リーガルテックとは

 リーガルテックとは、法律(Legal)と技術(Technology)を掛け合わせた造語です。既存の事業分野にテクノロジーが浸透し、新たな価値を生み出すX-Tech(クロステック)の一つです。
 経済産業省が2019年11月に公表した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」では、リーガルテックについて「電子署名サービス、契約レビューや翻訳などの IT を活用した法令・契約等関係の法務サービス」と説明しています。
 2020年、新型コロナウイルス感染症の広がりで在宅勤務が広がるなかで「契約書にはんこを押すために出社する」という現象が話題になりました。こうしたなかで契約書の電子化に注目が集まりました。

行政の「脱ハンコ」で注目されている河野太郎行政改革相

法務部門にDXが必要な理由

 海外進出や新規事業を通じて企業価値の向上を目指している経営者にとって、法的リスクと適切に向き合うため、法務機能を使いこなすことが必要です。
 しかし、経産省によると、日本は米国と比べて法務部門が経営者から意見・判断を求められることが圧倒的に少ないといい「リスクを低減するための十分な代替策・対応策が検討されることなく、新規事業の創出に“過剰な”ストップがかかる現状があるのではないか」とみています。
 そのため、従来の法務業務の効率化だけでなく、事業部門が自社のビジネスを成長させるための「戦略法務」としての振る舞いが企業法務に求められています。そこで必要となるのが法務部門のDXを後押しする「リーガルテック」です。

リーガルテックのメリットと注意点

 リーガルテックのメリットと注意点について、経済産業省の報告書では次のように説明しています(誤字脱字を一部補っています)。

 契約法務へのリーガルテックの活用により、審査・締結の高速化だけでなく、ナレッジの蓄積・共有、リスク情報の集約等により品質を揃え向上させる、履行段階での情報管理・リスク対応に資する等の効用も期待されている。

 他方で、戦略的判断を含めこれを使いこなすには相応の法的能力を要するとの指摘もあり、より高い信頼性を求めたい等の観点から本格導入を見送っている企業も存在している。

 いずれにせよ、現時点ではリーガルテックのみで全てを処理することはできないので、リーガルテックを活用する際には、何がどこまでできるのか、どのように使うと効果的で、どこまで任せることができるのかをよく検討する必要がある。

国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書

リーガルテックが役立つ業務の例

 リーガルテックは、AIによる契約書内容の診断・判別、登記や電子署名など様々な分野で活用できますが、とくに注目されているのが、企業法務の仕事のなかでも業務の大半を占める「契約書の作成・締結・管理」です。
 リーガルテックサービスの開発、提供をしている「GVA TECH」によると、契約書レビューの業務に役立つ5つの機能があるといいます。 

1.リスク判定

条文ごとのリスク度合いやリスク可能性の有無を判定、提示します。

2.契約書ひな型比較

レビュー対象の契約書と契約書ひな型を比較表示します。

3. 要削除や要検討項目の指摘

不足・不要な条文や、精査が必要な条文を判定、提示します。

4.条文検索

締結済み契約書や参考条文の検索や表示をします。

5. 形式チェック

項番号のズレや不足、締結日の記載忘れなど、契約書の形式面の不備を判定します。

リーガルテックを提供している主な企業

 「GVA TECH」は契約法務を7つのプロセス(受付・リサーチ・翻訳・作成・レビュー・電子契約・契約管理)に分類した「リーガルテックカオスマップ2021」を公表しました。「サービスサイトや紹介資料上の機能比較だけでなく、各サービスのコンセプトや目指す未来をヒアリングし、自社の方向性にマッチするかという点も確認されることをご推奨します」と説明しています。

契約法務を7つのプロセスに分類した「リーガルテックカオスマップ2021」(GVA TECH作成)

カオスマップに掲載されたサービス一覧

 カオスマップに掲載されたサービスと提供企業をプロセスことに分けて紹介します。

1.受付

2.リサーチ

3.翻訳

  • DeepL ……DeepL GmbH
  • T-4OO ……ロゼッタ

4.作成

5.レビュー

6.電子契約

7.契約管理

拡大するリーガルテック市場

 矢野経済研究所は2016年から2023年までリーガルテック国内市場の年平均成長率を9.8%で成長し、2023年には353億円に拡大すると予測しています。
 2021年度(令和3年度)の税制改正大綱では、政府だけでなく企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の投資を後押しする政策が大きな柱の一つとなっており、リーガルテック市場に追い風となる見込みです。