行者側でタイムスタンプを付与しているデータについては、受領者によるタイムスタンプの付与が不要になりました。

 PDF形式で領収書を受け取った場合や、インターネット経由で請求書をダウンロードした場合については、事後の改ざんが可能なため、発行者がタイムスタンプを付与していなければ、受領者側でタイムスタンプ付与などが求められることに変わりはありません。

 改正電子帳簿保存法には具体的にどう対応すればよいのでしょうか。その要件を見てみましょう。国税庁が公開している電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】 が参考になります。

  1. 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
  2. インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
  3. 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
  4. クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
  5. 特定の取引に係るEDIシステムを利用

 電子取引のうち、一般利用度が高い5種類の取引例に関しては、適切にデータが保存されていれば、書面保存の必要はありません。ただし、以下のとおり取引の種類ごとに取り扱いが異なります。

 ①②については、一般的に受領者側でデータの訂正や削除ができますので、受領したデータに発行者がタイムスタンプを付与していない場合は、受領者側でタイムスタンプを付与することなどの対応が必要です。

 ③~⑤については、取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に関するデータについて、訂正削除の記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用していれば、電子取引の保存に係る要件を満たすと考えられます。その、例えば、クラウド上で一時的に保存されたデータをダウンロードして保存するようなシステムの場合には、①②と同様の点に注意が留意する必要があります。

 発行者がタイムスタンプを付与したデータ及びユーザーが改ざんできないデータについては、受領者側で特段の処理は必要なく、データのみの保管が認められます。要件を満たしていれば、ICカードやクレジットカードの明細についてもデータ保管が認められるため、経費精算の書類保管負担は軽減されるはずです。
 事務手続きを簡易にする観点から、経費支出のプロセスを見直してみましょう。