木枠ミラー専門の千代木工 木枠幅わずか1センチ コロナで売り上げ倍増
新型コロナウイルス感染拡大で、業績が落ち込む企業が多い中、売り上げが2倍に伸びた会社がある。兵庫県加古川市の木枠ミラー専門メーカー「千代(せんだい)木工」だ。外出を控え、自宅で運動やヨガをする人が多くなり、全身が映る姿見を新調する家庭が増えたという。同社が力を入れているのは、独自の製法で木枠を幅1センチまで細くした鏡だ。すっきりした印象で洋室にも和室にも合わせやすいと人気を集めている。(三浦宏)
新型コロナウイルス感染拡大で、業績が落ち込む企業が多い中、売り上げが2倍に伸びた会社がある。兵庫県加古川市の木枠ミラー専門メーカー「千代(せんだい)木工」だ。外出を控え、自宅で運動やヨガをする人が多くなり、全身が映る姿見を新調する家庭が増えたという。同社が力を入れているのは、独自の製法で木枠を幅1センチまで細くした鏡だ。すっきりした印象で洋室にも和室にも合わせやすいと人気を集めている。(三浦宏)
兵庫県三木市は金物の産地として知られる。1959年、ほど近い加古川市北部で、ノコギリや包丁などにつける木製の柄を作る木工所が開業した。やがて、座卓の脚など木製部品全般を手がけるようになった。
だが1973年、オイルショックで受注が激減した。家業を継いだばかりの岡本清明さん(64)は部品だけでなく、キッチンワゴンやテレビ台といった完成品も積極的に作るようにした。しかし、1980年代に入ると、納入先の9割を占めていた家具卸業者が生産を海外工場にシフトし、再び経営は苦しくなった。
そんな時、ある家具問屋から、木枠の姿見をアルミフレームと同じ1センチの細枠で作ってほしいと頼まれた。姿見は、写真立てや額縁のような構造で、枠の裏からガラス製の鏡をはめ込んで作る。木の強度を考えると、枠の幅は最低でも2センチは必要だった。
岡本さんは、これまでとまったく逆の発想で、鏡を前から貼り付けようと考えた。だが、ぴったり隙間なく貼り付けるためには、ガラスをサイズ通り正確に切ってもらう必要があった。「プラスマイナス1ミリの誤差は当たり前。無理だ」と渋る業者を説得し、0.5ミリ以内に収めてもらった。木とガラスをはがれることなく密着させる接着剤を探すのにも苦労した。
前から貼ると、枠を細くできるだけでなく、枠と鏡面の段差をなくすことができた。枠が端に映り込むことがないので、鏡面がすっきり広く見える。緻密(ちみつ)な工程は海外発注は難しく、「日本製ならではの高い質」が売りとなった。
自社で企画から製造、販売までしたかったという岡本さんの夢は、2015年、オンラインショップを開いたことでかなった。製品は加古川市のふるさと納税の返礼品にも選ばれ、昨年度の申込件数は、地場産業の牛肉、靴下に次ぐ3位に躍進した。「凡退続きでしたが、ようやくヒットが出ました。でも、まだ6打数1安打。勝負はこれからです」
従業員12人。細枠ミラー「リブラ」シリーズで一番人気は姿見。枠の色は12色から選べる。高さ153センチ、幅60センチのサイズで1万8920円(税込み、送料別)。同社オンラインショップで購入できる。
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