「あしたのジョー」を彷彿とさせるジム サイト改善で打ち出した強みとは
都内から特急で約40分の埼玉県狭山市には、35年前に創立された唯一のボクシングジムがあります。代表トレーナーがある日、会員数が少ないことに悩んで狭山市ビジネスサポートセンター(Saya-Biz)に相談に訪れました。ジムの2つの「強み」をリニューアルしたホームページで発信していくと、新規会員が次々と増えるようになります。
都内から特急で約40分の埼玉県狭山市には、35年前に創立された唯一のボクシングジムがあります。代表トレーナーがある日、会員数が少ないことに悩んで狭山市ビジネスサポートセンター(Saya-Biz)に相談に訪れました。ジムの2つの「強み」をリニューアルしたホームページで発信していくと、新規会員が次々と増えるようになります。
相談に訪れた多寿満(たじま)ボクシングジムは、狭山市役所からほど近い場所にある老舗のボクシングジムです。代表トレーナーである桜井靖高さんは、ジム第1号生としてプロデビューし、日本フライ級3位を獲得したOBです。引退後20年以上トレーナーを務めたのち、「地元・狭山市からボクシングのオリンピック選手を輩出したい」という夢をもって、代表トレーナーとして古巣に戻ってきたのです。
桜井さんの悩みはジムの会員数が増えないことでした。そこで、中小企業の売上向上支援を専門とした無料相談所「Saya-Biz」を訪れます。
会員数を増やすカギを見つけるために、まずは現状を伺わなくてはなりません。そもそもボクシングジムとしては市内で唯一の存在であり、周辺でも各市町村に1か所あるかないかという環境です。
加えてボクシングは、かつてのようにプロボクサーを目指す人だけではなく、ダイエットやストレス発散の手段として初心者や女性にも親しまれるようになりました。市場も周辺環境も決して悪くなさそう…と考えて一つの仮説を立てました。
「必要な人に必要な情報が届いていないゆえに、気づかれていないのが会員数の増えない原因ではないか」
そこで、改めて確認したのが「顧客のターゲット」と「顧客に提供する価値」です。多寿満ボクシングジムの会員は小学生から50代までの幅広い年代層でした。入会の動機もプロボクサー志望からダイエットまで様々です。これでは、一見ターゲットが絞れていないように見えます。しかし「会員に支持されているポイント」を伺っていくと、1つのキーワードにたどり着きました。
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それが「元気になって帰れる」です。
ボクシングの試合やスパーリングのあとは、緊張感が解け、力を出し尽くした満足感と開放感で満たされるといいます。それはプロだけでなく一般の方も同様であり、プロボクサー志望であっても、ダイエット目的であっても、自分を出し切った満足感や爽快感を感じられるとのこと。
加えて、桜井トレーナーは人の気持ちを盛り上げるのが得意。練習のたびに必ず1人1人とミット打ちを行うことで、その満足感を最大に高められるため、終わった後、来る前よりも「元気になって帰る」会員が多いというのです。そして、この桜井トレーナーのアプローチと終了時の満足感を求めて、医師や会社員などの社会人が平日夜に多く通っていることがわかったのです。
また、ジムそのものも強みでした。桜井トレーナーは「古くて、設備も最新のジムみたいにたくさんないから…」と話していましたが、写真を見てみると使い込まれたリング、壁に架かる書の「努力」の文字など、まさに「あしたのジョー」を彷彿とさせる世界観……。
歴史を感じさせるレトロな雰囲気を求める顧客は一定層いることを踏まえ、これも「強み」として目立つ発信をするべきと確信しました。コンセプトと発信の軸が見えれば、最後にそれが「必要な人に届く」ように発信するのみです。
ところで、うまくいっているホームページとは、どのようなものでしょうか?
それは、事業者自身が設定した目的が達成されているサイトです。多くはホームページを通じて「申し込みが増えている」「問い合わせが増えている」という状況を目指しているのではないでしょうか。
Saya-Bizは、目的達成のために必要なこととして「サイトの目的が伝わっているか」「ナビゲーションはわかりやすいか」「内容は読みやすく、わかりやすいか」「目的とする行動をとってもらうページは存在しているか」を確認し、改善のアドバイスをしていきます。
多寿満ボクシングジムは相談に訪れた時点ですでにホームページがありました。情報は読みやすく書かれていましたが、写真が少なく「ボクシングジム」の魅力や雰囲気が伝わりにくくなっていました。
また、無料体験会サービスへの誘導も目立たず、申し込みも電話のみでの受付だったため、入会へのハードルが高い印象でした。さらに、顧客層がスマホ利用者であるにもかかわらず、スマホ対応を意識したページになっていませんでした。
そこで、トップページには、ジムの雰囲気が伝わるリング前で撮影した写真を掲載し、「元気になって帰れるタジマボクシングジム」とコンセプトとジム名を大きく掲載。加えて、見やすいところに「一日無料体験実施中!!!」「見学は随時大歓迎!!!」と記載することで、問い合わせや申し込みへの誘導を強化しました。
また、ジムの雰囲気がわかるコンテンツにアクセスしやすいように、インスタグラムやブログのリンクもトップページに移動。写真の数も増やして文字量を減らすことで、スマホからの見やすさ・読みやすさも意識しました。
ホームページを更新するにつれて問い合わせが増え、それまで月平均1人だった新規会員数が2人3人…と増えていき、多いときには6人が入会する月も出てきました。
発信の重要性とコツをつかんだ桜井トレーナーはブログやSNS、YouTubeも使って発信を続けました。
その効果もあり、ホームページを入り口に「ブログを読んだらこのジムだったらちゃんと教えてくれそう」という入会者や、インスタグラムを入り口とした学生の入会者も増えています。緊急事態宣言中はジムの閉鎖を余儀なくされましたが、その後も安全対策や三密防止のパーソナルトレーニングクラスなどの新サービスを打ち出しながら、躍進しています。
ホームページを中心とした情報発信で何より重要なのは、「最新情報やブログなど、更新の仕組みが回っていること」です。
特に「ずいぶん前に作成したけれど、その後更新していない」というページについては、「セキュリティ対策としての常時SSL化が行われていない」ものや、「スマートフォン表示に対応していない」ページも見受けられます。
これではたとえSEO対策(GoogleやYahoo!などの検索エンジンでキーワードが検索された場合に、自サイトが上位に表示されるようにするための取り組み)に力を入れてページへの誘導に成功したとしても、サイトからの離脱や信頼性の損失につながってしまいます。
また、スマートフォン表示に関しては、Googleが検索順位を決めるための評価の基準をPCページからスマホサイトに変えるという発表があったように、今後はホームページのスマホ表示対応と、その見やすさの追求は必須となります。すでにホームページを持っている企業ほど、今がまさに、WebやSNSなど、Webマーケティングに関するツールを見直す良きタイミングではないでしょうか。
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