「電気の世界ならこっちのもんや」から製品化

 脳波で操作する「マクトス」は改良を重ね、重度身体障害者用のコミュニケーション機器として活躍する。主力商品の高齢者向け転落・転倒防止製品「離床センサー」は多くの介護施設や病院で使われ、シェアは6割を超す。

 マクトスは、頭部のバンドにつけた脳波のセンサーで機械を操作する。四半世紀前、創業者の大西秀憲最高顧問(73)の夢に亡き父が現れ、「これを作れ。声が出ん者が話する機械じゃ!」と告げたのが開発のきっかけという。

 当時、大西さんは24年勤めた電気通信部品会社を退職し、仲間3人と会社をつくったばかり。脳の微弱な電気信号で体は動くと知り、「電気の世界ならこっちのもんや」と1999年に製品化した。

テクノスHO記念館には会社の原点ともいえる初代「マクトス」や「離床センサー」などこれまでの商品や試作品が展示されている

 すると、納品先の脳外科医から「患者さんが転落や転倒などで困っている」と相談された。患者がベッドを離れたことがナースステーションなどで感知できる「離床センサー」の開発につながった。

 全商品のアイデアを担った大西さんは6年前に社長を退いた。2017、2019年度、全社員に新商品のアイデアを募った。281件が集まり、35件が商品化された。長男で取締役の健一郎さん(46)は「大企業が進出しないニッチな市場で、どう生き残るかが大事。いち早くどんな商品でも市場に出す」と意欲的だ。

 工場を持たない「ファブレス」経営をしている。テクノスが企画と開発を担い、製造は数十社の協力会社で分業する。設備を持たずに済み、しかも協力会社の得意分野を生かせる利点がある。

 大西さんの「利益を皆で分かち合うことで信頼が生まれる」との信念から、「協力会社に値下げ交渉はしません」と経営企画担当の中西健之介主任(32)。「基本的に相手の『言い値』で決まりますね」と屈託ない。

 最新の自信作は「お散歩コール」。認知症などで、家を出ると帰宅できなくなる高齢者のため、杖や歩行器にタグを取り付け、家を出たら家族らにメールなどで知らせる。介護保険の対象で、オプションでは保険外だがGPSで現在地情報の通知もできる(月額300円)。「高齢者の介護は長く続く。介護保険の対象商品にして、自己負担額を小さくすべきなんです」と健一郎さん。気概を感じた。

テクノスジャパン

 1993年設立で、従業員はパートを含め70人。離床センサーは年約4万台出荷。兵庫県宍粟市山崎町金谷にはこれまでの商品と大西秀憲最高顧問の絵画などを展示したテクノスHO記念館がある。見学無料、要予約。申し込みは電話(079・288・1600)。