中小企業も健康経営 取り組み事例を紹介 ブランディングにも寄与
「健康経営」とは、働く人の健康管理を経営的視点で考え、戦略的に取り組むことです。経済産業省の認定制度を活用すれば、従業員や求職者、取引先、金融機関に向けた良いアピールになり、中小企業のブランド構築の有力な手法となります。医療機器メーカー「伊藤超短波」の事例をもとにメリットや導入方法を解説します。 健康優良法人2022の認定に向けたスケジュールも紹介します。
「健康経営」とは、働く人の健康管理を経営的視点で考え、戦略的に取り組むことです。経済産業省の認定制度を活用すれば、従業員や求職者、取引先、金融機関に向けた良いアピールになり、中小企業のブランド構築の有力な手法となります。医療機器メーカー「伊藤超短波」の事例をもとにメリットや導入方法を解説します。 健康優良法人2022の認定に向けたスケジュールも紹介します。
目次
健康経営とは、1992年にロバート・H・ローゼン氏の著書“The Healthy Company”で提唱されたとされており「従業員が健康になれば、生産性が上がり、企業利益のためにもなる」という考え方です。
日本において、働き方改革とも共通する部分があります。経産省の認定制度「健康経営優良法人認定制度」がつくられたことで、ゴールも明確になりました。
ブランディング(ブランド構築)の手法としても「健康経営優良法人認定制度」をオススメしています。最も重要な点は、中小企業だからといって大企業に負けない存在感・ブランドを作ることもできるためです。仮に認定されなかったとしても、自己発信できる材料やチャネルを保有できます。
中小企業の製品・サービスは必ずしも大手より劣っているわけではありません。しかし、認知度、採用力、広告費ではどうでしょうか?現状では、そうした体力や経験値を起因とした総合的なブランド力は、大企業が有利です。
その点、健康経営は目標を定めやすく、大小関係なく同じ土俵で勝負できます。つまり、中小企業にとって素晴らしいブランディングのチャンスとなります。
健康経営を取り入れるメリットについて企業経営、ブランド構築、助成金という観点から紹介します。
・社員の健康や生産力アップは蓄積される
本質は、社員の健康と生産力アップであるため、仮にブランド構築に秀でた効果が出なくても、本質的な効果は残ります。
・広告PR費用を社員の健康費用として使える
広告やPR活動自体に抵抗を感じたり、よくわからないと考えたりしている中小企業も多いでしょう。そこで、PRに使うコストや労力を社員の健康のために使うと考えてみましょう。社員と会社の関係を強めることにつながります。
・社員の満足度向上や採用力向上に期待ができる
まずは、社内が活性します。私が以前に実施した健康経営の施策の社員の満足率は99.2%でした。また、採用も上手くいくことが増えたという声もあります。
・ブランディングで最も難しい目標設定ができる
私はブランディングを始める際は、かならず数字に紐づく目標を設定してくださいと言います。それは、売り上げでも、SNSのフォロワー数でも良いのですが、それでも難しいと感じる場合は、社員を健康にする健康経営優良法人の認定を目指してみるのはいかがでしょうか。
・大企業と同じ土俵でアピールできる
ブランディングは他社に比べてアピールできるところが際立っている必要があります。どこをアピールしたらいいかわからないという場合、健康経営への取り組みをアピールすることで、取材におけるアピールなどを通して、大企業と同じ、あるいはそれ以上強力な発信ができます。
・健康経営の国内の参考事例が豊富にある
「認定や取材をしてもらうことに目標を定めた。でもやり方がわからない」という場合もあるでしょう。そんなときはすでに頑張っている「健康優良銘柄」の事例を参考にしてみましょう。トップオブトップといえる健康経営企業です。
冊子はPDF形式で、経産省のサイトからダウンロードできます。
健康経営を実施する上で、重要な要素とそれに関連する助成金をご紹介します。制度が変更されることもありますので、導入前には、公式サイトで確認してください。
・社内分煙
健康経営では、喫煙率の減煙や分煙は必須と言って良いほど重要です。それらに取り組むことはコスト面でも大変であるため、受動喫煙防止対策の助成金などを活用しましょう。
・ストレスチェック
社員の状態をチェックするにあたりストレスチェックも重要です。50人未満の事業場であれば、補助を受けることができます。労働者健康安全機構のサイトから助成金の手引きを入手できます。
