島田商業高校について

 オープンデータの整備を進めている静岡県のなかで、島田商業高校は「テクノロジーを活用しながら、身の回りの課題を自分たちで解決していこう」というテーマのもとに、地域のためのアプリケーションを作る活動をしています。

 今回は、身近なアプリを利用し、様々な企業でも使われているLINE BOTを作りました。ペルソナなどマーケティングの要素も含め授業に取り入れました。顧客との接点を増やしたい中小企業にも役立つ内容なので、担当教師の鈴木滋さんに授業での取り組みを聞きました。

LINE BOTとは

 LINE BOTは、LINEで動くチャットボットのことです。LINEは国内の月間アクティブユーザーが8400万人いるとされるSNSツールで、チャットボットはアプリ上でユーザーに対し自動で応答するプログラムを指します。

 そのため、LINE BOTはスマホアプリのLINE上で動作し、ユーザーからの問いかけなどに自動応答するプログラムの総称です。

高校生たちが作成したLINE BOT

LINE BOTを導入する店舗のメリット

 店側から見たLINE BOTを導入するメリットは次の通りです。

効率よくPRできる

 たくさんの利用者がいるアプリケーションであれば、より広く情報発信できます。さらに、多くの若者が利用しているアプリを使うことで、これまで情報の届いていなかった年代にも情報を届けやすくなります。

最新の情報を伝えやすい

 店側がプッシュメッセージを送信すれば、利用者にリアルタイムに情報を伝えられます。公式サイトに掲示するよりも情報が届きやすい特徴があります。

顧客に店をより身近に感じさせられる

 LINEは近年、日常生活に欠かせない連絡手段の一つとなっています。利用者が手軽に店の情報を調べられ、店や商品への理解を深めてもらえます。

顧客からの問い合わせに対応するコストを削減できる

 対応できる内容に限りはあるものの、BOTは24時間自動で応答するため、顧客からの問い合わせに対応する時間などを減らすことができます。

LINE BOTの作成手順

 担当教師の鈴木さんによると、生徒たちはグループに分かれて地域の14店舗のLINE BOTを作成しました。そのなかから今回紹介するのは、江戸時代から続く和菓子店「清水屋」に向けて作成した BOTです。作成したのは、松村愛唯(あゆ)さん、鈴木友萌(ともえ)さん、石井希来里(きらり)さんの3人です。

清水屋は静岡県島田市、JR東海道線島田駅近くにある和菓子店。江戸時代の享保のころ(1722年ごろ)、東海道五十三次の23番目の宿場町「島田宿」で、菓子屋を営む清水屋五代目伝左衛門が、紀州浪人と知り合い、甘酒皮の饅頭づくりの秘法を伝授されてつくった名物「小饅頭」が創業のきっかけとされる。「小饅頭」に加え、明治時代に生まれた人気商品「黒大奴」はいまも店の人気商品となっている。

 作成の手順は、以下の通りです。

  1. BOTを作成する店の背景を考える
  2. LINE BOTに必要な機能を決める
  3. LINE Developersに登録する
  4. プログラミング言語「GAS(Google Apps Script)」でプログラムをしてLINEとつなげて表示させる
  5. 店に連絡をして、継続して使いたい場合はビジネスアカウントを取得してもらい移行作業に移る

BOTを作成する店の背景を考える

 清水屋のLINE BOTをつくるときに、生徒たちがまず取りかかったのが「どんな人がBOTを利用するのか?」というペルソナマーケティングでした。

 ペルソナを設定すると、より具体的な顧客、利用者の像を描くことができるので、利用者に寄り添ったものを作ることができます。鈴木さんは「詳細なペルソナを設定することでターゲットを具体的に想像し、顧客の目線になって設計をすることができ、利用客の気持ちを想像できます」と話します。

