中国で商標出願する注意点 先願主義、取り戻すには時間がかかる事例も
中国へ商標を出願したら、すでに同様のロゴが登録されていた――。駄菓子ビッグカツで有名な「すぐる」(広島県呉市)は、中国で商標を出願したところ、同様のロゴがすでに出願されてしまっていたため、手続きを終えるまでに2年以上がかかりました。こうしたケースは多いのでしょうか。企業に知財の助言をする「独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)」の知財活用支援センターに聞きました。
中国へ商標を出願したら、すでに同様のロゴが登録されていた――。駄菓子ビッグカツで有名な「すぐる」(広島県呉市)は、中国で商標を出願したところ、同様のロゴがすでに出願されてしまっていたため、手続きを終えるまでに2年以上がかかりました。こうしたケースは多いのでしょうか。企業に知財の助言をする「独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)」の知財活用支援センターに聞きました。
――中国で商標を出したいと考えたとき、まずはどんな準備が必要なのでしょうか?
商標を出願する前に、調査をしっかり行うことが重要です。中国では、先行した出願に優先して登録を認める「先願主義」が採用されていますので、中国で登録しようとしている商標が既に登録されていないかを確認する必要があります。
――調査にはどんな手段がありますか?
中国の商標情報を取得するのに有用な検索サービスには、中国商標網のウェブサイトがあります。誰でも無料でアクセスできます。
(1) 類似商標の検索、(2) 商標の総合検索、(3) 商標の経過情報検索、(4) 商標公告の検索、(5) 商品/役務表示の検索ができるツールです。
また、INPITでは新興国等知財情報データバンクというウェブサイトで新興国等の国別知財情報を掲載しており、この中で中国の商標検索の方法を紹介しています。
<中国における商標の調べ方—中国商標網ウェブサイトはこちら>
駄菓子ビッグカツで有名な「すぐる」(広島県呉市)は2018年、中国で商標を出願したところ、中国の電子企業が、2014年に同様のロゴを申請し、16年1月に登録済みだったことが判明しました。その結果、すぐる側が手続きを終えるまでに2年以上がかかりました。
中国でロゴを商標出願したら「登録済み」で…2年かけて取り戻すまで
同様のロゴを登録していた中国企業では、そのロゴの使用履歴がありませんでしたが、すぐる側の不使用取消請求はすぐには通らず、一時はロゴや包材を変えて出荷することなどを検討したといいます。
――もしすでに登録されていた場合はどうなるのでしょうか?
すでに登録されている商標を使用し続けた場合、権利侵害として没収・罰金・損害賠償・懲役刑等が科されてしまう可能性があります。
この場合、考えられる対抗手段としては、すでに登録された商標に対する無効審判請求があります。また、権利者が商標を3年間使用していない場合、登録の取り消しを請求することも可能です。
しかし、先行して商標出願または登録されてしまうと、その権利関係をめぐって、長い時間と多額の費用を要することになるので、やはりできるだけ早く商標出願を行うことが肝要だと言えます。
そして中国だけでなく海外進出をする場合には、早期の事前準備が重要です。海外進出前の知財面での準備については、INPITの海外展開知財支援窓口がアドバイスを行っています。
――海外での商標トラブルについては、どのくらいの相談がありますか?
特許庁に設置している「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」に寄せられる年間260件あまりの相談のうち、4割程度が商標権に関する相談で、海外でのトラブル案件も含まれているようです(政府模倣品・海賊版対策総合窓口年次報告書)。
また、INPITの相談窓口にも、年間100件程度の海外での商標トラブルに関する相談が寄せられています。
――主に起きてしまうのはどんなトラブルなのでしょうか。
比較的多いトラブルとしては、日本で使用してきた商標がすでに他人によって登録されていた、模倣品等が出回り始めたなどがあります。
政府模倣品・海賊版対策総合窓口年次報告書(2020年版)によれば、2004年~2019年の間に受け付けた相談案件のうち、製造(発⽣)国・地域が判明している相談については、中国(⾹港を含む)が製造(発⽣)地である案件が半分以上を占めています。
また、2004年~2019年に受け付けた相談案件のうち、対象となる知的財産権の内容が明らかな相談では、43%が商標権に関するものです。
――こういった中国での商標トラブルは多いのでしょうか?
残念ながらトラブルになるケースが多いのは本当です。このような背景から、各種トラブルに対応できるよう、JETROでもマニュアルを公開しています。
また、「クレヨンしんちゃん」が中国で第三者に無断で商標登録されてしまい、訴訟等で大変な手続きの結果、商標を取り戻したといった事例もあります。
チョコエッグなどで知られる大阪の「フルタ製菓」が逆転勝訴し、7年ほどかけて商標を取り戻したケースもあります。
――解決までには、どのくらいの期間がかかることが多いのでしょうか。
ケースバイケースです。1年から1年半程度で解決することもあれば、「すぐる」や「フルタ製菓」のケースのように2年以上かかることもあります。
――企業側は、どんなところに相談したらいいのでしょうか。
INPITでは、知的財産に関する悩みや課題の解決を図る支援窓口として、全国47都道府県に「知財総合支援窓口」を設置しています。弁理士や弁護士等の専門家を活用した支援だけでなく、デザイナーや中小企業診断士も活用しつつ、国が設置する無料の経営相談所「よろず支援拠点」などの関係支援機関とも連携しながら、知的財産を切り口とした経営支援も行っています。
また、海外進出を目指す企業等に対しては、海外展開知財支援窓口の海外知的財産プロデューサーやINPITの登録弁護士を活用した支援も行っています。
具体的には、
・海外進出での知的財産面でのリスク管理
・事業展開に応じた権利取得の要否判断
・知的財産を利益に結び付ける活用方法へのアドバイス
・弁護士を通じた知財契約書作成支援
といった総合的な支援を行っています。
すべて、どなたでも、無料でご利用いただけます。
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