・心の健康づくり
表面に現れにくい内面のヘルスケアも重要視されています。こちらも、心の健康づくり計画助成金が活用できます。
筆者が携わった企業「伊藤超短波」の事例をご紹介します。伊藤超短波は創業100年以上の歴史を持つ医療機器メーカーです。医療機器を扱う業態であるため、ブランディングにおいて表現や手法に制限がありました。その一方で、歴史・技術力があるからこそ、広告・宣伝活動よりも自社らしい発信方法を模索したいという希望がありました。
医療機器を扱う業態では製品に関して厚労省が認める効果効能以外のことが言えず、広告に関しても規制があり、これまで積極的な広告・宣伝活動を控えてきました。そのため、予算を割くイメージが持てませんでした。また、広告や宣伝活動が自社らしいかどうかも不明瞭に感じていました。一方で、一見すると類似している製品が市場で増え、純粋な技術だけでなく、広く知られる必要性も強く感じていました。
そこで、医療機器メーカーとして、健康経営を取り入れることは社員の健康を増進し、生産力を上げるだけではなく、包括的な認知促進活動などに活用できることに着目しました。
導入にはいくつかやるべきことがあります。
目標を社内の健康促進と健康経営優良法人認定の取得としました。目標に向け、まずは、組織上、CHO(チーフヘルスオフィサー)を任命する必要があります。伊藤超短波の場合は、社長自らがCHOに就任しました。
そして、社員に対してヒアリングやアンケートを実施し、健康に関する悩みやあったらいいなと思う健康促進補助制度に関しての意見を収集、分析することにしました。
最初にどのような施策があったらうれしいかなどについて社内でヒアリングやアンケートを実施し、下記のような施策に決定し、実行しました。これらは非常に高い満足度を得ることができました。
さらに、健康経営認定制度の良いところは、その年ごとに、どのような健康活動を強化すべきかがわかることです。2019年度であれば、禁煙補助の強化、女性の健康的労働環境の強化、自社外に向けた健康が挙げられました。これらを軸に実際に伊藤超短波でも、前年度の検証だけではなく、改善も実施しています。
初年度から、健康経営優良法人2019の認定を受けるばかりでなく、ホワイト500という「国内TOP500社に値する」という評価を得ました。大手上場企業でも取ることが難しい実績ですが、しっかりと努力をすれば、より大きなブランド構築にも貢献できる活動です。
健康経営においては、会社が一丸となることがとても重要であり、大手企業よりもむしろ中小企業の方が有利な部分もあります。その後も健康経営の活動は様々な外部評価と事業開発に刺激を与えています。
また、新しい挑戦として、Instagramにおける自己発信を開始したり、販売のデジタル化としてtoC向け新ブランドRUCOEシリーズを開発し、自社としては初のEC販売も開始したりしました。
伊藤超短波では、健康経営の実績と目標を公開し、取り組んでいます。
この記事を読んで、健康経営に取りくみたいと思った事業者は健康優良法人2022の認定に向けて準備をしてみましょう。
中小企業の場合は、健康経営優良法人の認定書を送る条件として、全国健康保険協会(協会けんぽ)・健康保険組合・その他国民健康保険組合などで企業として健康宣言をする必要があります。健康宣言をするには、たとえば、最寄りの協会けんぽのサイトからエントリーシートをダウンロードできます。
その後、健康宣言に沿って健康経営の取り組みを実践してください。経済産業省の健康経営優良法人取り組み事例集(PDF方式:2.56MB)などが参考になるでしょう。
2021年8月下旬ごろから健康経営優良法人2022へ申請できる見通しです。結果発表は2022年2月ごろの見通しです。
健康経営のブランディングへの活用(健康経営ブランディング)は、社員の健康を増進し生産性を上げるだけではなく、大手企業とも渡り合える素晴らしいアピールができます。そして、健康やブランド力は、残り会社の重要資産として蓄積されます。
広告や広報PR活動に慣れていない、いまいち抵抗があるけどブランド力はたりないなと感じる会社の皆さんには、選択肢に入れていただいても良いものだと思います。ご質問があれば、筆者の運営する合同会社デザインアンドマネージメントからお問い合わせください。
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