 作成した一人、石井さんは「LINEは身近な存在なので、清水屋について少しでも気になったことがあったらすぐに質問できるような使い方ができればいいと思いました。身近で意見の求めやすい親の世代である40代の人をターゲットにして作成しました。情報の入手先、その際に使うデバイスなどを聞きながら、どのようなデザインにしたらターゲットに受け入れてもらえるのかを考えました」と話します。話し合いの結果、デザインは落ち着いた色合いにすることが決まりました。

LINE BOTに必要な機能を決める

 次に、LINEBOTのリッチメニューに入れるべき情報は何かを考えました。公式サイト、Facebookへのリンク、人気商品、本日のおすすめ品、地図(店舗紹介)、お問い合わせ、電話番号、営業案内、会員登録、商品一覧、地図、割引クーポンなどたくさんのアイデアが出るなかで、松村さんは「ペルソナをもとに、どんなときに清水屋を利用するのかをイメージし、実際にどのようなデザインにするかを手書きで考えました」と話します。

 教師の鈴木滋さんはこのとき「多くの人は、スマホを左手で操作するので、利用頻度の多いボタンは押しやすい位置に配置する」「文字ばかりで表示しても読まれないので画像を活用する」ようアドバイスしました。

生徒たちがデザインしたLINE BOTのリッチメニュー

 最後に、生徒たちは利用者の送信した問い合わせ内容に対して返信するメッセージを考えました。松村さんによると、レイアウトをカスタマイズできる「フレックスメッセージ」を使い、商品名を入力したときに、画像を使って商品の情報を伝えられるようにしました。

 また、特定のメッセージに反応して選択式のボタンが表示される「クイックリプライメッセージ」も実装しました。「清水屋」と入力すると、商品名のボタンが選択式で表示されるなど、商品名がわからない場合でも調べやすい工夫を考えました。

フレックスメッセージの例

LINE Developersに登録する

 どんなLINE BOTにするかが固まれば、次にLINE Developersに登録します。BOTの作成方法については、LINE Developersのサイト内にある開発ガイドラインが参照できます。

 今回の作成の経緯は、生徒たちがGoogleのサイトにもまとめています。

 LINE BOT自体に詳しくなくても、インターネット上で調べればおおよその情報は入手できます。生徒たちは元々プログラミング言語のJavaについて学んでいたので、その知識を生かすことで、応答するプログラムなどサービスの幅が広がったそうです。

生徒たちが作成したLINE BOTはこちら

清水屋にLINE BOT導入を提案

 BOTが完成したら、清水屋に提案です。プレゼン資料を生徒たちでつくり、店を訪れ、メリットを説明しました。生徒の鈴木さんは「清水屋の方にLINEBOTを導入する良さをわかってもらうため、わかりやすく説明する必要がありましたが、とても緊張しました。私の説明はスムーズとは言えない説明でしたが、清水屋の方は真剣に聞いてくださり、うれしかったです。今回のような体験を重ね、社会に出たときに困らないよう年上の方と話すことに慣れておきたいです」と話します。清水屋は現在、導入するかを前向きに検討しているそうです。

LINE BOTの作成を通じて授業を通して目指しているもの

 今回のLINE BOT作成の経緯について、教師の鈴木さんは次のように解説します。

 LINEは日本、台湾、タイ、トルクメニスタンで最も使用されているアプリとなっています。今年度からLINEBOTを使った授業を始めたのは、GASが無料でありサーバーの役割で使うことができることが一番の要因です。さらに2022年から高校にもプログラミングの必修化されますが、プログラミングのスキルを身に付けることが第一に求められているのではなく、コンピュータで情報が処理される仕組みに着目・理解し、問題を発見して解決する力を身に付けることが大切だとされています。そのため身近なLINEBOTにしました。
 また、今年度の2年生からデジタルマーケティングについてもGoogle Analytics、LINE分析なども活用して実務でも使えるような授業展開をしており3年生になってから実際にアプリケーションを作るときは今まで学習した内容を使って自治体や地域の方々と一緒にプログラミンを活用してまちづくりや地域貢献をテーマにアプリを作り上げていくようにしていくつもりです。