「ぼくらが作ったらええ」で生まれた新事業

 1948年に創業した。絵の具を水で溶く容器を作ったのが始まりだ。缶で保存する菓子は色や風味の持ちがいいと、大手洋菓子会社数社と契約し、関西でシェアトップクラスの缶製造会社になった。

 現社長は3代目の清水雄一郎さん(44)。営業などを担当していた2008年、リーマン・ショックが起きた。大手の注文が減り、売り上げが4割近く落ち込んだ。「このままじゃあかん」と町の菓子店に営業をかけたが、「缶作りにかける費用がない」と断られ続けた。

 11年に受注生産する下限の個数を1万程度から3000まで下げたが、注文は伸びなかった。ただ、「欲しいが在庫が怖い」との声も多かった。

 清水さんは、需要があるのに供給できない悔しさを感じ「ぼくらが作ったらええ」と、開発費と在庫リスクは自分たちが負う「既製缶」の販売部門の発足を考えた。

 缶の表面に文字や絵を浮き彫りにするエンボス加工など技術に自信があったが、デザインは初めてだ。デザイナー5人と面談し、「ぶっ飛んだ美しいものを作ってくれそうな人」に決めた。Tシャツとジーンズ、真っ赤な外車で来た男性だ。宝石や花束などをモチーフに、菓子を美しく見せる多彩な缶ができた。

 2014年、新事業の「お菓子のミカタ」がスタートした。個人店向けに最低注文個数は50にした。全国の洋菓子店に年3~5回ニュースレターを送るなどし、この6年で契約軒数は約1500軒に。デザインも、今は80種類を超える。

 新型コロナで受注生産の売り上げは半減したが、遠出せずに買える町の洋菓子店の需要は高まっているという。お菓子のミカタの売り上げも好調で、会社を支えている。

洋菓子店「モンガトウ」で人気の、大阪製缶の2色のブーケ缶に入ったスノーボールクッキー=2020年6月30日、大阪府東大阪市、関宏美撮影

 缶を使う洋菓子店モンガトウ(東大阪市)のオーナー長尾徹さん(54)は「お客様に『パケ買いしたら中身もかわいくておいしかった』とよく言われる。手に取ってもらう機会が増え、店のファン獲得に強い味方です」と話す。

 清水さんは「缶を売るだけで終わりたくない」と、契約先の菓子店の製品を集めた店を2018年に東京で始め、SNSで菓子店を紹介するなど集客の支援もする。これからもお菓子屋さんの心強い味方であり続ける。

大阪製缶

 本部や工場で90人余りの従業員が働く。主要事業は、菓子メーカーの依頼を受けて製造する受注生産部門。既製缶販売部門で扱う菓子缶は、「美しすぎる缶」としてSNSやメディアで話題だ。工場向けにワゴンやロッカーなども製造している。